言われるまで気づかなかったけど、
言われたらわかった。


*    *    *


村松恒平さんの文章表現セッションを受けた。
いろいろなことを話してくださったけれど、印象に残ったのは、スキマとスイッチ。


(スキマ・スイッチ?)


何かのお告げなのかもしれないと思って、スキマスイッチのCDを買ってみた。
今、「奏」を聴きながら書いている。


*    *    *


村松恒平さんの著書『文章上達〈秘伝〉スクール 壱 「秘伝」』(メタ・プレーン)の59ページに、こんな文章がある。


「比喩でいえば、商業作家になることは、ハードル競技ではなくて高跳びなので、跳べない人には永遠に跳べない高さにバーがあるのです。これだけやったから報われるはずだ、などという線はどこにもないのです」


次のステージは、長い長い道を、どこまでも歩き続けた先にあるのではなく、どこかで一気にポンと跳び越えなければ上がれない次元にある。
どれだけやっても、跳べない人には、永遠に跳べない。


(心の底からそのとおりだと思った)


わたしは、長い長い道をどこまでも歩いているだけだ。
どこまで歩いても、いつまで歩いても、一気に何かを跳びこえるようなエネルギーがなければ、どこかで何かを変えなければ、行けない場所がある。


(そんなこと、もう、ずっとわかってた)


わかっているのに、この後に及んで、一気に跳ぶ方法ではなく、どこまでも歩き続けられる方法を尋ねてしまうわたしのブレーキは、いったい、なんなのだろう? 


*    *    *


あなたには跳べないと、言われないように?


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二つのスキマについて教えてもらった。

一つは、わたしの文章の中のスキマ。
わたしの書くものには、スキマがないのだという。語りすぎ。書きすぎ。結論づけすぎ。


(…………)


(自分の想いを伝えたい!)
(今、胸の内にあるものを届けたい!)


その想いが強ければ強いほど、少しでも正しく伝えたいと思い、絶対に誤解されたくないと思い、追求するあまり、生まれたものは人を寄せ付けない。誰も受け入れない。
モンクなんか言わせないと、耳をふさぎ、目をとじて、疾走するような文章。

窓や扉があったとしても、誰にも入り込めない砦になっていた。

言われるまで気づかなかったけど、言われたらわかった。


もちろん、それが魅力となる場合もありますと、村松さんは言ってくれた。

だけど、読者の心が動くスキマがないのだと。


「どこまで書いてどこまで書かないかは、かなり難しい塩梅です」


書きたいことを書かないことで、いっそう引き立つ味わいがある。


「パントマイム」で、マイミストの指と指のあいだにある見えない立方体を、「ある」として共有できるのは、人間だけだと教えてくれた。コンピューターには認識できない。

文章の行間の奥行や、書かれなかったセリフの続きや、書いてあるセリフや行動の嘘を、感じることも、人間の読み手だけの「喜び」と「快感」。
その恩恵のない読み物は……


(何のために文章を書いているのだろう?)
(誰のために文章を書いているのだろう?) 


自分のための文章から、読み手のための文章へ。
その秘訣が、文章の「スキマ」だ。


*    *    *


二つ目のスキマは、イマジネーションの「スキマ」


みんなが感動することではなく、みんなが逃がしてしまうことから展開するための「スキマ」
ありふれた世界や、見慣れた光景のなかに、自分が入っていける「スキマ」 
あっというまに大きく展開していく、ほころびのような「スキマ」
自分と世界をつなぐ「スキマ」


それをさがす。


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スイッチは、正確には「起動スイッチ」と、村松さんは言った。


過去に書けたことがあるのなら、その状態になる起動スイッチを探して、自分で押せばいいと。


書きたくなるスイッチ。書けるスイッチ。
何をするか。何をしないか。
自分の中の強いモチベーションは何か?


《起動スイッチ》


細かな理屈はいらない。スイッチが入れば動きだす。
自分の起動スイッチをみつける。ボタンひとつだ。


さあ、どこにある?


*    *    *


村松さんは言う。
スキマとスイッチの設定ができれば、「どこからでも始められすぎる」と。


*    *    *


言われたことを箇条書きにしておく。


・ふだんのものとは別に、作品のブログをつくる
・これだったらたくさん書けるというものを見つける
・書く動機
・俳句したことある?
・自信をもったほうがいい
・リーダーになる
・読者との関係をつくる  読者を組織する
・ほかの人が入ってくるスキマ
・動く


*    *    *


「リーダーになる」という言葉を聞いて、ビジョン心理学の体験講座で習ったことを思いだした。

ビジョン心理学でいう「リーダーシップ」は、


自分から周囲に意識を広げ、他の人たちが助けを求める声に敏感に反応し、手をさしのべ、それに応えること。


スキマをつくることは、読者に意識を広げること。読者を尊重すること。読者との関係をつくること。読者とつながること。


*    *    *


「わたしは、そういう活動的なタイプではないんです」
「それは、いつごろのことだろう?」


(え)


「小さいころからです。今も」
「自分で思いこんでいる性格とは、もう、ちがうんじゃないの?」


《それは、いつごろのことだろう?》


真顔で言われたので、呪いが解けたような気がした。


浜田えみな


このあと。
麻婆豆腐が絶品の中華料理店に場所を移します。
おりしも、その日はバレンタインデー。
小説家をめざす三人の美熟女が村松さんを囲み、文章談義に大阪のディープな夜は更けていくのです。


(つづく)