ふと、気になる光景がある。
たとえば、このかんきつ類の持つ、まばゆいほどの黄色。
あたりは、こんな暖かみのある色がなく、この場所だけ春の陽光のような鮮やかな黄色が輝いているのだ。
でも、じつのところ、それが気になったというのではない。
気になったのは、このかんきつ類の実のそばに、母子がいたことだ。
男の子は小学校の低学年くらい。
母親は、おそらく二十代後半か三十代だろうが、二人とも後姿しか見えない。
男の子はブランコに乗っている。
そのかたわらで、母親が男の子の背中を押している。
ただそれだけだ。
だが、この母子と、その手前のかんきつ類の黄色が、なにか無性に胸に迫った。
どうしてだろう、と思い、ふと、自分の過去のことを振り返る。
男の子にとって、母は自分の大事な思い出なのだ。
そして、母にとっても、わが子と過ごしている時間はとても大事なものだ。
母子として過ごせるのは、そう長くはない。
母と子は今、互いにとってとても大切な時間を過ごしているのだ。
かんきつ類の黄色が、そんなことを思わせてくれる。
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