発送作業にあたり、一緒にやるひめ神を引くと、このはなさくやひめだった。

ライフワークである「名前のことだま🄬」で使っている「五十音カード」を引いてみると、「さ」

 

「さ行」は「風のことだま」と言われている。

このはなさくやひめの「このはな」は「さくら」のこと。さくらの開花は、「さ」の神様が山から里へおりてきたことを知らせるしるしだ。

し。

 

『手のような雨』が、自分の部屋から、日本の各地へ、旅立っていく。

もう、ずっと部屋の中で在庫のままだと思っていたのに。

 

「過去の遺物にするな」と、顔も名前も知らない人から言われたのは、2016年の誕生日の朝7時30分にかかってきた電話だった。日曜日だったので、まだ布団の中だった。

 

「知人の家に泊まりに来ていて、『手のような雨』を見せたら、すごく気に入ってくれたので、あげてもいいか?」という内容だった。

 

「その人に代わるね」と言われて、顔も名前も知らない人から

 

「いい歌がいっぱい載っている」

 

とほめてもらった。

 

ちょうど前日の夜、部屋の隅に置いた箱を見て、

(『手のような雨』、こんなにいっぱいどうしよう)

 

と思ったことへの答だと感じた。

 

(こんなにいっぱい)

 

なぜ、いっぱいあるのかというと、文学フリマに出展するつもりだったからだ。

 

その前の年末、「エフーディ」という同人誌に出逢い、感化され、自分でも文学フリマに出展したくなり、さっそく年間計画を立てた。

 

2015年9月に開催される大阪での文学フリマに向けて、まずは視察が必要だと思い、4月に金沢で開催された文学フリマに出かけていった。

同人誌制作のワークショップを受け、文庫本のレイアウトを教えてもらった。


自作の小説を文庫本のように製本して、プロ並みに販売し、ファンも大勢いる人たちがいた。

黒瀬珂瀾さんの短歌のワークショップを受け、初めての歌会体験をした。

 

そのときにはもう、しらさわゆうこさんと、2015年12月に「物語の森」の展示をすることが決まっていたから、9月に大阪で開催される文学フリマで『きみのトモダチ企画』を売って、トモダチの絵を描いてもらおうと思った。

「物語の森」の宣伝もしたかった。

 

……実行できたらすごい。

しかし、部屋の片隅には発注した『手のような雨』が詰まった箱。

 

〈未開封〉

 

目にするたびに、うずくものの正体はなんだろうか。

 

創ったときは輝いていたものも、時がたてば色あせてみえる。

創ったときは最高に感じたものも、時がたてば、もっとすごいものに負けてしまう。

創ったときに大切にしていたものも、時がたてば……

 

そんな自虐と徒労と罪悪感を払拭してくれたのが、電話越しの見知らぬおじさんの声だった。

「過去の遺物にするな」と、諭してくれた。

 

あの電話が、夢だったと言われたら、そうかもしれないと思う。

会ったこともないおじさんの声。

 

天啓のようだと感じた。

 

「過去の遺物にするな」

 

5年近くの歳月を経て、ようやく開封できた。

 

お金を振り込みたいと申し出てくださるかたにも、お願いをして、交換という循環に協力していただいた。

 

出逢った「しるし」を書き留めたいと願ったから。

 

わがままに応えてくださって、出逢ってくださり、受け取ってくださって、ありがとうございます。


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内なる自分とつながって

〈じぶん温泉かけ流し〉

浜田えみな

スピプロ10期