小説「あらかじめなる女」(仮題)第9節のテーマは、「あらかじめ一なるものに生きられている」。
あなたは、数多のものから一なるものとして生きられている。
数多のものは、あなたを通して、数多のものを生きる。
あなたが感じ取る数多のものとは、みなあなたの一なるものから出ている。
またあなたは、数多のものを通して、あなたの一なることを生きる。
あなたは、あなたを通して生きられる数多のものから、あなたの一なるものを生きるのである。
あなたが生きる一なるものとは、創造主の孤独を生きるということである。
あなたの相手は、あなたに、この世界があなたによって生きられている場所であり、あなたの相手もまた、あなたによって生きられた存在であると語りかける。
すると、あなたもまた、あなたの相手もまた、あなたから生きられているのだと答える。
「あなたがわたしから生きられているように、わたしもまた、あなたから生きられているのです。
あなたと出会う以前の世界を、わたしは持ちません。
わたしは、あなたによって生きられた存在なのです。」
恋が盲目になるのは、まさに、互いが互いにとって、創造主の孤独を生きるからである。
あなたは、相手にどこに住んでいるかを問い、あなたの相手もまた、あなたに同じことを尋ねると、二人は、それぞれ相手の場所を訪れ、互いに相手から創造された数多なる存在としての自分を、万物の創造者から創造された世界の中に垣間見るのである。
すなわち、木はあなたの孤独。
あなたは、木に、あなたの数多なる孤独としての自分を見る。
しかし、木にあなたの数多なる孤独を見ているあなたは、数多なるあなたの恋人の孤独を支える、一なる孤独でもあるのである。
風は、あなたの息吹。
あなたは、風に、あなたの数多なる息吹としての自分を感じ取る。
しかし、風にあなたの数多なる息吹を感じているあなたは、数多なるあなたの恋人の息吹を助ける、一なる息吹でもあるのである。
日向は、あなたの温もり。
あなたは、日向に、あなたの数多なる命の温もりを思う。
しかし、日向にあなたの数多なる温もりを思うあなたは、数多なるあなたの恋人の温もりを守る、一なる温もりでもあるのである。
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※このテーマの元になっているのは、中世の神学者ティエリーの数秘的神学。唯一神は「1=一なるもの」であり、世界は神の一者性を受けた「1×数多なるもの」であり、世界のものどうしはまた、互いの数多性を掛け合わせた「数多なるもの×数多なるもの」となることで多様な世界を作り上げている、という。
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