夫に誘われて、『ティファニーで朝食を』を観てきた。

特に素晴らしい傑作映画を選定委員が選び、全国の映画館で1年間にわたって連続上映する「午前十時の映画祭」という企画があるそうだ。

必ずしも、十時から始まるのではなく、映画館や作品によって、午前中に上映が開始されるらしく、今回は、大阪駅のステーションシネマで、11時25分からの開始だ。

私は初めてだけど、夫はこれまでにも何度か一人で観に行っているようで、朝10時からの時もあったとのこと。

 

GWのJR環状線や、大阪駅の混雑はすごかったけれど、座席はネットで確保済なので、安心。映画館に向かう途中の、ステーションシティの屋上広場や庭園の木々やグリーンが心地よい。

 

 

 

新作映画ではないので、スクリーンは小さめで定員も少ないが、ほぼ満席だ。

夫婦や、女性同士の観客が多い中、ひとりで来ている男性もいる。さすがに、小さな子どもはいない。

 

映画のオープニングシーンがとってもよかった。

明け方の、まだ目覚める前のニューヨーク五番街に、すべりこんでくる黄色いタクシーが、ティファニーの前で停まる。

 

降り立つのは、まっすぐに背筋を伸ばし、ドレスアップしたオードリー。

祈りを捧げるように胸の前で合わせた手をほどき、おもむろに袋から取り出したパンにかじりつき、テイクアウトのホットコーヒーに口をつける。

 

流れている「ムーンリバー」の旋律がもの悲しく、狂おしくて……、折れそうな首筋と、小さな肩、きゃしゃな後ろ姿が小さくなってゆく。冒頭だけで、良質の映画が始まるという期待と満足感。

 

ネタバレになるので、あまり書けないけれど、オードリーが弾き語りで歌う「ムーンリバー」が、とてもよかった。最初から最後まで、表情がとにかくよかったし、ファッションが素晴らしかったし、スタイルがよくて、目が釘付けになった。

長い映画で、もう終わるのだろうと思ったら、何度もどんでん返しがあり、信じられないような出来事があり、魅力的なシーンがあり、印象的なシーンの連続だった。

夫も私も生まれる前、1961年の作品だとは思えないくらいだ。

 

この映画でも、名前が象徴的に使われていると感じた。

ほんとうの名前を隠して、偽名を使っていたり、ほんとうの名前で呼ばれていなかったり。猫には名前がつけられていなかったり。

 

心に強く残ったのは、映画の中で、オードリーヘップバーンが、婚約を破棄されているのに、ブラジルへ「行く」と言ったとき。

はっとした。強く魅かれた。

何にも縛られないこと。何が起こるかわからない未来を、ワクワクして楽しむこと。

(彼女なら行くかも)って思った。

 

でも、その強さは、不安の裏返しでもある。ポールの言葉で、彼女はブラジルへは行かず、本当に大切なものは何かに気づいて、2人が結ばれるところで、映画は終わる。

 

ところが、小説では、彼女は、ポールの前から姿を消して、どこかに行ってしまい、その後、アルゼンチンのブエノスアイレスから手紙が届くのだという。

その後、彼女がどうなるのかは、小説でも、映画でも、書かれていない。

自由か、愛か、みたいなことが、映画の中のセリフでも語られていた。

村上春樹氏の新訳があるらしいので、読んでみたくなった。

 

名前と言えば、この映画に登場する日本人らしき人物が、「ユニオシ」と呼ばれていて、そんな苗字も、下の名前も、日本にはないと感じて、気になった。

 

映画を観たあと、夫と話したことはいっぱいあるのだけど、最後に、ぶったまげたことを一つ。

 

オードリーの相手役が、最初は売れない作家で、しだいに売れ始めていく様子が描かれていたからなのか、帰りの電車の中で、夫がいきなり、「俺、小説書いてるねん」告白。

 

漫画作品を元にした二次的著作物というジャンルで、ハマっている漫画を元に、別の視点から書いているらしく、とっても楽しそう。

今年の1月から書きはじめていて、もう、43話ほど書いているというので、驚く。

本当に楽しく、いくらでも書けるのだと思う。

 

(よきことなり)

 

小説サイトとは別に、その原作漫画の「考察」をつぶやくツイッターのフォロワー数も、どんどん増えているというので、びっくり。

 

(いつのまに!)

 

そういえば、私に、「小説を書くサイトがいろいろあるけど、興味はないのか」とか、「小説を書かないのか」とか、しつこく言っていたのは、自分が書いているからだったのか(笑)

気づいてあげられなくて、ごめん!

 

私は、老眼が進んでから、フキダシの字が小さい漫画全般を読むのがつらいので、二次著作物を書きたくなるほど、夫がハマっている原作漫画を読む気力が全く湧いてこないけど、楽しく書けるのは、すごくいい。

しかも、書くスピードが早そうなので、心の底からうらやましい。そのスピード分けてほしい。

 

ともあれ、夫婦で文筆にいそしめるとは、なんとよきこと。

私も、自分が好きなことを、たくさん書こうと思う。

 

夕方には、東京にいる息子が帰省するので、デパ地下で柏餅を買う。

明日は、みんなで義父母宅に行くので、そのお土産も。

 

浜田えみな