燃え尽きて灰になっても炭を抱きあたため続ける七輪の腕



浜田えみな


(画像は、的場ふくさんからお借りしています)


***


今回の和菓子


青洋さんの菓銘 「たどる」


想い
~バレンタインの根源をたどる。イタリアのローマと関係が深いキリスト教徒のバレンタイン。そのイメージをローマの遺跡と重ねてみました~


***


バレンタイン創作和菓子歌作の最後を飾るのは……。
和の饗宴から一転してローマの遺跡!
これはヤラれました(笑)


(〈なんとなく懐かしいこの形〉は何を模しているのだろう?)


と思っていたのですが(笑)


実は、わたし、この和菓子から連想したものがあります。
ローマの遺跡をかたちづくってくださった青洋さんにしてみれば、


(は?)


という感じだと思うのですが、それは「七輪」なんです。


なぜ?


実は「元ネタ(作品)」があります。
長いので、後述しますが、その作品を創っているときに、一生懸命描いた七輪に、この和菓子がそっくりなのです。


作品の名は「愛は遠赤外線」(ベタすぎ)


まるで炉端焼き屋のまわしもののようですが、そんなふうに愛してもらえる炭のことがうらやましくてうらやましくて、書きながらうるうるしたことを思いだします。


課題提出の前に下読みしてくれた友だちは、「七輪男」という造語を創るほど気にいってくれました。
彼女いわく、七輪男とは


「誠実で、無骨で、あんまり語らないけど深い愛を持ってる男性」


なのだそうです。


というわけで、ローマの遺跡とは似ても似つきませんが、バレンタインによせて、目には見えなくてもゆっくり深くずっと浸透する遠赤外線のような愛でつつまれる悦びを、この和菓子に感じてやみません。





燃え尽きて灰になっても炭を抱きあたため続ける七輪の腕



浜田えみな


ちなみに、私が創った作品のキャッチコピーは、


《てのひらストーリー 不安や迷いを、最強のお守りに変える小さな物語を贈ります》


イラスト付きの小さなお話です。
当時、参加していた「ゼロアーティスト養成講座」(吉井春樹氏主宰)の卒業制作として創った四作品のうちの一つです。






愛は遠赤外線  ~ゆっくりおいしく 深くおいしく ずっとおいしく~ 



「どうして、いつも冷たいの?」
炭は、大好きな七輪にたずねました。
ひんやりと、すべらかな七輪は、いつもポーカーフェイスです。


炭は、七輪のことが大好き。


「どうして、わたしのように、赤くならないの?
どうして、わたしのように、熱くならないの? 
どうして、わたしのように、燃えてくれないの?」


炭は、どんどん赤く、どんどん熱く、どんどん燃えているのに、
七輪は、赤くなることも、燃えることもありません。


炭は知らなかったのです。
炭の燃える思いが、七輪を、最上級に熱くしていたことを。
赤くなることも、燃えることもない七輪が、
どんなに熱く、どんなに深く、どんなに長く、愛を伝えていたのかを。


炭は、やがて、熱い灰になり、七輪が、そのすべてをつつみます。
熱く、深く、長く。


すすだらけの七輪は、しずかに炭を抱きしめます。
熱く、深く、長く。


あまりにうれしくて、灰は、ピンクになりました。
七輪に、あたたかく、つつまれています。

熱く、深く、長く。いつまでも。いつまでも。

愛は遠赤外線  目には見えなくても。
ゆっくりおいしく。 深くおいしく。 ずっとおいしく。




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