家族ラインに、4月から広島支社に勤務している息子から

「仕事おさめました~」

という投稿が入った夜……。

 

私も、職場の仕事おさめだった。

15時から一斉清掃をして、終業時刻の前に所長の挨拶を聴く。

カレンダーは、すべて「1月」にかわっている。

ぴかぴかに輝いている事務所の鍵をしめるとき、
 

(いったん閉じるって、ひらくために大切なことだな)

 

と、感じたことを思い出す。

 

Tが、年内の処理をちゃんとおさめることができたかどうかは「微妙」だけど、ラインの波動は明るかったから、職場でもなんとかやれているのだろう。

29日の夕方に帰ってくるという。

私は、認知症の父の介護で、夫と娘のいる自宅ではなく、実家にいるので、すぐには会えない。

30日の夜に実家に来てもらって、みんなでごはんを食べることにする。

ものすごく久しぶりに、近所の中華料理屋の出前を頼んだ。

たくさんの皿が並ぶ。

 

小皿を出したり、ビールを出したり、ごはんをよそったり、デザートを用意したり、ニコニコと質問したりしながら、ふと、

 

(母と同じことをやっている)

 

と、気づく。

 

座っている場所も同じなのではないかと思って、びっくりする。

母は、写真立ての中だけど。

 

**********

 

ちなみに、この晩御飯に、Tは15分遅刻。

梅田にあるセレクトショップで、コートと、ニットと、ブーツを買ったという。

 

(なんで、服!?)

 

広島には、彼の好みに合うものがないので、帰省したときに買うと決めているとのこと。

 

「ええー――っ 服を買って、どこに着ていくの? 職場と家の往復だけでしょう?」

 

と思うのだけど、好きな服を着ると、気持ちがアガルのだという。

 

ふと見ると、荷物の上に置かれた白のワッフル地のパーカーがかわいくて、思わず手にとる。

娘のNのかと思ったら、それにしてはサイズが大きく、尋ねてみるとTのだという。

すごく気にいっているらしく、うれしそうに、さっそく着てみせてくれた。

たしかに、いい感じ。

 

「メキシカンパーカーっていうねん」

とのこと。

 

みんなが目に留めて、「いいね」ってくれるらしい。

 

買ってきたニットは、そのパーカーに合わせて着るといい感じになると、ショップの人に薦められたそうだ。

値段を聴いて、ぶっとびそうになるけど、そういうものらしい。

 

買ったばかりのコートも着てみせてくれる。着心地がいいそうだ。私も羽織らせてもらう。

コートの値段は、心臓に悪いと思ったので、聞かなかった。

 

それにしても。

小学生のころは、冬でも半袖のスポーツシャツで、ドッジボールばかりやっていて、中学のころも陸上クラブのジャージで、高校の時は進学校で制服しか着ていないので、洋服に目覚めたのは、大学に入ってからだ。

夫も、おしゃれなので、素地はあるのだろう。

 

****

 

食後のお茶を飲むとき、夫と私と娘はコーヒーだが、Tは紅茶がいいというので、


「アールグレイと、アッサムと、ダージリン、どれがいい? 紅茶のこと、わかる?」

 

と尋ねると、

 

「ちょっと凝ってたけど、もう忘れた」と笑いながら、「ダージリン」がいいと言う。

ちょっといい紅茶を淹れてやると、「おいしい」という。

いつのまに、紅茶のちがいがわかる子になったのか。

 

朝は6時30分に起きて、8時までに出社して、19時~20時まで残業らしいので、11時間勤務!

残業代は定額だから、ほとんどサービス残業。

お給料も、そんなによくない。ボーナスも、私の予想より低い。

 

それでいいの? と思うけど、会社の人に、海づりに連れていってもらって、大きなハマチを釣っていたし、ゴルフも始めていると聴いて、びっくり。

ゴルフセットも買ったそうだ。

 

(おおー―――っ)

1月には、ゴルフ場でコースデビューするとのこと。

広島には、たくさんゴルフ場があるらしい。

 

(よいねぇ~)

 

知らない間に、どんどん進化していく。

 

***

 

娘のNは、年が明けたら成人式。

緑の着物に合うよう、カラーリングをしてもらい、まつ毛パーマをしてもらい、眉カットもしてもらっていた。

 

(まつ毛パーマ!)

 

Nの心は、9日の「成人式」ではなく、8日に京セラドームである、「Hey! Say! JUMPのコンサート」

 

一般のチケット販売で切符をゲットできたため、突然行けることになり、ときめきMAX大コーフンだ。

 

(何を着ていくか、どんな髪型でいくか)

 

Nの頭の中は、そのことでいっぱいで、ずっとスマホで検索中。

コンサートで使ううちわも手作りするらしい。

 

一般販売で、よくゲットできたものだと驚くと、「一般販売のチケットの取り方」というのを事前に調べて、準備したからと、鼻高々で教えてくれた。

 

(そんなことができる子だったとは!)

親が教えないことを、子どもたちは、自分でどんどんやっていく。

私より、よっぽどすごい。

****

 

そういえば、

 

「お母さんが、かわいい服を着ている」

 

と、Tがほめてくれた。

最近買ったカーディガン。このあいだ、Nにも「かわいい」とほめてもらったものだ。

 

ハンガーにかけてあった、白いベスト付きコートも、目ざとく見つけて

 

「いいんちゃう? 似合うと思うよ」

 

とほめてくれたT。

 

(ええっ いつのまに、そのようなことが言える子に!?)

 

社会人になって、1人暮らしして、各段に成長しているのを感じる。

 

Tがほめてくれた白のベスト付きコートは、12月9日に、「わたしだけの時間 写真家 あいさん」の撮影会に着ていったもの。

思いがけずあたたかい日で、森の中では不要で、カバンに入れたままだったけど。

 

撮影の時は、アイボリーのざっくりしたセーターと、スカートみたいに見えるキュロット

ムートンのブーツ。

 

スカートをはくのは、8年ぶりくらいだ。

ショップのお姉さんに薦められ、買うつもりはなかったけど、せっかくなのではいてみたら、試着室の鏡に映ったシルエットから、目が離せなくなり、お持ち帰り(笑)

 

そのことを、すっかり忘れていたので、納品された写真を観たとき、見慣れないシルエットに驚き、ときめいた

 

(スカートっていいな)

 

スカートはくと、表情もしぐさも変わる

写真をみて、そう思う。

 

TもNも、おしゃれが大好き。

私は、着る服なんて、どうでもいいという性格だけど、洋服によって、たしかに何かが変わる

それは、見たことのない自分を引き出してくれる

 

ちなみに、私があまりにダサイので、去年か、一昨年前の母の日に、TとNが、

「自分たちがお金を出して、お母さんをショップに連れていって、コーディネイトしたい」

と言ったことがあった。

 

そのときは、「NO THANK YOU」だったけど、今なら、やってほしいかも
私よりは、ずっとセンスのよいTとNに。


年越しそばを、一緒に食べられなくて、残念。

2022年も、あと数時間。

 

2023年は、二人にコーディネイトしてもらおう。

 

浜田えみな


(撮影 わたしだけの時間 写真家 あいさん)