咲いたら、わかりますね
* * *
言葉を書いた紙にくるんだ種を、ソーイングギャラリーの庭に埋めたワーク。
「なんの種ですか?」
とAKOさんに尋ねたら
「参加者の方には、何の花か教えてないのですが」
と前置きした上で、こっそり教えてくれた。
「どのあたりに埋めたのですか?」
という質問については、
「私も、ちゃんとした場所を言えないのですが」
と前置きしながら、
「きっと、花が咲いたらわかりますね」
と、書いてあった。
メールの文面から、AKOさんの笑顔が運ばれてきた。
教えていただいた花が咲き、ソーイングギャラリーの草原に、すっくり顔をあげ、風の中、太陽に向かって満面の笑顔で輝いている様子が鮮やかに浮かんだ。
「咲けばわかる」
と、思わずつぶやいた。
自分がどんな花なのか、いつ咲くのか、どこで咲くのか、そんなことわからなくたって、心配しなくたって、
(咲けばわかる)
咲けばわかるんだ。
ワークショップでは、「種明かし(まさに!)」をしていないそうなので、公開できないけれど、咲いていれば、
(ぜったいわかる)
開花は二か月後くらいとのこと。
見知らぬ誰かの言葉の種から生まれた花。
いくつ咲いているのか、数えに行こう。会いに行こう。
地元っていい。
特別な何かがなくても、いつでも行ける。
目をこらせば、毎日の通勤電車の窓からも見えるのだろうか。
大阪市内まで通勤していた頃は、地元でのイベントなんて意識しなかった。
今、生まれ育った場所を、再び見直してみたいと思っている。
中学2年生まで住んでいた町を記憶をたどって歩いてみるとか。
昔の家がまだあるか見に行くとか。
よく遊んだ公園とか神社とか。小学校とか中学校とか。
今の職場から三十分ほど歩けば、なつかしい町角が現れる。
それは采配だ。
* * *
5月も終わろうとしている。
人事異動や転勤などで、4月から環境が変わった人は、もう既に新しい生活に慣れただろうか?
わたしは、再び、ギックリ腰の危機!!!
たいしたことはしていないのに、全身、力が入りまくりだ。
早く、人に訊かずに自分のペースで仕事ができるようになりたい。トホホでござる。
先日、十年ぶりくらいに短大の頃の友だちに会った。
ソーイングギャラリーで咲いていたカモミールが印象的だったので、その話をすると、自宅の庭にカモミールを育てているという。家庭菜園もあるのだそうだ。
ドライハーブでも、ポットの中で金色に輝くカモミールの丸い黄色はとても元気が出る。
こんなにかわいらしい花が自宅の庭に咲いているなんて!
「ハーブティーにしたりする? カップにお花を浮かべてたのが、めっちゃかわいかった!」
身を乗り出して熱く語ると、気のいい友だちは言いにくそうに口ごもって
「……うちのは、芝にしてるから……」
(芝?)
「あ! 何かで読んだ! 踏むと青リンゴの香りがするって書いてあった。踏まれて香るから、花言葉も、“逆境に耐える!”とか言うねん。咲いてへんとこを踏むの?」
「ううん。花が咲いたら上に伸びて横に這わないから芝にならへんねん。だから、蕾がついたら、全部刈ってまうねん……」
と、すまなそうに眉をハの字にして笑う。
「えーーーーーーーっ 花、咲かす前に?」
「うん……。ぜんぶ、刈ってまうねん。でも、花がなくても、ほんまに、いい匂いやで」
そうかぁぁぁぁぁ。
(咲かない花もある)
咲かずに香る。踏まれて香る。
カモミール芝。
踏まれてもちぎれない。踏まれても破れない。緑のじゅうたん。
花を摘み取られ、踏みしだかれて、大地から優しく匂い立つ。
そんな生き方もあるのだ。
だけど、咲けばわかる。
香ればわかる。
今は何の花かわからない芽でも。
今は踏まれて香る時期でも。
あなたがあなたであることに。
わたしがわたしであることに。
浜田えみな
ソーイングギャラリーでのワークショップ


