家族ラインに、4月から広島支社に勤務している息子から
「仕事おさめました~」
という投稿が入った夜……。
私も、職場の仕事おさめだった。
15時から一斉清掃をして、終業時刻の前に所長の挨拶を聴く。
カレンダーは、すべて「1月」にかわっている。
ぴかぴかに輝いている事務所の鍵をしめるとき、
(いったん閉じるって、ひらくために大切なことだな)
と、感じたことを思い出す。
Tが、年内の処理をちゃんとおさめることができたかどうかは「微妙」だけど、ラインの波動は明るかったから、職場でもなんとかやれているのだろう。
29日の夕方に帰ってくるという。
私は、認知症の父の介護で、夫と娘のいる自宅ではなく、実家にいるので、すぐには会えない。
30日の夜に実家に来てもらって、みんなでごはんを食べることにする。
ものすごく久しぶりに、近所の中華料理屋の出前を頼んだ。
たくさんの皿が並ぶ。
小皿を出したり、ビールを出したり、ごはんをよそったり、デザートを用意したり、ニコニコと質問したりしながら、ふと、
(母と同じことをやっている)
と、気づく。
座っている場所も同じなのではないかと思って、びっくりする。
母は、写真立ての中だけど。
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ちなみに、この晩御飯に、Tは15分遅刻。
梅田にあるセレクトショップで、コートと、ニットと、ブーツを買ったという。
(なんで、服!?)
広島には、彼の好みに合うものがないので、帰省したときに買うと決めているとのこと。
「ええー――っ 服を買って、どこに着ていくの? 職場と家の往復だけでしょう?」
と思うのだけど、好きな服を着ると、気持ちがアガルのだという。
ふと見ると、荷物の上に置かれた白のワッフル地のパーカーがかわいくて、思わず手にとる。
娘のNのかと思ったら、それにしてはサイズが大きく、尋ねてみるとTのだという。
すごく気にいっているらしく、うれしそうに、さっそく着てみせてくれた。
たしかに、いい感じ。
「メキシカンパーカーっていうねん」
とのこと。
みんなが目に留めて、「いいね」ってくれるらしい。
買ってきたニットは、そのパーカーに合わせて着るといい感じになると、ショップの人に薦められたそうだ。
値段を聴いて、ぶっとびそうになるけど、そういうものらしい。
買ったばかりのコートも着てみせてくれる。着心地がいいそうだ。私も羽織らせてもらう。
コートの値段は、心臓に悪いと思ったので、聞かなかった。
それにしても。
小学生のころは、冬でも半袖のスポーツシャツで、ドッジボールばかりやっていて、中学のころも陸上クラブのジャージで、高校の時は進学校で制服しか着ていないので、洋服に目覚めたのは、大学に入ってからだ。
夫も、おしゃれなので、素地はあるのだろう。
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食後のお茶を飲むとき、夫と私と娘はコーヒーだが、Tは紅茶がいいというので、
「アールグレイと、アッサムと、ダージリン、どれがいい? 紅茶のこと、わかる?」
と尋ねると、
「ちょっと凝ってたけど、もう忘れた」と笑いながら、「ダージリン」がいいと言う。
ちょっといい紅茶を淹れてやると、「おいしい」という。
いつのまに、紅茶のちがいがわかる子になったのか。
朝は6時30分に起きて、8時までに出社して、19時~20時まで残業らしいので、11時間勤務!
残業代は定額だから、ほとんどサービス残業。
お給料も、そんなによくない。ボーナスも、私の予想より低い。
それでいいの? と思うけど、会社の人に、海づりに連れていってもらって、大きなハマチを釣っていたし、ゴルフも始めていると聴いて、びっくり。
ゴルフセットも買ったそうだ。
(おおー―――っ)
1月には、ゴルフ場でコースデビューするとのこと。
広島には、たくさんゴルフ場があるらしい。
(よいねぇ~)
知らない間に、どんどん進化していく。
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娘のNは、年が明けたら成人式。
緑の着物に合うよう、カラーリングをしてもらい、まつ毛パーマをしてもらい、眉カットもしてもらっていた。
(まつ毛パーマ!)
Nの心は、9日の「成人式」ではなく、8日に京セラドームである、「Hey! Say! JUMPのコンサート」
一般のチケット販売で切符をゲットできたため、突然行けることになり、ときめきMAX大コーフンだ。
(何を着ていくか、どんな髪型でいくか)
Nの頭の中は、そのことでいっぱいで、ずっとスマホで検索中。
コンサートで使ううちわも手作りするらしい。
一般販売で、よくゲットできたものだと驚くと、「一般販売のチケットの取り方」というのを事前に調べて、準備したからと、鼻高々で教えてくれた。
(そんなことができる子だったとは!)
親が教えないことを、子どもたちは、自分でどんどんやっていく。
私より、よっぽどすごい。
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そういえば、
「お母さんが、かわいい服を着ている」
と、Tがほめてくれた。
最近買ったカーディガン。このあいだ、Nにも「かわいい」とほめてもらったものだ。
ハンガーにかけてあった、白いベスト付きコートも、目ざとく見つけて
「いいんちゃう? 似合うと思うよ」
とほめてくれたT。
(ええっ いつのまに、そのようなことが言える子に!?)
社会人になって、1人暮らしして、各段に成長しているのを感じる。
Tがほめてくれた白のベスト付きコートは、12月9日に、「わたしだけの時間 写真家 あいさん」の撮影会に着ていったもの。
思いがけずあたたかい日で、森の中では不要で、カバンに入れたままだったけど。
撮影の時は、アイボリーのざっくりしたセーターと、スカートみたいに見えるキュロット。
ムートンのブーツ。
スカートをはくのは、8年ぶりくらいだ。
ショップのお姉さんに薦められ、買うつもりはなかったけど、せっかくなのではいてみたら、試着室の鏡に映ったシルエットから、目が離せなくなり、お持ち帰り(笑)
そのことを、すっかり忘れていたので、納品された写真を観たとき、見慣れないシルエットに驚き、ときめいた。
(スカートっていいな)
スカートはくと、表情もしぐさも変わる。
写真をみて、そう思う。
TもNも、おしゃれが大好き。
私は、着る服なんて、どうでもいいという性格だけど、洋服によって、たしかに何かが変わる。
それは、見たことのない自分を引き出してくれる。
ちなみに、私があまりにダサイので、去年か、一昨年前の母の日に、TとNが、
「自分たちがお金を出して、お母さんをショップに連れていって、コーディネイトしたい」
と言ったことがあった。
そのときは、「NO THANK YOU」だったけど、今なら、やってほしいかも。
私よりは、ずっとセンスのよいTとNに。
年越しそばを、一緒に食べられなくて、残念。
2022年も、あと数時間。
2023年は、二人にコーディネイトしてもらおう。
浜田えみな
(撮影 わたしだけの時間 写真家 あいさん)
