もう会えないと思っていた友人が、
不意に訪ねてきてくれたような。


夢でいいから会いたいと思っていた人に
夢の中で会えたような。


*    *    *


村松恒平先生の「文章学校」というサイトは、文筆を志すものの宝庫だと書いた。
そこで見つけたメールマガジンのバックナンバーは、すでに書籍になっていた。
読者から寄せられた質問に答える形式を、そのまま収録した三部作のタイトルは


[プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール]
壱 「秘伝」(1~50号) 
弐 「文章王」(51~100号) 
参 「書く人」(101~150号)   → 村松書店


書籍になっているのは150号までで、そのとき、サイトで読めるバックナンバーの最新号は266号だった。
ドキドキしながらメールマガジンの登録をしたけれど、ぜんぜん配信されない。


(本当に登録できているのだろうか?)


心配になっていた。
そして。


歳もおしせまった昨年の12月30日。
メールサーバーに「秘伝-通算267号」の文字が!
だけど続く文字は


「みなさん、さようなら」


(うそーーーーーーーーーーーーーーーーーっ)


初めて届いたメールマガジンが終刊号とは(涙)


しかし、それは、新しく始まるメールマガジンの招待状だった。

すぐに登録した人もたくさんいるだろう。でも、わたしはしばらく迷っていた。
次のメールマガジンのテーマ 「自由になるために」 という言葉が、よくわからなかったのだ。


そのころの私は、十数年ぶりに文章修業をしようと決意したばかりで、いわゆる「文章作法」に意識が集中していた。
「精神論」とか「存在」とか「哲学」だとか、そういうムズカシイことは、今はめんどうくさいと思っていた。
しばらく迷って購読を決めたのは、


(村松先生とつながりたい)


と思ったからだ。
村松先生が好きになったのは、文章作法を教えてくれる先生としてではなく、読者とのやりとりの中に感じた人間としての器とあたたかさ、使っている言葉の選び方、厳しくてやさしくて誠実でオチャメなところに惹かれたからだ。

だったら、今、先生が文章メルマガを終えて(超えて)発信しようとしているものを、読まずにはいられない。それがどんなものであっても。
……


「GOLD2012」は、やっぱり敷居が高かった。


(しまった!)


と思ったけれど、村松先生の言葉は、どうしたって、わたしの中にベクトルを作る。
しかも、読者の中に文章メルマガから流れてきた人が多いと知った先生は、第三号で


「僕の言葉の工房を公開する」


という魅力的なタイトルで、わたしを釘づけにし、「小説を書くというプロセス」における意識構造をふんだんに取り入れた文章で、浜田“ぬか床”工房を誕生させたのだった。→ 浜田“ぬか床工房”


村松先生が特別な思いで、発刊されたメールマガジン「GOLD2012」。


今、必要だから、今、届く。

それなら、なぜ今なのかを、ちゃんと考えたかった。感じたことを残しておきたかった。
だから、リターンエッセイを書くことに決めた。
魔が差したとしか言いようがない。
書くと宣言していなかったら、はたして今、続けているだろうか?(笑)


わたしは、文章で表現している。表現したいことの設計図が文章だからだ。文章によって立体化するからだ。


行きづまるのは、


「どのように表現すればいいか」


がわからないという技術の問題ではなく、


「何を表現するか」
「表現したいものがあるか」
「誰に伝えたいか」


がわからないという精神の問題だと思う。
小説を書く技術が未熟だから書けないのではなく、何を小説で書けばいいのかがわからないからだ。


「書けない」


書きたいことが生まれれば、技術のなさをうらめしく思い、書きたいことが生まれなければ、心の貧しさをうらめしく思う。
足りないものを得ようとして、必要なものを手にしようと焦がれる。
終わりのないシーソーゲームのように。


*    *    *


村松先生は、そんなシーソーゲームを終わりにしてくれる。
前に進めない原因が、「技術」であっても「精神」であっても、「秘伝」スクールは答えをくれる。
みんな、お気に入りの言葉があって、何度も何度も読みかえすページを持っている。


その、秘伝メルマガが、復活した。
3月28日
夢のような278号だ。


セミナー開催の一番大きなギフトは、秘伝メルマガの復活だった。

受信トレーに、「秘伝メルマガ」のタイトルを見つけたときの、登録者のみなさんの気持ちは、どんなだっただろう。


もう会えないと思っていた友人が、不意に訪ねてきてくれたような。
夢でいいから会いたいと思っていた人に会えたような。


配信された時刻、私はちょうどパソコンの前にいて、モニター画面の右下にメールの着信を知らせる表示が浮かび上がるのを見た。タイトルがゆっくりと消えようとしている。
急いで、受信トレイに切りかえた。


そこに見たもの。


差出人の名前も、タイトルの文字も、静かに神々しかった。
届くことを知っているわたしでさえ、開封することができず、じっと見ているだけだった。


「秘伝―通算268号 村松の近況特別号」    文章学校mag2……


終刊してなお、五千人近い人のもとへ、とどく。
満点の星空のように、五千人のもとへ、自分の名前が散らばる。自分の力では決して果たせないことが実現しているのだった。


*    *    *


朝起きると、申込みフォームからメールが届いていた。
昨夜のことは、夢ではなかったのだと思った。


その日、仕事の帰りに会場の下見に行った。
村松先生と懇親会の店について調整した。
少しずつ申込みをしてくださる人がいて、リクトとコツメを動員しなくても、セミナーが開催できるようになった。
最終案内のフォームができていなかったので、とりいそぎ、感謝の気持ちを、それぞれにメールした。

下見に行ってわかったことだが、京橋はディープな街なのだ(笑)
土地勘のないかたが参加されるなら、詳しい案内も必要だ。迷子になったらたいへん。
また、皆さんがブログやホームページを持っておられるなら読ませていただきたいと思ったので、その旨も書き添えた。


皆さん、心優しく返信してくださる人ばかり!
しかも、誰が引きよせているのだろうか。なんだか、とっても楽しくなりそうなメンバーが集まっている。

住んでいる場所も、京都・奈良・大阪と、それぞれの土地のエネルギーを連れてきてくれそうだし、表現の主体も文筆に限っていない。
男女比も半々。
年齢層は、やや高め。
すごーい。魅惑的。当日、何が飛びだすか想像もつかない。
わくわくわくわく。


*    *    *


残るは、村松先生が楽しみにしておられる懇親会の場所選び。
この任が重いのだってば。

浜田えみな


(つづく).