さてと今回は…
ドレヴァンヒェルでは大騒ぎになっていた。
オルトヴィーンが通っている大学近くにある神社の経営する喫茶店に立ち寄って帰ってきたアドルフィーネとオルトヴィーンがおかしくなってしまったのだ。
全ての記憶をなくしてしまっている。自分が誰なのかさえも。
直ぐにドレヴァンヒェルの経営する病院に運ばれ検査を受けるが原因がわからない。会長にグンドルフが呼ばれた。
グンドルフは直ぐに宵闇の巫女と運命の子が制裁を加えたのだと理解した。
会長も予想したがまさかこんな事が起こるとは思いもよらなかった。
グンドルフはドレヴァンヒェルがやったことが宵闇の巫女と運命の子の逆鱗に触れたのだと言う。
2人の症状は酷くこのままでは日常生活までも送れなくなってしまう程だ。グンドルフは宵闇の巫女と運命の子の研究をしてきたからこれがいかに解除するのが難しいのか知っている。
運命の子が解除しない限りこのままで、日常生活に関わるということは生命の危機でもある。
そして、ここまで宵闇の巫女と運命の子が怒っているということはドレヴァンヒェルに現存する宝石魔石の欠片の消滅を意味する。たとえ、眼の前に宝石魔石が無くとも宵闇の巫女と運命の子の力を合わせれば「滅」と唱えただけで遠隔でも力が使えるのだ。そうなってしまったらドレヴァンヒェルの衰退が始まる。グンドルフは直ぐにローゼマインとフェルディナンドに接触するように説得した。
グンドルフはこれで悟った。ドレヴァンヒェルにいても今後自分の好きな研究をつづけることは難しいだろうと。ヒルシュールの言ったお土産を持ってドレヴァンヒェルを捨ててエーレンフェスト製薬に行かなければならないと。
ユスクトスとハルトムートはドレヴァンヒェルの会長室にいた。
ドレヴァンヒェルの会長はフェルディナンドとローゼマインに会いたいと申し入れていたが現れたのはユスクトスとハルトムート。
彼らは2人がこの場に現れることはないと告げる。
そしてアドルフィーネたちがこうなったことの経緯を詳しく話して聞かせる。
その中でドレヴァンヒェルが創造主の血筋が絶えたことで資格を失っていることを初めて会長は知った。
しかし、心の何処かで2人を手に入れればどうにかなるとまだ思っていた。そんな事はユスクトスとハルトムートには見透かされているとも知らずに。
そしてハルトムートはドレヴァンヒェルがここで引かないのならアドルフィーネ達はこのままで、生命の維持も出来なくなるだろうと。そして何よりドレヴァンヒェルがかつて与えられた宝石魔石の欠片の消滅が避けられないと。
宝石魔石が消滅した大貴族がどの様な末路を辿ったか知らないはずはないでしょうと。
確かにかつてアーレンスバッハ伯爵家はアダルジーザの姫を娶るということで、隆盛を誇っていた。宝石魔石の欠片もひときわ大きいものを所有していた為に大貴族の中でも上位に位置していた。公爵家よりも実質的に上位だったのだ。
それが大戦の原因になったアダルジーザの姫の殺害によって宝石魔石の欠片は消滅した。
最初の数年はそれまでの蓄えではどうにか持っていたが貴族制が解体されてからは坂道を転がるように落ちぶれていった。かつての名家という矜持だけでどうにか食いつなぐ、そしてドレヴァンヒェルからの嫁いでいた者たちの援助として支援をしていたモノがなければ生きて行くことままならなかっただろう。
アーレンスバッハ家の娘たちは血筋のしっかりした名家の出身ということを売りに成り上がりだろうがとにかく金持ちの家に嫁ぐものが相次いだ。
その中で、ディートリンデは異質だったが。彼女は自分の美貌と体を武器に権力者を手玉に取り次々と弱みを握り悪事を重ねながら贅沢な暮らしをしていた。その時にジギスヴァルトと手を組みあらゆる犯罪に手を染めていた。そして運命の子の情報を手にエーレンフェスト家に近づきヴェローニカを手玉に取りフェルディナンドを手に入れようとしていた。
ドレヴァンヒェルの会長は宝石魔石が消滅した惨状をいやというほど見ていたのだだからこそそれを手に入れ、自在に使える立場になりたかった。
しかし本当に宝石魔石が消滅したらそれほど恐ろしいことはないし、跡継ぎの子どもたちがこのまま命を削るのも許容できない。ならば今回は引くことにしようと決心するしかなかった。
ユスクトスとハルトムートはここで引き、こちら側の人間になるのなら宝石魔石を操ることはできないがその恩恵をずっと受けることができるようにしようと持ちかけた。
ユスクトスはドレヴァンヒェルにかつてのローゼマインの両親の事故の原因を探らせようと考えた。あの事故は同じ大貴族のクラッセンブルグ公爵家とダンケルフェルガー公爵家が絡んでいることはわかっている。それを詳しく調べるためには同じ大貴族のドレヴァンヒェルの情報力が必要だと。
それができるのであればアドルフィーネたちにかけられた「忘却」を解除して新しい宝石魔石の欠片を渡しても良いと。もちろん二度と宵闇の巫女と運命の子に対立しないという条件下のもとでと。
ドレヴァンヒェルの会長はこれは破格の条件だと直ぐに了承した。
この面会のあとグンドルフはドレヴァンヒェル製薬を辞めてエーレンフェスト製薬へと転職した。もちろんお土産を持って。
と、今回はここまで。