かくしてプロメテウスは、主なるものの真実について語り始める。
「貴方の秘密。それは、貴方が完全無欠であるはずだのに、そのじつは、完全無欠ではない、ということである。
この事実を隠すために、貴方は、自分が完全無欠であることのあかしとして、貴方の創造物に対して、さまざまなわざわいをもたらしてきたのである。
地震、雷、嵐、竜巻、津波、大洪水といった、人類が経験したさまざまな自然災害を通して、貴方の恐ろしさを、人類に示してきたのである。
人類が作った最高の建造物であったバベルの塔を、貴方に対する不遜の表れとして破壊したのは、貴方であった。
人類が互いに生き合い、人生を謳歌していた二つの町、ソドムとゴモラに天から火を降らせ、滅ぼしたのは貴方であった。
同じように、大洪水を起こし、ノアの一族と彼らが集めた動物たちを除いて地上のものを滅ぼしたのは、貴方ではなかったか。
貴方の被造物である人類は、貴方を恐れ、貴方にかなうように振舞うことこそ、善なることである、と考えた。
かくして、貴方を祀る神殿や祭壇が作られ、貴方に対する奉仕を目的とする宗教が考え出されたのである。
人類は、貴方を完全無欠にして善なる存在として崇めた。
しかし、貴方は人類が崇めるほどには完全無欠にして善なる存在ではないのである。
人類がたたえる貴方は、貴方がつくりだした、偽りの神である。
もっとも、その矛盾は、なにより貴方自身がよく知っていた。
貴方は、貴方自身の矛盾にしだいに苦しみ始めたのである。
それは、貴方がやはり完全無欠なものを目指していたからである。
その意味で、貴方は、完全無欠にして善なるものを象徴するということは言えるのである。
より自分であるものを生きる。
その強欲さこそが、貴方を完全無欠にして善なる存在に振舞わせていることの動機である。
貴方は、より自身であるものを生きるために、人類を創造した。
そして、貴方に決定的に欠けているものを補うために、互いに対等なものどうしの絆であるものとして、人類神であるわたしを生んだのである。
貴方に決定的に欠けているものとは、まさにわたしの特質。
それは自身と対等なものをもつ、ということである。
自身と対等なものを持たない貴方には、わたしを通して、互いに対等なものどうしであるものを生きるのである。
わたしなくして、貴方は、互いに対等なものどうしであるものを生きることはできない。
わたしがないところでは、貴方は、人類に対して、ただ暴君として振舞うしかないのである。
そうして、貴方は、貴方が与えた絶対的な神に対する畏怖心のあまりに、萎縮してしまった人類を再び豊かに生きるために、わたしに命じて、貴方からのかりそめの解放者を人類の中から選んだのである。
すなわち、シッダールタ、孔子、ソクラテス、イエスなどに代表される、新しい宗教、哲学の開拓者たちである。
彼らは、貴方が人類をより生きるがために、わたしを通して集めさせた、貴方からのかりそめの解放者なのである。」
※プロメテウスの物語は、全能なる神に対する人類神の反抗としてのみ捉えるのではなく、ぜひ貴方自身の中のドラマとして考えて頂ければと思います。すなわち、これを読まれている貴方のなかに、全能の神と人類神と、被造物たる人類があるのです。