ひどいよって言ってみたいような、
置き去りにされたような、
さよならの挨拶もしていないのに。


*    *    *


仕事帰り、いつもと同じ時間に駅に降りたら、


真っ暗だった。
月が出ていた。
真っ暗だった。
寒々しかった。


(うそーーーーっ)


このあいだまで、まだ明るかったのに!
いったい、いつのまに???


たぶん、昨日も同じくらい暗かったのだと思うけど、帰りを急いでいたのか、ぜんぜん意識しなかった。今日、初めて、感じた。


もう、夏じゃない。


うぇぇぇぇぇーーーーーーーん 
うぇーーーーーーーーーーん


って、泣きたくなった。
まわりに人がいないのをいいことに、実際に声を出して、


うぇぇぇぇぇーーーーーーーん 
うぇーーーーーーーーーーん 


と、言ってみた。べそかきの顔をしてみた。


大人になると、こんな、簡単にひらがなで書き表せるような泣き方はしない。


でも、小さな子どもみたいに、


うぇぇぇぇぇーーーーーーーん 
うぇーーーーーーーーーーん


ひどいよって言ってみたいような、
置き去りにされたような、さみしさだった。


さよならの挨拶もしていないのに。来年まで会えない。
夏の終わりは、いつも、こんな気持ちになる。
ああ、今年も。


そうして、次に気づくのは、キンモクセイの香り。


浜田えみな