今日の面会は11:30着


10時前から来ている兄と、玄関前で会った
なんだか声が暗い
やはり、そういうことか…


部屋に入ると、母は寝ていた
やっぱり昨日と変わらない
それでも、生きていてくれて嬉しかった


ベッドの母を立ったままぼーっと見ていると
目が開いた
ニコではなくニヤッと笑う


昨日より反応が良さそうだ
会話も少しだけ出来る


ほとんど飲まず食わずだから、
痩せ細り方が半端ない
むしろ、この極限状態で生きていることが
奇跡とも思う


腸閉塞で入院してから1ヶ月
点滴を外してから13日目か…
本当にギリギリのラインかな


兄からメッセージ
もうこれが最後だと思ってありがとうって
手を握ったら、嗚咽してしまった…と


母って、みんなに愛されてるよな…


水を少しだけ飲ませてあげた
飲み込む力が弱まってる気がして、
飲ませるのも怖い…


疲れているのでカーペットを敷き、
少し休んだ
顔を見ると、昨日より顔色は良い気がした
気のせいかな?
でも、反応の良さからして、昨日よりは…


お腹からポコポコ音が鳴るたび、顔を顰める
お腹に手をやり、さすっている
目を閉じているから起きてはいるのか、
無意識になのか


しばらくしたら、父が来た
今日は1時間も違わないでの面会だから、
ずっと一緒
父が来た時の母の顔は、
元気な頃みたいに戯け、
白目をむいてお化けのよう…
だから…
それは本当のやつになるからやめてよねー
(そんなこと、さすがに口には出せない)


きっと、
ここまで痩せこけた自分のお化けみたいな
顔なんて、想像もしていないだろう


小1時間過ぎたあたりで、マッサージする?
と聞いてみた
うんと頷く母


やっぱり、わかっているのね
もはや、この世のものではないような、
あちらの世界へ足を踏み入れているような
状態なので、理解の有無がたまにわからない
けれど、マッサージはして欲しいのね…


母っぽくて好き


マッサージをしてあげている時に、
父をいじめてやろうと企んだ私


"兄ちゃんもマッサージしたんだってね!"


父に聞こえるように言ってみた
そしたら、案の定の反応


"え?あいつもしてるのか?"


おまえだけなんだよ
マッサージしてねーのは…
テレビ観て同じ時を過ごしてる気になってる
調子乗りは…


私はこういう風に復讐する性格悪タイプ


かなーりショックになった様子
そして、
バツが悪そうに落ち着きなく椅子に座ってた


ざまーみろ!!!


私のマッサージ中に、
ゴチャゴチャうるさくなった
"◯月◯日に叙々苑で焼肉食べたんだな"
"◯月◯日に寿司を食べに行ったんだな"


今まで手持ち無沙汰の時に、
何度も聞いてきた話


今食べられない母の前で話す必要がある?


思い出を語り合うなら良いんだってば…


あの日、こんな事しに行ったね…
お昼は焼肉食べておいしかったよね…
楽しかったね…


そういう優しい話からなら良いが、
淡々とあの日はこうでこの日はこう…
なんて日記みたいな内容を読み上げられても
何も感じない


むしろ、
母は"嫌になっちゃう"と、また顔を顰める
母の様子を察することなく、自分自分
自分の満足のための発言だ


私は父にもうやめて!と注意することも
出来だのだけど、とにかく無視
静まるのを待ってしまった


ばあばのそばにいて、
その気持ちはちゃんとわかるよ…
2人で目を合わせるしかできなかった


ばあばが死んでしまってから、私は言うよ
あなたの目の前では揉め事を起こさず、
また同じようなことがあったら必ず…
そういうところが嫌なんだよって言う
余裕がない時に話す内容ではなく、
あなたがして良い内容ではなく…
俺ばっかりいじめるって思う前に、
相手に意地悪してこなかったかを
振り返ることも必要なんだよ!って


そんな時、看護師さんが入ってきた
ありがたい


明日のお風呂の準備確認を…とのこと
ここでも父の余計なおせっかいが炸裂


"お風呂入らないよな?"


私も母も無視
そしたら、聞こえないと思ったのか、
何度も何度も同じ事を繰り返す…


昨日言ったと思うけど、
ばあばは"お風呂に入ったほうが良いのか"
って思ったんだよ
たしかに、前回は断ったけど、
明日入る気になるかもしれないのに…
おまえか勝手に断るな!!!


そう思っていたら我慢できず、
父を制止させた
"入るかどうかは明日本人が決めるから"


イラついている気はしたが、黙った父


看護記録に書いていないわけがない
それでも、
向こうは明日入るかもしれないからって
準備してくれている
本当に嫌なやつ
余計なことばっかりするやつ


父は不必要な人
そう思われたいのだろうか?


母のマッサージも終えたあたりで、
また父が動き出す


"いつもなら、そろそろアイスクリームだろ"


いままでと今日が違うかもしれないなんて、
これっぽっちも考えていない
自分軸


母は付き合うかのようにアイスを食べた
しかし、そのスピードが半端なく早い
ちょっとずつ口に運んではいたが、
それでも、はい!はい!はい!と
何度も口に放り込む


そして、母が咳き込んだ
咳をすることもできない体力の中、
かなり苦しんで咳をしていた


見ている方も辛かった…


それを見た父は、
"あ!水を飲んだほうが良いな"
って、水を飲ませた
しかし、咳き込みたいけど咳ができない様な
状況
私は手出ししようか迷いつつ、声かけをした


母は大丈夫(神経集中してるから放っとけ)
な様子
とりあえず、見守るしかなかった


そして、
"いつもこれから…"
と言って酎ハイを勧める
飲む母
まだむせている感じ


"甘酒は?"
もういらないと意思表示され、戸惑う父に、
"いつも同じじゃないから…!"
とついに口出しをした
むせさせてしまった事を取り戻すために、
必死に解除したい気持ちはわかるが…
父に任せていたら、怖くて仕方なかった


"あ!ベッドを高くするのを忘れてた!"
と頭を高くする
一理あるが、父のその行動は、
やっぱり自分は悪くない!と言いたげだった


ベットを高くしようと、
昨日までの母ではないことに気付け
今までと同じ事を繰り返すな
臨機応変に対応ってことが出来ない父


大っ嫌い


見ている私の心拍数があがり、
兄にもその内容を報告


"最後までストレスで言いようがないな"


なんでそんな無神経なことができるのか…
頑張りたい気持ちが空回りしている
それこそが、こうなる原因とは思わないのか


母の様子を確認していると、
神経集中のためか苦しみのためか、
顎がガクガクしていた…
怖かった
痙攣?これが下顎呼吸?
その時は怖くてそう思ったけれど、
今考えればとにかく変なところに入って
誤嚥性肺炎になるのを必死に耐えている…
そんな感じだった


顎の震えが止まったのを確認し、
胸を撫で下ろしたのは、今でも忘れられず…


そこからは、
私は疲れたからとカーペットに横になる


次は何飲みますかー?
いつも飲みますよねー!攻めで、
母も相当疲れていただろう…


寝息を立てたのを見て、胸を撫で下ろした


父の緊張感が部屋中に漂っていたため、
みんな(父も)グッタリ


私は横になるとブランケットを被り、
しばらくしたら寝ていた…


夢を見ていたのか、
遅刻だ!と焦って起きると、
目の前にはイビキをかいた母がいた
頭が追いつかず父を見ると、
父も椅子で腕を組みウトウトしていた


みんなが疲れている


夢から現実にかえり、苦笑いする私
どちらが現実の方が幸せだったか…


つづく