言葉は何も浮かばなかった。
言葉がとても不自由だということや、
言葉にできないたくさんのものを、
わたしたちは感じ分けていることを、
知らされるように。
神様からの手紙は文字のない手紙
守られ続けている
いつも佳き日
* * *
2月10日は旧暦の正月だ。
「名前のことだま」では、この日から新しい年が始まる。
「名前のことだま」の創始者、山下弘司先生が、2003年から実施されている大阪一宮・四社めぐりに、今年初めて参加した。
現在の大阪府は、旧国名でいうと、摂津・河内・和泉の三つの国でできていて、それぞれに一宮がある。
摂津は、大阪市中央区本町にある坐摩(いかすり)神社と住吉大社。
和泉は、堺市にある大鳥大社。
河内は、東大阪市にある枚岡神社。
その四社をレンタカーでまわるというので、参加者の中にドライバーがいるのだろうか?と思っていたら、運転席に座っているのは、
(えええーーーーーーっ!!)
(山下先生!!!)
* * *
「先生、今日、どこからいらしたんですか?」
「家から」
「まさか、車で!?」
「いや、レンタカーですよ」
「どこで借りたんですか?」
「新大阪」
(えーーーーっ 先生、新大阪からここまで運転してこられたんですかーーーっっっ)
名古屋在住の先生に大阪府内を、大阪市~堺市~東大阪市~大阪市と巡っていただき、生徒のわたしたちが、うしろに座って、ゆったりのんびり、ぺちゃくちゃおしゃべりして、連れてまわってもらえるなんて!
しかもレクチャー付き!
こんな、ありがたくもったいない企画に今まで参加しなかったなんて(泣)
ふと気づけば、もう到着していて、神社の大きな看板が見える。
(きゃー 先生、すみませーんっっっ!!)
と、誠に恐縮した気持ち……
になるのは一瞬で、車を降りたら、そんなことはすぐに忘れさり(笑)、気持ちいい空気にひたされて、深く内観する……。
深呼吸。
どの神社でも不思議と、言葉は何も浮かばなかった。
言葉がとても不自由だということや、言葉にできないたくさんのものを、わたしたちは感じ分けていることを、知らされるように。
移ろいのなかで語りかけてくるたくさんの声を、人の言葉で変換することは、とても追いつかない。
鳥居をくぐると、そこはもう神様のいらっしゃる場所だ。
一日に四社をお詣りしたことで、気づいたことがあった。
(神様からの手紙は、文字のない手紙)
* * *
◆一社目 摂津国一宮 坐摩(いかすり)神社
寒い日もあったのに、朝から快晴。とても気持ちのよい光があふれている。
珍しい三ツ鳥居をくぐれば、ビジネス街の中にあり、四方をビルに囲まれながら、静謐さをたたえている。
境内に置かれたチラシは、神社の延喜ではなく、開催されるさまざまなイベントを知らせるもので、この場所が地域に住まう人々に大切にされていることが、確かな鼓動となって朝の空気の中に伝わってくる。
ふと見ると、大きな看板には、厄年の人の生まれ年が書かれている。
神社の境内では、よく見かけるものだ。
当分巡ってこない(笑)
「“厄年”というのは、“役”をもらう年なんです。だけど、大役をもらうと、“そんなことできないー”というストレスで苦しくなる人もいます。だから、厄祓いというのは、“思い”を祓うんです」
(“役”をもらう!)
(厄祓いは“思い”を払う!)
思わずメモをした。
厄年の人に会ったら、言おう。
* * *
「先生、四人で四社巡りだなんて、今日は何か守られてますよね!」
ことだま師仲間のよしこさんが、きらきらの大きな目を、ぐりぐりまわして、本当に嬉しそうに山下先生に話しかけていらっしゃる。
(「四」が何か特別なのだろうか?)
(よしこさんの名前が、よ(四)し(四)だからだろうか???)
……などと思っていたら、この日は、最後まで、「四」にご縁をいただいたのだった。
私にも、山下先生にも、もう一人の参加者Tさんにもある「四」の不思議。
このときは、まだ何もわからなかったけれど。
(なぜ、この四人?)
* * *
◆二社目 摂津国一宮 住吉大社
鳥居のあたりには松がたくさんある。
このあたりが浜辺であったころの波の音さえ聞こえてきそうだ。
今は、打ちよせる波ではなく、路面電車の響きが行き過ぎていく。
太鼓橋。
この橋の向こうは、天界だと、山下先生が教えてくださる。
橋は、下界と天界を渡すもの。
橋が渡りにくいのは、天界へ簡単に行けないという教えもあるとのこと。
賑やかな声がして、観光のグループが橋の上で記念写真を撮っている。
カメラに入りきらない人もいて、いったい何の団体なのかわからないけれど、とてもいい笑顔で記念撮影をしているのを、
(楽しそうだな~)
と、下から眺めていた。
若い人たちでも、足元がおぼつかない。つまづいてバランスをくずし、笑顔になる男性を、かわいいコートを着た女性が、隣でしっかりと支えていたり。
小さな子どもが、両手両足でとりつくようにして登っていたり。
老若男女。
たくさんの人が登り、降りてくる。
(下界から、天界へ)
(天界から、下界へ)
* * *
住吉大社は四人の神様が御祭神だ。
第一本宮~第三本宮は総称して住吉大神といい、海の中より生まれた神様 だそうだ。
神域の中で縦一列に並んでいる。
第四本宮は、後に神宮皇后も併せて、お祀りされたもので、第三本宮の横に並んでいる。
上から見ると、ローマ字のL字型に見える配置は、全国的にも珍しい建築様式とのこと。
すべて大阪湾を向いて建立されている。
「あたかも大海原をゆく船団のように」
という説明文を読んでから、この言葉が離れない。
住吉大社に行くたびに、海の上を白波を立てて往くような壮大さを感じる。
また、
「三社の縦に進むは魚鱗の備え 一社のひらくは鶴翼の構えあり よって八陣の法をあらわす」
という言い伝えを住吉大社の公式ウェブサイトで読んでからは、第三本宮と第四本宮が並んでいる姿を見るたびに、すっと首を伸ばし、大きく胸を開いて羽を広げた鶴の姿を想う。
飛翔のエネルギーを抱く勇壮な気持ちになるのだ。
言葉は力を与える。
* * *
屋根で交差している部材を千木という。
よく見ると、その先端を地面に対して垂直に削ったもの(外削ぎ)と、水平に削ったもの(内削ぎ)がある。
「祭神が男の神様の社は千木を外削ぎに、女の神様の社は内削ぎにしているところが多いのです」
と、ことだま研究科で山下先生から聞いていた。
実際に、晴れ渡る空の中にその姿を見ると、まるでつがいの鶴がよりそっているかのように心が穏やかに鎮まっていく。
広い境内をみてまわって戻ると、第一本宮では、まさに御結婚の儀が執り行われていた。
なんというオープンスペースだろう。
誓詞を読み上げる新郎の声に耳を傾け、白無垢に綿帽子の新婦のうしろ姿に心を寄せる。
思わず、力いっぱいの拍手を贈りたくなる。
お宮参りのご家族の姿もたくさん、お見かけした。
三世代が連れだって、幸せそうに境内を歩いている。
おばあさまたちは誇らしげに。およめさんはかわいらしく。
息子さんは、たいてい荷物持ちかカメラマンだ(笑)。
スーツには不似合の、カラフルでかわいい柄の大きなマザーバッグを両手に、くるくると動きながら、ついていく。
おじいさまたちは、やや遠巻きに、つかず離れず。
御夫婦だけのお宮参りもあったし、赤ちゃんを抱いているのが、おばあさまではなく、おかあさまのところもあった。
よしこさんは、必ず、
「おめでとうございますー」
と、にこやかにお声かけされる。
つられて、わたしも、
「おめでとうございますー」
と、赤ちゃんの顔をのぞきこむ。
「京都では、額に“大”の字を書く風習があるんですね」
と、山下先生がおっしゃるので、よしこさんとわたしは、声をそろえて
「大阪でも書きます!」
山下先生のお住まいの名古屋も、Tさんのお住まいの神戸でも、そういうことはやらないそうだ。
「男の子は“大”で、女の子は“小”と書くんですよね」
大きく健康に育ってほしい。優しい子になってほしい。そんな願い。
(守られ続けている)
(いつも佳き日)
* * *
「おみくじ引きますーっ」
と、よしこさんが駆けだしていくので、つられて引いてしまった(笑)
「八番! 大吉!! 八番で大吉!!」
よしこさん、大興奮。狂喜乱舞(笑) 大吉なんて、すごい!
Tさんも、おみくじを引いた。
「四番 凶……」
凶と聞いて、一瞬、くもった顔をしたよしこさんは、「四」という数字を見るやいなや、目をキラキラと輝かせ、
「四と八はつながってます! 八が大吉なんやから、四も同じですよ!!」
(そうかもしれない)
と、うっかり思ってしまいそうになる、魅惑の笑顔(笑)
それを横目で見つつ、引いた浜田のおみくじは……
「四番 凶……」
(おんなじーーーーー???)
「えーーーっ 四番!? Tさーん、えみなさんも四番ですって! やっぱり、わたしたち、四にご縁があるんですよー。四と四で八ですもん!」
(……)
さて。
Tさんと浜田の凶は、二人あわせることで「大吉」に転じるのだろうか???
* * *
おみくじに、吉凶はさほど意味がないという。
それよりも、書かれてある言葉が大切なメッセージだそうだ。
……とわかってはいても、「凶」が出ると、動揺する(笑)。
さっさと結びに行く。
次は大鳥大社だ。
ドアを開けて車に乗りこむ。
参加者は4人なので、5人乗りのセダン。
当初、いただいていた四社巡りツアーの案内で、募集定員は7名になっていた。
「山下先生、参加者が7名だったら、ワゴン車で行くはずだったんですか? 先生、ワゴン車の運転、できるんですかー??? すごーい!!!」
「すごくないですよ。ちょっと大きいだけじゃないですか」
「えええっ わたし、運転できないから、運転できる人尊敬します!!! 初めての車なのに運転できるというだけで、尊敬します!」
「……」
先生は、ナビを操作して、行く先を大鳥大社にセットしている。
「名古屋の先生が、大阪を案内してくださるなんて!」(感涙)
「今は、ナビがあるからね」
ナビがあっても、わたしには無理(汗)
四社参りツアー、つづきます。
ナビが指し示すのは、堺市 大鳥大社。
浜田えみな
山下弘司先生の大阪四社参り
(格調高いです!)
よしこさんの大阪四社参り (光にあふれています!)







