青空のゆくえ

作品が認められる力。
目標に向かって、まっすぐ進む力。
自分にとっての、ほんとうのものがわかる力。
原石を磨いて、宝石にする力。


*    *    *


今年は直感を信じる。と決めた。
決めると動いていく。
決めるだけだ。
そして信じる。

これは自分の軌道だと。


*    *    *


信号が青だったら、そのまま通り過ぎてしまって、耳に残ることはなかった。
赤だったから、止まった。
すぐそばで、キーボード演奏をしながら、若い男の人が歌っていた。


(こんなところで、ストリートミュージシャン……)


立ち去り難さを感じて、どうせ信号を待つならと、傍まで行った。

惹かれるのは、声? メロディ? キーボード演奏?

歌詞も聞き取れなかったし、信号が変わる前に、ステージそのものが終わってしまったのだ(笑)

信号待ちの列から抜けて近づいていったのに、終わってしまったので

「終わっちゃって、少しだけでごめんなさい。また、ライブやるのでよかったら」

と言って、チラシをくれた。


(めっちゃ顔のちっちゃい人――――!!!)


最近の若い人は、とってもちっちゃい顔なので、びっくりする。
演奏が続いていたとしても、信号が変わったら、渡らなければならなかったのに申し訳ない。
とても礼儀正しい人だと思った。
チラシは、カバンにつっこんだ。


そして、忘れていた。


しばらくたって、カバンの整理をしていると、折れ曲がったチラシが出てきた。


(なにこれ? 美容室のクーポン?)


よく見たら、ワンマンライブの案内だった。


touma 


声も曲も忘れてしまったけど、立ち去り難かったことは覚えていた。
こんなふうにチラシが出てきたのだから、きっと、縁があるのだと思って、名前を検索して、ホームページやブログを見つけた。

「とうま」は下の名前だと思っていたら、それは名字で、當眞健司さんというのだった。
ブログには、各地で開催されているフリーのライブ情報などが書かれていた。


(まずは、もう一度、ちゃんと声を聴いてみよう)


ホームページには数枚のアルバムが載せられていたけれど、申込みフォームがない。


(どうやって買えばええの?)


ブログのメッセージ欄から問い合わせると、


「アマゾンで「祈り」というアルバムは販売されているけれど、聴いていただいたのは「奇跡」という歌で、流通していないので、フリーライブやコンサート会場で販売していることと、ぜひ生の歌を聴いてほしい」


という趣旨の丁寧な返事をいただいた。

直感だけで有料ライブに足を運ぶチャレンジはできなかったので、機会あればフリーライブで確認しようをと思っているうちに、やっぱり、そういうことは忘れてしまい、月日が流れた(汗)


ゼロアーティスト仲間の きゃらめるさんとmakiさんの写真展に行くために、交通機関の乗り継ぎなどをネットで確認しているとき、ふと思いついて、toumaさんのブログを見ると、その日の二時から新梅田シティでフリーライブがあることがわかった。
既に十二時をまわっていたので、時間的には余裕がないのだけど、


(これは行くべき)


と思い、出かけることにした。

新梅田シティは、つい先日、義妹の結婚式で行ったばかりだから、道順もちゃんとわかっている。


*    *    *


どこでやっているのかはすぐわかった。歌声が聴こえてきたからだ。

ところが、マイクを持って歌うtoumaさんの正面には誰もいない。いったいどこで聴くのだろう? と見回していると、なんとなく人が固まっている建物の壁際のところがあったので、近づいていくと、


「○○さん? △△※※××!!」


といきなり、人ちがいをされてしまって、しどろもどろ。
人ちがいではあったけれど、ライブを聴きにきたことは変わりないし、ほかに行く場所がないので、皆さんの輪に混ぜていただき、その場にいさせてもらった。ネットのオフ会に間違えてまぎれこんでしまったようだけど。


*    *    *


toumaさんは歌っているのに、


(なぜ、みんな、雑談しているのだろう?)


と思ったら、どうやら、まだリハーサルらしい。
リハーサル演奏と、ほんものの演奏の区別もつかない浜田。


オープニングの挨拶が始まると、皆さん、さっと正面へ出て行かれ、演奏とともに、からだを揺らしたり、手拍子をしたり、一緒に歌ったりして、それぞれ楽しみ始めた。

私は曲名も知らないし、一度だけ聴いた歌がなんだったのかも忘れているし(「奇跡」という歌!)、正面で聴くなんて恐れ多いから、反対側の階段に座らせていただくことにして、大回りする。


そもそも、本日はライブを聴くような恰好ではないのだ。パンプスはいてるし、スカートだし、カーディガンだし、ヘンなパーマだし、日傘だし! 


(ヘンなオバサンやん)


でも、toumaさんの声は、やはり心に沁みとおってきた。いい天気。ライブはいいなあ。


みなさんは顔見知りらしく、新参者のわたしに、あれこれと声をかけてくれ、とても親切にしてくださった。
通りすがりにストリートライブを耳にして、なぜ気になったのかを確認に来た私とちがって、みなさんには、toumaさんを好きになり、応援し続けている、それぞれのストーリーがある。


ライブは、三曲だった。

最後の曲になって、息を切らしながら走ってきた人がいて、わたしの隣にすわった。


「一曲だけでも聴けてよかった」


と、荒い息を整えながら、泣きそうに何度もつぶやかれているので、


(どこから来たのだろう?)


と思っていたら、姫路から来たという。あとで聴いて驚いた。


(姫路!)
(一曲のために!)
(姫路!!)


姫路のイオンモールで流れてきた toumaさんの歌声に、涙があふれて、止まらなかったそうだ。
出会い。


(それにしても姫路……)


と思ったけれど、省吾が目の前で歌うのだったら、わたしだって、どこまででも行く。
いいなあ。こんなに近くで会えるなんて。
toumaさんは、毎週、水曜日は、大阪駅などでフリーライブをしているそうだ。


*    *    *


携帯のアドレスを交換することになり、赤外線通信がうまくいかないので、つい、持っていた「名刺」を渡してしまった。


「コトバの指圧師……。指圧師さんなんですか!」


(ち、ちがいます……)


(「文章作家」と書いてある恥な名刺など、もってのほか)


普通の名刺も作ろう!!! 


ふだん、イベントなどで出会う人は、セラピストネームを持っていたり、ペンネームを使っていたり、モノづくりをされていたり、お店をもっていたりして、肩書きもさまざま。


そんな「別世界」に慣れていて、ふと、「普通の人たち」に出会って、我に返った。


わたしだって、「普通の人」だ。生活のほとんどを本名で過ごしている。
ブログを書いたり、ことだまを伝えたり、セラピーをしたりしているのなんて、時間にすれば百分の一くらいの出来事だ。そのことを、あらためて思いだした。


「ブログ読みますね!」


と言ってくださって


(読んでください!)


と言えるブログではないと、はっきり気づいた。


浜田えみなのブログを「好き」で読んでくれている人は、長い文章に慣れているし、わたしのクセも「容認」してくれるし、わたしの「へん」な視点を楽しんでくれているから、うっかり、甘えて、あぐらをかいていた。


多くの人に読んでもらえるつもりで書いていたけれど、ぜんぜんちがっていた。
今さら気づいた。反省した。


通りすがりの歌に涙をこぼしたり、落ちこんでいたときに歌を聴いて立ち直って元気になる人たちに、手にとって読んで共感してもらえるような文章を、わたしも書きたい。


新梅田シティ。
空中庭園の下で、そう思った。


まだ見ぬ読者。


書いたものがベストセラーになったり、ムーブメントを起こすようなときは、自分が予想もしなかった人たちが、手にとってくださるのだろう。


*    *    *


「ことだま師ってなんですか?」
「有料なんですよね?」

と訊かれて、しどろもどろになってしまう。

必ずしも、有料でしか話さないというわけではないのだけど……。

その人だけの名前のことだまを伝えようと思うと、名前の由来やご両親・祖父母様のお名前や、生まれた場所や、好きなことや夢など、教えていただくことがたくさんあり、時間もかかる。


わたしは、ことだまの話を始めたら止まらない。


でも、どこまで、求めていらっしゃるのか、どこまで伝えたらよいのかが、無料だとクライアントさんが遠慮されるので、わからないのだ。


toumaさんのストリートライブに来ていらして、お話をしてくださった人たちの名前は


まゆみさん
まりこさん
みかさん


(ま行!!)


すごいなああ……。

三人そろうとすごい。

ことだま教師の山下弘司先生は、地方に講演依頼を受けたときなど、タクシーの運転手さんの名札で、メッセージを受け取っておられる。


“ま”の人に出会うと、本当に嬉しいと、いつも言われている。


「ま行」は、評価のことだまだ。
一般的な意味は
あなたのやっていることは、正しい。間違っていないですよという太鼓判。
あなたのやっていることは素晴らしい。がんばりましたねと、ほめて、認めてくれる音。


(自分のやっていることが、世の人に認められる)


touma さんの歌を、心から認め、本物にすることだまの人たち。


さらに「ま」は、まっすぐ進む力。
その人にとっての、「ほんとうのもの」に気づかせる力。教える力。


そして、「み」は…… たくさんの意味があるけれど、
人を輝かせる力。育てる力。
原石を磨いて、宝石の輝きにする力。


まさに、三人の賢者のような人たちだ。すごい。
ファンクラブは、「ま行」の人で固めたくなる。


Toumaさんはきっと、世に出ていく人だ。


そして、このあと、きゃらめるさんとmaki さんの「四人展 ~ それぞれのSCENE ~」  に行ったのだけど、そこでいただいた名刺も、


マチさん(marin まりんさん)
Dima(ディーマ)さん


(ま!)


名刺入れの中で、ロイヤルストレートフラッシュが、うなっているようだ(笑)

画廊のオーナーさんが、「ま」のことだまを持っているというのは、そこで展示をするアーティストさんにとっては、これ以上ない最高のことだまだ。


自分の作品が認められる力。
目標に向かって、まっすぐ進む力。
自分にとっての、ほんとうのものがわかる力。


きゃらめるさんも、makiさんも、この展示会で、そのことを実感されたと思う。
展示するギャラリーのオーナーさんも、「ま行」がオススメ(笑)


*    *    *
 
はからずも、「ま行」のロイヤルストレートフラッシュを手にして、
さて。


わたしは、


何を認められるのだろう?
どの道をまっすぐ進めばいいのだろう?
何が自分にとっての、ほんとうのものなのだろう?


ぜんぜんわからない。まったく響かない。


だから、これは、わたしへのメッセージではなく、touma さんや、きゃらめるさんや、maki さんたちへのことだまの音連れだと思う。
そして、それぞれ、その場でかかわった人たちへの(^^)


まゆみさん。まりこさん。みかさん。マチさん。Dimaさん。


ことだまは、相手にプレゼントできる力。
みなさんが、今、やってきたことを認められる時であり、輝くとき。

素晴らしいことだまの音連れ。


次にお会いするときも、ぜひ、とびきりの笑顔で。


浜田えみな


と。ここまで書いて、“ロイヤルストレートフラッシュ”というのは、ま行のことだまの人の五人会うことではなくて、“まみむめも”の人に会うことかも と、思ったので、つっこまれる前に書いておきます(笑)