まだほかに画があったのか飛鳥美人 盗掘孔より舞い出る雅


遙か飛鳥 暴きし人と護りし人の 穿たれた孔の底無きリアル



浜田えみな


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高松塚の壁画は、有名なあの絵一枚だけだと思っていました。


装飾古墳(壁画古墳)という言葉すら知らず、石室の壁すべて……天上にまで描かれているなんて思いもせず、調べることもなく、この年まで。
恥ずかしい限りです。


あらためて複製の前に立ち、その細密でなめらかな線の動きをなぞると、西洋画でありながら日本画の面相筆を使って〈西洋人には誰にも描けない〉と言われたという細くて均一な藤田嗣治画伯の輪郭線を思い出し、日本人に流れている雅のルーツを感じました。


そして、盗掘の際に穿たれた孔。


こんなに小さな穴から人間が出入りし、中の副葬品を持ちだせるものなのかと驚くとともに、盗掘されたと推定される鎌倉時代の人の身長が、おのずと浮かび上がります。


帰宅して調べていると、発見当時、現代の日本人もこの孔から内部に入って調査したという記事を目にして、高揚しました。
身長148センチの小柄な女子大生だったそうです。


封印されたものを暴き奪い去る人がいて、失われたものがあり、数百年を経て、その孔のおかげであきらかになって、よみがえるものがあります。


古代と現代を結ぶ風孔。
人が入るギリギリの大きさに穿たれた孔が記憶してきたもの。


いびつなかたちすべてが語りかけてくるリアリティに、胸を打たれて、動けずにいた高松塚でした。


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壁画発見の瞬間を振り返る朝日新聞の記事 → ★★★
高松塚古墳のことがとってもよくわかるドキドキわくわくのドキュメンタリー → ★★★