コノハナサクヤヒメは、12ひめ神の、9番目のひめ神だ。

 

1番~5番までのひめ神が表しているのは、一人の女性の中にある基本的な魅力のうち、自分の中から引き出していくもの

 

6番目と7番目のひめ神は、相手の中から魅力を引き出していくために、どのように対処すればよいかを伝えてくれる。

 

8番目と9番目のひめ神は、未熟な男性を見抜くためにある、女性の魅力、目に見えて、華やかで一途な魅力と、目に見えない、地味で不変の魅力を教えてくれる。

 

〈未熟な男性の対処法が試される時〉

 

***

 

コノハナサクヤヒメと、姉のイワナガヒメに対する、天孫ニニギノミコトの言動は、いくら、後世に住む子孫に、大切なことを伝えるための神芝居とはいえ、あまりにも心ないと感じることばかり。

 

イワナガヒメに対しては、

 

〈因甚凶醜〉

(いとみにくきによりて)

 

という理由で、追い返してしまう(!)

 

コノハナサクヤヒメに対しては、

 

〈遇麗美人〉

(うるわしきおとめにあいたまいき)

 

と、その美しさに一目ぼれをして、妻としたにもかかわらず、たった一夜の契りで懐妊したことを知らされると、

 

〈一宿哉妊。是非我子〉
(ひとよにやはらめる。これわがこにはあらじ)

 

と、その不貞を疑う発言をする。

 

(信じられない!)

 

そんなアホな男とは、縁を切ってもいいのではないのか? と思う。

 

日本神話では、さまざまな未熟な男性に対する対処法を、ひめ神たちの行動によって、教えてくれているので、見てみよう。

 

(コノハナサクヤヒメは、どうしたのだろう?)

 

しくしく泣いて、弁明する → NG

烈火のごとく、怒り、愛想をつかす → NG

 

コノハナサクヤヒメは、顔が美しいだけの、ひめ神ではなかった。

 

〈方産時、以火著其殿而産也〉

(うむときにあたりて、ひをそのとのにつけてうみき)

 

「天孫の子であれば、火の中でも、無事に生まれるでしょう」と、産屋に火をつけて出産し、無事に三つ子を産む。

 

(なんて、激しい)

 

ニニギノミコトによって、父の寿ぎの想いをふみにじられ、姉のイワナガヒメを送り返されたとき、コノハナサクヤヒメの命もまた、永遠ではなくなった。


姉と一緒にいれば、花を散らすことなく、永遠の命を手にできたかもしれない。

 

だけど、ニニギノミコトの元に残ることを選んだコノハナサクヤヒメ。

そんなコノハナサクヤヒメに向けられた、愛する人からの耳を疑うような言葉。

 

(なぜ、実家に戻らなかったのだろう?)

 

コノハナサクヤヒメは、ニニギノミコトと共に、限られた短い命を燃やし、愛に生きることを決意したのだと思う。

 

コノハナサクヤヒメの真の美しさは、外面だけではなく、内面からにじみ出ているものだということが、わかる。

 

短いがゆえの。

散りゆく前の。

限りあればこそ。

 

***

 

コノハナサクヤヒメのカードを引いたら、

 

〈もうあとがない〉というくらいのエネルギーと覚悟で、ものごとに当たろう。

 

そんなことを思った。

此花昨夜姫

決意を胸に秘めた人の顔は、美しい。

 

浜田えみな