オオゲツヒメは、12ひめ神の、5番目のひめ神だ。

 

1番~5番までのひめ神が表しているのは、一人の女性の中にある基本的な魅力のうち、自分の中から引き出していくもの。

 

オオゲツヒメのキーワードは、〈生活力〉だと、山下弘司先生は、教えてくださった。

 

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古事記では、高天原を追われて、出雲に行く途中、おなかをすかせたスサノオに、食事のもてなしをする。

 

あまりにおいしいので、スサノオはお代わりを頼むが、オオゲツヒメが準備をしている様子が気になって、のぞいてしまう。
 

すると、鼻や口や、お尻から食べ物を出して調理していたので、汚れたものを食べさせられたと誤解したスサノオは、オオゲツヒメを殺してしまう。

 

すると、死んでしまったオオゲツヒメの頭から蚕、目から稲、耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、お尻から大豆が、生まれる。

 

このことによって、オオゲツヒメは、養蚕と五穀を、後世に生きる人類に、もたらすのだ。

 

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勝手にのぞいて、勝手に衝撃を受け、取り返しのつかない展開を誘引するのは、日本神話の男神の〈お約束〉だ。

でも、この神話でのスサノオのふるまいは、あまりにも短絡的で、ひどい。

 

しかし、このスサノオが、この後、出逢ったクシナダヒメによって、その荒ぶる衝動を、〈ひめを守る〉ために使うことに目覚め、日本で最初の和歌、しかも、愛にあふれた心情を詠むほどの、雅な男性に成長する。

 

山下先生が、伝えているのは、

〈12柱のひめ神は、それぞれが、別の人格なのではなく、日本女性の中に、本来備わっている魅力〉

だということ。

 

そのことに気づいて、その種を育て、相手に応じて、場面に応じて、ふさわしいひめのふるまいを駆使しながら、男育て、人育てをし、相手の魅力を引き出す生き方を、日本神話の神様から学ぶ。

 

自分の身体から、成長に必要な食べ物を出し続けるオオゲツヒメは、

 

〈人が生きていくために必要な原動力は、女性が持っている〉

〈いのちを与えるのは、女性〉

 

ということを、伝えているのだと、山下先生は教えてくださった。

 

従来の挿絵では、亡骸のいたるところから、植物が出ているような、どちらかといえば、死生観が漂うものが多いのだが、大和田縁奈さんが描いたオオゲツヒメは、収穫の恵みをささげて、感謝と歓びに満ちた、はじける笑顔で輝いている。


おおげつひめ
 

女性には、〈受け入れたものを熟成して産みだす力〉が備わっている。

 

その最たるものが出産のメカニズムだと思う。


そして、出産した女性は、自分の身体の成長のために循環する血液を使って、赤ちゃんの身体の成長のために必要な乳をつくり、与えることができる。

 

相手の成長のために、そのときにいちばん必要なものを、さしだす力を、女性は備えているのだと思う。

 

おなかがすいたスサノオには、食べ物を(→オオゲツヒメ)。

人を思いやる心と愛が欠如しているスサノオには、それを引き出すふるまいを(→クシナダヒメ)。

 

次々に登場する神話のひめ神は、〈日本女性が持っている、相手磨きのあまたの極意〉を教えてくれる。

 

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〈胃袋をつかむ〉という言葉があると、山下先生がおっしゃっていた。

 

オオゲツヒメのカードを引いて、感じたメッセージは、

 

〈その人にとっての、胃袋をつかむ〉

 

相手が、〈日々の生活の中で、満たされ、至福を感じ、生きていく原動力〉となるものを、自分の中から、〈無理なく自然にさし出せるもの〉を使って、もてなす。

 

それは、自分にとっても、満たされ、至福を感じ、日々を生きていくための原動力となる、と感じる。

 

浜田えみな