小さなお米つぶたちが、いっせいに、クスクス、うきゃうきゃ、笑い転げている中に入って、耳元をくすぐるような笑いの渦の中で、こちょこちょこそばしあって、思い思いにブレイクダンスしている感じ。
そんなことをしたことはないけれど、イメージの中で、私はお米たちと遊んでいて、その高揚を感じたまま、水の中でお米粒たちにふれる。
(ちゃめっけたっぷりなお米粒たち)
そんなふうにハートとつながって、お米にふれて炊きあがったごはんは、いったい、どんな味がするのだろう。
(くすくす笑い転げて炊きあがるごはんを、私と家族は、ずっと食べ損ねていたことに気がつく)
(これからは、話しかけずにはいられなくなる)
(本文より)
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ヒツキアメツチを主宰されている大橋和(なごみ)さんが、米子から山根美穂さんを招いてくださり、ミキをつくるワークショップを開催してくださった。
たくさんの人が集まる場は、子どものころから苦手で、オンラインでも対面でも緊張してしまう。
サロンに着いて、扉を開けていただくと、玄関には靴がなく、まさかの一番乗り。
Uターンして、みんなが来るまで外で待っていたい気持ちでいっぱいだけど、そんなおかしなことをするわけにもいかず、おそるおそる中に入らせていただくと、ハルモニウムが置いてあるのが目に入り、たちまち、うれしくなる。
ほどなく、美穂さんのやわらかで伸びやかな歌声が聞こえてきて、お話したこともない美穂さんのことが大好きになる。
近くで、ハルモニウムを見るのは、初めてだ。
(撮影:大橋和さん)
サロンには、光がいっぱいに差しこんで、風が通り、みんなが来るまで、すぐ前に座って、蛇腹の開閉によってゆらぐハルモニウムと、透き通るマントラの調べを、いっぱいに浴びていると、とても心地よくて目をとじる。
だんだん、みんながそろってきて、輪になって座る。
和さんと美穂さんのお言葉をいただく。
マントラの音の意味を教えていただき、みんなで声を合わせる。
前日に、和さんから、「自分の身体にいる」ということが、とても大事だと教えていただいていたのに、
(歌詞を覚えなきゃ)
(メロディを覚えなきゃ)
(リズムを覚えなきゃ)
ということで頭がいっぱいになって、身体が置き去りに。
和さんが、背中に手をあててくださったから、そのことに気がついた。
後ろからハグしてくださったのか、背中一面があたたかくなり、そのやわらかな感覚に、
(わたし、ここに、いる)
と気がつく。
自分の輪郭(かたち)を、和さんがふれてくださっていることで感じる。
(自分のことを、おしえてくれるのは、そばにいてくれる人)
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奄美大島に住む人々に飲まれていて、ご神事に奉納されているという「ミキ」については、名前を聴いたことがあるくらいで、飲んだこともなく、作り方も知らなかった。
材料は、水と米とさつまいもで、作り方もシンプル。
でも、ひとつひとつの瞬間が、五感を通じて、神様とつながるご神事に思えた。
たとえば、お米を「研ぐ」。 お米を「洗う」。
美穂さんが教えてくださったのは、そのどちらでもなく、
お米を「感じる」。お米と「話す」。お米の声を「聴く」。お米と「歌う」。お米と「笑う」。
または、いのちを。または、ひかりを。
(お米とつながる)
(いのちとつながる)
(ひかりとつながる)
そんなふうに感じた。
つながるのは、「ハート」だと、話してくださった。
ほんとうに、やさしく、いとおしく、対話するように、てのひらにつつみこみ、すべてのお米粒とお話されるように、つながっていらした。
ひとりひとり、順番にお米にふれさせてもらう。
流し台の前に立ち、水を張ったボウルで、じっと待っているお米粒に手を差し入れ、てのひらに包み込んだとき……
傍に立つ美穂さんに感じられ、伝えたくなるものが、それぞれ違うのだそうだ。
美穂さんのことばかけによって、そのひとのなかから引き出されていくものが、いっぱいにひろがって、あふれだしていく。
(その気配を、見守っている)
私が、伝えてもらったポイントは、
(お米たちの無邪気さ)
小さなお米つぶたちが、いっせいに、クスクス、うきゃうきゃ、笑い転げている中に入って、耳元をくすぐるような笑いの渦の中で、こちょこちょこそばしあって、思い思いにブレイクダンスしている感じ。
そんなことをしたことはないけれど、イメージの中で、私はお米たちと遊んでいて、その高揚を感じたまま、水の中でお米粒たちにふれる。
(ちゃめっけたっぷりなお米粒たち)
そんなふうにハートとつながって、お米にふれて炊きあがったごはんは、いったい、どんな味がするのだろう。
(くすくす笑い転げて炊きあがるごはんを、私と家族は、ずっと食べ損ねていたことに気がつく)
(これからは、話しかけずにはいられなくなる)
乾いたお米に最初に浸す水は、とても大事だと教えていただいた。
いままでみたいに、じゃーって水を入れるのではなく、言葉をかけようと思う。
炊飯を、自分のハートとつながる機会にしようと思う。
お米粒たちの話を、聴いてみようと思う。
おかゆを焚いていると、ガスの火が燃える音に、おなべの中の水が沸騰をはじめる音が重なり、その音は、水の量や、お米の状態によって変わっていく。
お鍋の前で、台所で聞こえる「音」について、とっても、楽しそうに話してくださる美穂さん。
たしかに、いくつかの料理を平行して作っていると、台所には、いろんな音があふれる。
ふきこぼれたり、煮詰まったりするので、沸騰する音や、焦げ付く気配には敏感だけれど、アラームとして感じるだけで、美穂さんのように楽しんでいなかったし、ゆとりのかけらもなかったことに思い当たる。
調理中に聞こえてくるさまざまな音は、すぐに耳に蘇ってくる。
音だけで、何を作っているのかわかるほど。
美穂さんは、その音たちの中にいて、それぞれの音を聞き分け、引き出し、ハーモニーを操る指揮者のように見えた。
(キッチン・オーケストラ)
という言葉が浮かんで、わくわくする。
昔は、火を起こすのも、かまどだったから、もっと、たくさんの、今では聞くことができなくなった音を、女性は聴き分けて、火と、水と、風の中心にいたのではないかと、思う。
かまどにも、お台所にも神様がいて、家の中には、たくさんの神様がいて、太陽の下で土を耕し、水を汲み、集落の女性たちと笑い、循環の中に在る女性によって、その家の命が育まれ、継がれていったのだと感じる。
***
おかゆがたきあがったら、木べらで混ぜるという行程がある。
これも、みんなで順番に混ぜた。
このとき、つながる場所は、ハートではなく、下腹部。
丹田のあたりなのだろうか。
私の場合は、つながるよりもなによりも、まず、その中に入ることができないという関門が。
(入ろうとしても、弾力のあるバリアみたいなものがとりまいている感じ)
美穂さんは、ずっと下腹部のポイントにふれてくださっていた。
和さんは、背中や、知らないうちに力が入っている下あごをゆるめてくださっていた。
そうしているうちに、入れなかった場所に、ぽんって入っていた。
(安心で、安全で、こわくない場所)
こんなところにあったのだ、と思った。
木べらで、炊きあがったおかゆのなべをかきまわすとき、「もう、好きなように、楽しくやっていいから」って言ってくださった。
お米を洗うときも。
おかゆをまぜるときも。
子どもみたいなままで。
(頭であれこれ考えないで)
***
さつまいもをすりおろすのは、まるいおろし器。
(くるくると渦が生れる)
これも、みんなの手で。
(十人の女性の手)
(それぞれのハートや、からだの大切な場所からつながるエネルギーが、ミキの中へ)
できあがったミキは、みんなで分けて持ち帰らせてくださった。
「分け御魂」という言葉が浮かぶ。
(美しく、唯一無二の、かけがえのないもの)
自宅で、発酵を見守る。
発酵が始まると、泡が出てくるそうだ。
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(撮影:大橋和さん)
昼食は、美穂さんが用意してくださった、玄米ごはんと、おみそしると、ミキを使った和え物が二種類と、うめぼし。
和え物は、オレンジと緑の色どりが美しい。
にんじんと、菜の花だ。
(撮影:大橋和さん)
にんじんには、桜の花の塩漬けがトッピングされていて、季節感たっぷり。
しっかりして甘いにんじんと、やわらかなほろ苦さに春を感じる菜の花。
(食べ物は、いのち)
(いただくまで、生きている)
(いただいてからも、生きている)
そのように接するのも、接しないのも、作る人や、食べる人の在り方によることに、気がつく。
美穂さんは、米子から大阪に向かう日に、契約されている農家さんに寄って、材料をそろえてくださったそうだ。
土から抜いたばかりのものたち。
根菜をみると、思い出す言葉がある。
「どんなにいびつでも、でこぼこでも、土に抱かれていた形なんだよ」
田舎に住む友人の言葉だ。
耕された畑ではなく、山に自生する芋の仲間だったから、掘り出されたそのかたちは、いびつで、ごつごつしていた。
だけど、それは「土に抱かれていた形」
美穂さんが用意してくださった、心づくしの品々も、土から生まれたものだ。
玄米も、にんじんも、菜の花も、もとは小さな種。
太陽の光を浴び、風に吹かれ、雨に打たれ、人の手によって育てられ、収穫されたもの。
どのように育てられたものかを、美穂さんは大切にされていて、それを届けてくださった。
噛むたびに、「滋味あふれる」という言葉が浮かぶ。
(輪になっていただける幸福)
(その場に在ることの幸福)
(春分という特別な日の幸福)
美穂さんは、ミキつくりのいくつもの過程で、参加したひとりひとりのからだにふれ、瞬時に伝わってくるものを翻訳して伝えてくださり、サポートしつづけてくださった。
ヒツキアメツチの学びの中で、みなさんを感じてこられた和さんの言葉は、その背景を知らない私にも、宝物のように感じた。
(その場に、ずっといられたこと)
(すぐ、かたくなったり、無意識にとじていたりするたびに、和さんが手を添えてくださったこと)
(おなべをまわすとき、自分では見えない、自分の外面の変化も、いっしょにいる人たちが、あたたかく見守ってくださったこと)
(できあがっていくミキには、そのすべての瞬間が、手を通して、木べらを通して、音を通して、渦を通して、仕込まれている)
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「忘れないうちに、作ってくださいね」
そう言って、レシピと、ミキつくりの材料をお土産にくださった。
今回と同じお米が1キロと、必要な量のさつまいも。
(撮影:大橋和さん)
ミキは、「誰かといっしょに創りたい」と思った。
たとえば、娘。
たとえば、共鳴しあえる人。
和さん、美穂さん、ご一緒したみなさんへ、心からの感謝を。
最後のイメージワークで、受けとったイメージは、虹のひかり。
ミキの発酵を見守ります。
浜田えみな。
山根美穂さん Remind & Essence Lotus
大橋和さん ヒツキアメツチHP






