宇宙では またたき一つ なんもかんも。そうだよ やばい もう負ける気がしない



浜田えみな


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知っているつもりだったけどぜんぜん知らなかった明日香の文化財は〈目からウロコ〉なことだらけ。


「明日香法」なる法律のことも知らず、あんなに有名な観光地なのだから、地図など持たなくても案内表示がいたるところにあると思っていました。


(明日香路)
何もない 案内板などまったくない 田んぼと畑と古墳と空と
何もない 案内板などどこにもない 地図を片手に迷いに迷う
明日香路は目指す場所には着かねども 歩けば伝(でん)あるお寺か古墳


高松塚古墳の壁画は、教科書で知っているあれ一枚きりだと思っていました。


(高松塚古墳)
まだほかに画があったのか飛鳥美人 盗掘孔より舞い出る雅
遙か飛鳥 暴きし人と護りし人の 穿たれた孔の底無きリアル


石舞台は、地面の上に巨石が積み重なっているのだと思いこんでいました。


(石舞台古墳)
玄室の蓋だったとは石舞台 積まれし古代に差し込むひかり
玄室の蓋だったとは石舞台 現代(いま)に石積む知人を思ふ


行く予定ではなかったのに、迷って別の道に入り込み、突如、目の前に現われた寺。
聖徳太子生誕の寺だなんて、まったく知りませんでした。


瓦を埋めて固めた参道のような道の上に、敷かれた紅葉(もみじば)は、出さなかった手紙か、言えなかった言葉のように、はらはらと迫ってきます。


太陽の光をはずれ、ひっそりと大きな色づきはじめのイチョウは、きんいろの蝶の棲みかを見つけてしまったように、秘密めいています。


(橘寺)
出さざりし手紙のように燃ゆるいろ 留めて朽ちる紅葉の(もみじば)のあか
傾いた秋の陽射しの大イチョウ きんいろの蝶の棲みかなりけり


昼間訪れたときと、まったく違う顔を見せる日暮の橿原神宮では、翌日の新嘗祭で奏する久米舞の練習が行われていました。


(橿原神宮)
来こゆるは 新嘗祭の久米舞の 予行とおぼしき雅楽の調べ


明日香村を歩き、千数百年前から存在しているものに触れ、人間だけがその傍で小さな生と、善行や悪行や盛衰を繰り返し、季節がめまぐるしく変わり…… 


でも、そんなことは、宇宙にすれば、一瞬のまたたきの中に飲み込まれてしまうような、目をつぶる前と後で、なんの変化もない、とるにたりないことなのだなと思ったら、


〈またたき一つで何千年、何億年〉、なんだ、そんなもんなんだと気づいて、それでも、その中でちゃんと動いて考えて、泣いたり笑ったりしている私たちは、すごいと言えるし、すごくもないとも言えて(笑)

うまく言えないのですが、何をやったって、またたきの中。
そう思ったら、もう、なんでもできるというか、どんなことにも、負ける気がしないってムラムラ思えてきたのです。


このことが、飛鳥めぐりの収穫です。


(飛鳥)
宇宙では またたき一つ なんもかんも。そうだよ やばい もう負ける気がしない