青空のゆくえ


子どもたちの気持ちや、可能性は、
いっぱいに開いている。
だけど、おじぎそうみたいにデリケート。


ほんのかすかに、何かがふれただけで、
あっというまに閉じてしまう。


しばらくすれば、また、元にもどるけれど、
ずっと、否定の刺激を与え続けていたら、
もう開かなくなってしまうかもしれない。


うつむいたままで
上を向けなくなってしまうかもしれない。


先生は光となって、
あらゆる角度から子どもたちを照らしてほしい。
自分の光を出せる子に、導き育ててほしい。


光となった子は、
その光で、友だちを照らしてほしい。


*    *    *


「特別支援の子への対応 -AさせたいならBと言え 下学年」
「特別支援の子への対応 -AさせたいならBと言え 上学年」


この二冊の本の中には、兵庫県・大阪府内の小学校で、実際に教鞭をとっている二十五人の先生たちが、学校生活のさまざまな場面における問題にどう対応し、子どもたちの行動の理由に深くアプローチし、解決の糸口をどんなふうに見つけていったかが、わかりやすく書かれている。


サブタイトルの「AさせたいならBと言えlの「B」は、一つではない。
子ども一人一人の特性により、その時の状況により、多種多様に存在する。その実例集だ。


TOSS大阪なみはや代表の奥 清二郎先生は、そのまえがきの中で、


この本に書かれていることがベストではない。その子に合った方策が見つかるまで、探し続けていく気概をもたねばならない。
できなかったことができるようになる。どんな小さな一歩でも、そんな一ミリほどの全身でも見逃さずに見つけ、認め、励まし、そしてほめ続けることが私たちの仕事だ。


と述べている。


この書籍は教師向けに書かれたものだが、保護者の目で読んでも得るところが多い。以下、抜粋する。


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発達障害のある子供たちの行動は、脳がそれを必要としているということを理解しておくことが大切。


勝ち負けを受け入れられないことは、それだけ勝負に真剣だということ。


行動には必ず理由がある。その理由を見つけ、ひとつひとつ解決する方法で対処する。


発達障害はできないのではなく、発達がゆっくりなのである。運動能力に問題がなければ、教師の根気、「絶対にできるようにするんだ」という執念と、優れた方法で必ずできるようになる。


教室でのビデオを見てもらったら、「ほめ言葉が全然ないですね。子どもたちはやらされている感じです」というように言われた。


ほんの少しの変化をほめ続ける。


普通に対応すれば叱られてばかりの子ども。叱られたところでできるようになるわけではない。自尊感情が低くなるだけ。


保護者に共感する。子どもが大事にされ伸びているという事実があるかどうか。保護者を動かすのは子どもの事実。


注意や説教は嫌というほど受けてきている。それでも変わらなかったのだ。教師が別の方法を工夫して、指導していく道を探さねばならないのだ。


当てられなくてすねるということは、それだけ意欲があるということだ。やる気に満ち溢れているということだ。その子のすねる原因を探し出して、満足感を与える対応を見つけよう。


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などなど、「特別支援を要する子」だけではなく、どの子どもにもあてはまると思うことや、思わず家庭における自分の態度を振り返る言葉が満載だった。

なにより、多角的なまなざしと熱意で子どもたちと関わる、先生方の真摯な取り組みが、最初から最後まで尽きない。


(先生は、こんなふうに子どもたち一人一人のことを見てくれているのだ)


と感謝の気持ちでいっぱいになる。


通常のやりかたでは、たちゆかなくなってしまう子どもたちが、別の角度からの光によって、ぐんぐん輝き、能力の芽がムクムクと頭をもたげていく様子に、胸が熱くなる。


トピックスのどれもが、学校生活の一シーンだ。

クラスの子どもたちと先生の声が聴こえてくる。

顔も名前も知らない子どもたちの笑顔が、行間に浮かびあがってくる。

知らず知らず笑顔になったり、ジンときたりする。


子どもの自尊感情は、決して、親や教師だけがほめれば育っていくものではなく、クラスの仲間から認められ、頼られ、賞賛を受けることで、より確かなものとして、その子に根付いてゆくことがわかる。


成長は、その子一人で成り立つものではなく、教師やクラスの仲間や家族や地域の人たちの中で、存在を認められ、「がんばって努力したことが実を結ぶ」という体験と行程と達成の喜びを、誰でもない本人が実感し、言葉かけと仲間からの励ましの中で到達するものなのだ。


自分をわかってもらえているという実感。

認めてもらうこと。必要とされること。愛されていること。先生から、仲間から。そして家族から。
何度も何度も何度でも。


本書は特別支援を要する子どもへの働きかけが特集されたものだが、先生の目は、ほかの子どもたちへの言葉かけや配慮も忘れない。


学級の中で、サポートの必要な子どもを伸ばすシステムを創ることは、ほかの子どもたちが、さらに伸びていくシステムを創るということだ。


少し先を行く子は、あとからくる子に思いやりの心を持ち、手をさしのべることを覚える。どの子の中にも輝きがあることに気づき、惜しみなく拍手を贈ることができる。自分だけでなく、仲間の心も慮れるようになっていく。


また、対象となる子どもへの特別な配慮を、本人及びクラスのみんなが知ることがプラスに作用する場合と、マイナスに作用する場合がある。
そのあたりのさじ加減なども、実例を通して、わかりやすく書かれている。


それは、先生方がこれまでの学級づくりの中で実践し、失敗し、会得したものだからだ。
失敗体験も正直に書かれている。失敗の中から生まれた成功は、ゆるぎない。


(こんな先生に子どもの担任になってほしい!)


と、どの保護者も思うことだろう。


*    *    *


本の中で、いろいろな子どもに出会った。自分の子どもと似ている子もいるし、ホントにこんな子がいるのだろうか? とびっくりするような子どももいる。


(おじぎそうみたいだな)

と思った。

小学生の子どもたちの気持ちや、可能性は、いっぱいに開いている。
だけど、おじぎそうみたいにデリケートなのだ。


ほんのかすかに、何かがふれただけで、あっというまに閉じてしまう。


しばらくすれば、また、元にもどるけれど、ずっと、否定の刺激を与え続けていたら、その子の葉は、もう開かなくなってしまうかもしれない。うつむいたままで上を向けなくなってしまうかもしれない。


先生は光となって、あらゆる角度から子どもたちを照らしてほしい。
自分の光を出せる子に導き育ててほしい。

光となった子は、その光で、友だちを照らしてほしい。


先生が子どもと関わるのは、短くて一年。長くても数年。だけど、子どもたちと保護者は、今後、何十年ものあいだ、いろんな局面で、嵐が吹き荒れるだろう大海に出ていく。


何か一つでも、どんなことでも、この先の人生に持っていける最強のアイテムを、学校生活の中で、すべての子どもたちに持たせてやってほしいと願う。


どんなに小さなことでも、たった一つでも、それがあるだけで、何十年も、あるいは一生、がんばることができるような、決して消えないその子だけの灯。


一生大事にもっていられるようなリアルな言葉を、子どもたちの心に投げかけてほしい。
その波紋が途切れることないエールとなって、生涯、その子を勇気づけてくれるように。


そして、わたしたち保護者も、教師に丸投げしたり、あるいは厳しくジャッジするだけではなく、



青空のゆくえ


「やっていないことは、信じて、手放し、見守ることだけだ」


と、言い切ることができる信念と愛情で、かけがえのない自分の子どもを照らす光になりたい。

ないものばかりを探して悲観するのではなく、あるものに尽きることない光をそそいで。


そのためには、まず、保護者自身が自分の光を知ること。


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二冊の本について。

編集を担当された先生のあとがきが、この本にどのようなことが書かれているかを詳しく物語っているので、その後半部分を転載する。


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「特別支援の子への対応 ―AさせたいならBと言え 下学年」  あとがき


~前略~


発達障害をもつ子どもたちの行動は、一見すると、わざとのようにも思え、教師を困らせてやろうとしているようにも見える。しかし、実は、本人たちも苦しいことが多いのだ。


整理整頓ができない子には、できない理由がある。授業中、ぼ~っとしている子どもには、ぼ~っとする理由があり、ノートを乱雑に写している子には、その理由が、それぞれに存在するのである。


その一面だけを見て、叱るのではなく、背景にある子どもの症状を理解し、どうすれば、現状を打開することができるのかを考えるのが教師としての使命のはずである。


本書を執筆するにあたり、サークル員には、エピソードの描写があることを最低条件としてお願いした。


発達障害に関連する書籍は、たくさん出版されている。しかし、学校生活の様々な場面で、どのように対応していけばいいのかということを具体的に記している本は少ない。


本書は、授業中の様々な場面はもちろん、運動会などの行事全般でのエピソードと対応方法もわかりやすく記載した。さらに、学校として発達障害のある子どもたちとどのように向き合っていくのかというシステムについても、掲載している。


この本が多くの先生の授業、学級経営に、そして、発達障害のある子どもたちの成長に、少しでも寄与できれば幸いである。


(本吉 伸行)


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「特別支援の子への対応 ―AさせたいならBと言え 上学年」  あとがき


~前略~


発達障害のある子は、全体の一割いると言われている。また、境界知能の子が十四パーセント、クラスのおよそ四分の一は「特別支援を要する子」なのだ。その子たちへの対応をどれだけ知っていて、実際にできるかということが重要である。


しかし、「原則を知っている」ということと、「実際に対応できる」ということとは大きな隔たりがある。特別支援を要する子は、当然一人一人違う子だ。原則だけでは対応できない。全て「応用問題」なのである。


では、どうすればよいのか。それは「できる限り多くの具体的な対応例」を学ぶことだ。一つ二つの例ではダメだ。


そして、その子にあった対応を見つけ出していかなければならない。


本書ではそんな特別支援を要する子に対する具体例をできるだけ多く載せた。また、実際に使いやすいように授業編(教科別)、学校生活編など、場面ごとに分けた。


編集しながら、「当時の自分にこの本を読ませてやりたい」と何度も思った。過去の私のように、特別支援を要する子への対応に悩む先生の参考になれば幸いである。


(岡倉光悦)


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「特別支援の子への対応 -AさせたいならBと言え 下学年」
「特別支援の子への対応 -AさせたいならBと言え 上学年」


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浜田えみな