「ハマってみな人生」爆笑中
いえ、爆走中
* * *
堀内正己さんの「笑顔流 筆文字教室」とハンコづくりのセミナーに参加した。 →セミナー受講のきっかけと堀内正己さんのこと
ノウハウを公開することはできないので、ビフォー&アフターの文字と、セミナーで感じたことしか書けないけれど、
まさに、村松先生が「GOLD2012 10号」で書かれていた、
「基礎をしっかりやった人間だけが、自由にそれを崩していい」という考えが、日本人は大好きですね。僕は大嫌いです。謙虚のようでいて卑屈、その上、人を鎖に縛り付けようとする根性です。自由は最初から自由です。表現は自由から始めるのが正しい」
という言葉のもつ力を感じたワークだった。→ 「GOLD2012 10号」 リターンエッセイ
セミナーの前に受講動機を聞かれ、順番に発表した。わたしの動機は
「ポップな字が書きたい」
教科書みたいな楷書は本を見たら書けるけれど、そうではないアーティスティックな字が書けるようになりたかった。
もらった人が嬉しくなったり、ずっと持っておきたくなるような文字を、アートとして書けるようになりたかった。
堀内さんの筆文字セミナーは、書道講座ではないので、そういう方が集まるのだと思っていたら、
「字が苦手」
「コンプレックスがある」
「ずっと字が下手なのがイヤだった」
という人が多くて驚いた。
堀内さんから白いはがきが配付され、何も意識せずに書いてみるようにと言われた。
「ありがとう ○○さん 感謝です」
その字が、堀内さんの指導で、どのように変わっていくか。
白い紙が配られ、真新しい太字の筆ペンで、堀内さんの言われるままに書いていく。
ワークの中で、堀内さんに、ものすごくほめられている人がいた。
「すごい。この字いいなあ。あ、これもいい。今までこんな字は見たことない。どこでも見たことがない。それがすごいよね。マチュピチュあたりの遺跡にありそう」
などと大絶賛。
あまりに盛り上がっているのでのぞいてみると、
(たしかに!!)
人の書く文字には特徴があり、右上がりとか右下がりとか、四角いとか丸いとか、大きいとか小さいとか、変えようと思っても簡単に変えられるものではなく、私などは、そのクセを消し去るのに四苦八苦していたのだけれど、彼女の文字は、共通の特徴を見つけることができなかった。
さまざまなパターンが組み合わされ、ひとつとして同じタイプがない。
形も方向も、予想を裏切る斬新さで、既成の概念からは全く展開できないような彼女の文字は、原始の香りと躍動感にあふれて、とても自由だった。
古代遺跡にありそうというのは、そういう意味だと思う。マチュピチュかどうかは別として(笑)
書いている間、ずっと、
「楽しい楽しい」
と大はしゃぎだった。
「ずっと字がコンプレックスで、字なんか書きたくないと思っていたのに、嬉しい! 楽しい! もっと書きたくなってきた。先生、ありがとう。今日来てよかった」
と、明るい顔で、どんどん書いていた。傍にいるこちらまで嬉しくなった。
(こういうのが素敵なんだ!)
と、心があたたかくなる。
村松先生の言葉もよみがえってきた。
「自由は最初から自由です。表現は自由から始めるのが正しい」
習字の基本がマスターできるまで、字を書いてはダメだなんて言われたら、彼女のこの笑顔や喜びは生まれなかった。
(なんて素晴らしいセミナーなんだろう)
彼女の予測のつかない独特の筆致は、原始の壁画のように素直でダイレクトな歓びに満ちていて、一つ一つが活きていた。本当に伸びやかで素朴なアートの世界だ。誰にもマネできない。
「すごくいい! この字もいい。こっちもいい。どうしてこんな線が書けるの? 字がコンプレックスだなんて思えない!」
ふと、思ったので尋ねてみた。
「元はどんな字だったの? ちょっと横に書いてみて」
笑いながら、さらっと書いてくれると思っていた。
ところが、
「書けない。自分の字がどれかわからない」
(?)
「わたしは、本当に字がへたくそで、ペン習字の本や通信教育や、ハウツー本なんか、もう、いろんな本で練習しすぎたから、いろんなのがまじりあってしまって、ぜんぶうまくいかなくて、自分の字が、なくなってしまったの」
「書くたびに違う字になるってこと? 同じ字が書けないってこと?」
「そう」
(……)
足元が一瞬で崩れ去るような、知らない場所で、迷子になって、ひとりぼっちにされたような、心細さとせつなさと淋しさと悲しさが、胸の中に一気に流れこんできた。
(自分の字がない……)
(それは、いったい、どういうことだろう……)
* * *
私は、小さいころから文章を書くのが好きだった。小学校三年生の時に書いた作文が残っているし、六年生からの日記や手紙の類がずっと残っている。ワープロなんてなかったころは、物語やエッセイも直筆で書いていたから、それも残っている。
書道教室には行ったことがないから、字はうまくないし、習字の時間は苦手だったけれど、自分の頭の中に浮かんだことを、どんどん文字に置き換えていくことは、苦にならなかった。
書くスピードも速いので、思いうかぶままを紙に残せた。
字を書くことにハードルがあったら、それは叶わなかっただろう。
起点を決められない。角度が決められない。長さが決められない。次の始まりをどこにしていいかわからない……。
そんなことで思考が分断されていたら文章表現はできない。
だから、そんなことが気にならないほど、わたしは書きたかったのだと思う。
それしかなかったから。
人が自分を表現する手段は文字や文章だけではない。口があるし、からだがある。
彼女はとても美人で明るくて魅力的だった。キビキビと動く表情とバランスのよい身体はすばしこそうで、きっとクラスでも人気者で彼女のまわりには人がいっぱいいたのだろうと思えた。
別のことで自分を確立できたのだ。字を書く以外のいろんなことで。
だけど、わたしは人まえであまりしゃべれなかったし、運動よりも本を読んだり絵を描いたりするほうが好きな子どもだった。
字が読めるようになり、物語が世の中にあふれていることを知って、本当にワクワクした。自分で書けることはさらに喜びだった。作文も感想文も、いくらでも書けた。
原稿用紙一枚のマスを埋められない子がいるなかで、いつも十枚くらい書いていた。紙が足りなくて先生にもらいにいった。夏休みの感想文や作文の宿題は、「浜田さんには、たくさんあげる」と言われて、先生から、束でもらって帰っていた。
次の字をどう書くかで迷っていたら、日記も作文も書けなかっただろう。うまい字でもないのに、不思議なことだ。ありがたいと思う。誰に感謝したらいいのだろう? 両親だろうか(笑)
だって、文字が書けなかったら、わたしはどうなっていたのかわからない。
今、直筆で長文を書くことはなくなったけれど、日記は文字で書いている。どんなときでもわたしをすくってくれるのは手書きの文字だ。
* * *
二時間の成果。ビフォーアフター。
こんなに変われて、とっても嬉しい。
堀内正己さん、誘ってくださったみどりさん、ありがとうございます!
家に帰って、夫に見せた瞬間、
「ありがとう“てんちゃん”やろ?」
と一喝されました(どひゃひゃ)
たしかに。ご主人やご両親を書かれている人が多かった。
いやはや。
だって、てんちゃんには、感謝というよりも、愛してますもん。らぶらぶちゅー。
* * *
せっかく覚えたコツ。
これは継続しなければいけないと思い、その日のうちに一枚書き、すぐにブログで公開した。
スタイルが決まった。
文字の中の○はオタマジャクシみたいな生き物にする。その子たちの間にコミュニケーションを作る。絶対に笑い声がきこえる文字にする。場を作る。動きを作る。そして発芽して土から顔を出した双葉。
これで書こう。
恥ずかしげもなく公表できるのは、村松さんのセミナーで、
「あるものは出せ」
という啓示をもらったことに加えて、30ドルゲームで、自分と作品を切り離すコツを習得したからだ。
今まで、特に意識はしていなかったけれど、自分と作品は別なようでいて一体だったのだと思う。だから、出すことができなかった。
いわゆる母子分離ができていなかったのだ。それでは作品は引きこもりになるだろう。
今はもう、作品は作品。私とは別ものだ。思った瞬間から出せそうな気がする。かわいい子には旅をさせる。
人は変わる。成り行きに神は宿る。
「ハマってみな人生」爆笑中。いえ、爆走中。
浜田えみな
昨日、ハマってしまった金山平三。また人生の転機が訪れた気がする。
美術館に四時間もいたのは初めてだ。
次に描くのは、まさか油絵。いやまさか。
追伸
今回は、筆文字とハンコづくりのセミナーでした。
わたしは、不器用で工作はぜんぜんダメ。
だったら、一文字にしたほうがいいと堀内さんに言われたのですが、
(イヤだ「えみな」がいい。できなかったら、てんちゃんに彫ってもらう) と思い(笑)、
まっすぐ彫るだけなら大丈夫ですと大見得を切ったくせに、ゴムに刺した彫刻刀がびくとも動かず(なぜ?)、前に進むことも後ろに引くこともできなくなって、
「先生、彫刻刀が動きません!」
と泣きつき、全部彫ってもらいました(汗) 下字を書いたのは浜田です!
ちなみに、マチュピチュの申し子Sさんは、あっというまに彫り上げて、余裕でほかの人にアドバイスをしていました。
下絵の文字が彫刻刀で彫れるのに、紙の上で文字のカタチが取れないのは大いなる謎だと、神業みたいな彼女の手元を見ていた浜田です。
わたしのビフォーアフターと同じく、参加したみなさんに、たくさんのビフォーアフターが生まれました。
堀内さんは、今日もどこかで感謝を伝えています。
おりしも、本日、ポストにハガキが。
堀内さん 心から感謝です。ありがとうございました。


