生きていること。
呼吸していること。
つながりつづけるために発信すること。
還ること。
ものかきたちは、
言葉の受精に立ちあい、
産みだすまで育む妊婦となり、
介添えをする産婆となり、
最終的におくりびとであると思う。
* * *
(文章しか伝えられない)
そんな言葉が呪いのように浮かんできて、心底、悲壮な気持ちになる。
* * *
星ヶ丘洋裁学校を検索したのは、自分が何かをやりたかったからだ。
ワークショップをする場所を探していて、数年前に一度いったきりの、宇宙からの落し物のようなスポットの記憶を、確かめに行きたいと思った。
何か展示をしていたら、とりあえず観に行こうと思い、ちょうど開催中だったのが、AKOさんの展示だった。
「こと葉をかえす」というワークショップに魅かれ、どういうアーティストさんなのだろう? と関心をもった。
SEWING GALLERY で過ごした時間は、たくさんの気づき をくれた。
用意されているものを受け取ることに馴らされ、その概念にとらわれていたこと。
自分が持っているたくさんのゲートのこと。
そのゲートの鎖された蝶番のほこりをはらって、錆びを落とし、少しずつ開け放していくこと。
今、目の前にあるものだけが全てではなく、何の関わりもないような隣のスペースにも、肩越しに見える右向こうにも、反対の左向こうにも、振りかえった後ろにも、仰ぎみれば上方にも、うつむけば下方にも、つながる世界があるということ。
囲まれた部屋の中だけでなく、ドアや窓の外の世界にも、つながりの連鎖が続き、入ってくるものと出ていくものの流れが次々に頬をかすめ、自分の中からも湧き出ていく泉を感じること。
自分の中から繋がり続けていく先端に、光や、緑や、空や、雲や、花や、風や、土のエネルギーを感じて、受け取っていけること。
立地そのものを味方にして、そこでしか体感できない鼓動を聴くこと。
そういうワークをしたかったのだと、わかった。
たとえば、民家集落博物館でやりたかったのは、こういうことなんだと。
イメージだけが自分の中にあって、それをどうやって現実のものにするのかがわからなくて、何もできなかった。
でも、結果は上々だった。何をしたわけでもなかったのに。
風が吹いていたから。
そうだ、あの日 も、ずっと風が吹いていた。
もうわかった。なぜ、風が吹くのか。
だから、吹いてくる風に胸を張るだけでなく、風を起こす。
自分を中心に、世界とつながり続けていく感覚を、必要な時にいつでも思いだせ、それぞれの人が使っていけるような、そんなワークがしたいし、文章で風を起こしたい。
* * *
参加できなかった「こと葉のワーク」のことを、AKOさんが報告してくださった。
一週間前に展示されていたガラスの器の土から、芽が出たそうだ。
枯葉は、土の上に舞い降りる。
土に還り、その土にもぐりこんだ種から、新しい命が芽吹く。
生きていること。呼吸していること。つながりつづけるために発信すること。
それが、還るということだ。
* * *
先日の、お話会で心に残ったのは、
〈戻れないもので作品を創っているのが嫌になって、今回は全て自然素材を使って創った〉
というAKOさんの言葉と、
同じくAKOさんが、お友だちらしいアーティストさんと交わしていた会話だった。
「作品、たまるでしょ?」
「たまるたまる。もう、どうしようって思う」
「音楽はいいよねぇ~」
「たまらないから、いいよねぇ」
(本当だなあ~)
(文章も、たまらないという点では、よかったなあ~)
と、ほっと胸をなでおろした。
生きていること。
呼吸していること。
つながりつづけるために発信すること。
還ること。
まさに言葉は、そういうものだ。
ものかきたちは、言葉の受精に立ちあい、産みだすまで育む妊婦となり、介添えをする産婆となり、最終的におくりびとであると思う。
枝から離れて落ちた実は、生から切り離されたのではなく、次の世代の芽であるように。
空と大地を結ぶように天に向かって伸びていく。
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AKOさんからの報告
今日のワークショップは、
こと葉を土にかえす、こと葉を空にかえす
でした。
土のワークショップは葉の形に紙をちぎり、それに種を挟んで、好きなことばを書いて、ソーイングギャラリーの庭に埋めました。
今は、目に見えないけれど、どこかで、また、生まれるのを想像しながら。
空のワークショップは、それぞれのみなさんが考えてくれた言葉を、私と、友達が考えた、歌詞と、メロディーにの中にいれて、ひとつの歌にして、空に向かって、歌いました。
言葉たちは、ふわり、ふわり、雨の中を飛んでいったと思います。
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今日も、風に吹かれて。
星ヶ丘の地は、自分の風に出会える場所。手を振る場所。
おかえり。
いってらっしゃい。
元気で。
浜田えみな


