言葉も発せず、目も見えず、
息をしたこともない塊が、
誕生という出口をめざして、


ある方向性をもった運動を、

やみくもにくりかえしながら、調和していく。
全く別の精神をもった熱い生命のエネルギーが、
とまどい、せめぎあい、ぶつかりあう。


そんなすごいものが、
自分の中を通ってきた。


*    *    *


「一号一惠(いちごいちえ)」は、村松恒平さんのプレミアムメールマガジン 「GOLD2012」 の配信に伴うリターンエッセイです。くわしくは、こちらを → 「GOLD2012」と「一号一惠(いちごいちえ)」


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今回は、第九号 「形成力と生きた設計図」 を読んで感じたことです。
文中 【 斜体 】 で表示されている箇所は、「GOLD2012」 本文中の言葉です。


*    *    *


精神とは、いったいいつから在るのだろうか?
精神とは、人だけが持つのだろうか?

心と精神は別だろうか?
意識と精神は別だろうか?

別だとしたら、からだは「乗り物」?
運転手は一人?


そう思ったとき、「一人じゃなかったときがある」 と思った。
自分の中に、確かに別の生命を抱えていたときがある。

いつから、その生命は精神を持ったのだろう?


言い換える。
わたしの精神は、どこに宿っているだろう?
脳? ハート? 丹田? 
からだの細胞全てに?

わたしのからだを構成するものすべてに、わたしの精神が宿っているのだろうか???
だとしたら。


卵子(ヒメと呼ぶ)は、わたしの精神だ。
精子(トノと呼ぶ)は、夫の精神だ。


ヒメとトノが出逢い、結合する。互いの情報を半分にして受精卵となる。
このとき、この瞬間から、生まれた新しいものは、精神(リクト)なのだろうか?
それとも。


受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管内を子宮へと進み、その奥まったところに着床する。
着床した子宮内膜は、母親の細胞だ。そこに包みこまれ、埋まりこんでいく新しい精神。
胎盤ができ、臍帯ができ、脳と脊髄ができ、神経系が整備され、血液循環系が形成される。


(リクトはいつからリクトなんだろう?)


いつからかなんてわからないけれど、出産後なんかじゃない。へその緒を切ってからだなんてとんでもない。
女性ならみんなわかると思う。
妊娠したら、もうわかる。
受精の瞬間さえ、感じると思う。

とてもかすかで微弱な精神の気配が、だんだん、強くなってくる。自分ではないものが自分の中で息づいている。

そして。

分娩ほど、自分以外の何かの、意志や、精神力や、生命力の強さを感じ、励まし、よりそい、祈り、翻弄され、なだめ、願い、導き、信じ、最高潮の到達を味わえるものはない。


至福の時だ。


言葉も発せず、目も見えず、息をしたこともない塊が、誕生という出口をめざして、ある方向性をもった運動を、やみくもにくりかえしながら、調和していく。全く別の精神をもった熱い生命のエネルギーが、とまどい、せめぎあい、ぶつかりあう。


そんなすごいものが、自分の中を通ってきた。


このことを、骨盤隔膜は、すべて記憶している。
子宮の中に、もうひとつの「精神」が芽生えたときから。


村松さんのメールマガジンを読むまで、「精神」のことなんて考えたことがなかった。
とりだせるものではないし、自分の中のどこにあるのかなんてわからない。
だけど。

分娩時や、出産の瞬間のことを思うと、


(あれが精神だ)


と、そのエネルギーの輪郭を思いだすことができる。


「女性は子宮で思考する」


よい意味では使われていないようだけど、「当然やん」と威張りたい。
「それしかないやろ」と自慢したい。


自分とは別の「精神」を包みこみ、栄養し、泳がせ、生みだしていくことができるのだ。
生命がスパークする瞬間、そのマックスの力を受けとめ、それを何千倍もの愛と祈りで返しながら、世界へ解き放つことができる唯一の器官なのだ。

すごい。使わなければもったいない。

さらに。

そのすぐそばで、胎動や鼓動を記憶している「仙骨」の感覚もまた、女性が失ってはいけないものだ。仙骨のサインは味方。大切な骨盤の宇宙。

その記憶は、わたしを助けてくれる。


*    *    *


今回の村松さんのメールマガジンに登場した幾つかの言葉…… 【 「種」 「DNA」 「設計図」 「生命力」 「精神」】 に加えて、書くための車輪になったのは、種子の持っている生命力を構成するとされた三点の要素だった。

村松さんは、【 種子の持っている生命力 】 を


① 方向性。生命が進化生成しようとするポジティブな方向性です。
② エネルギー。方向性が向きなのに対して、こちらは原動力です。
③ 形成力。ある方向にエネルギーが流れていく。しかし、それが拡散してしまうのではなく、ある限定づけられた形に輪郭づけられていく。それをここでは形成力と呼びます。


と表現していた。

なんて、リアルな躍動と高揚感に満ちた文章だろう。自分の中にベクトルが生まれる。
だから、わたしは村松さんの文章が好きなのだ。


胎児の回旋運動は、まさに、「精神」の方向性と、エネルギーと、形成力の体感だった。


【生命力こそが精神の素材そのものである】


という言葉に、心から産道… いえ、賛同する。


浜田えみな


今回のギフト


自分の中に別の精神が生まれ、抱くことができた期間のこと。
自分の中を別の精神がぶつかりながら回旋し、通りぬけた瞬間。
このことを、忘れたらもったいない。