今年は「へ」のことだまが動いている
いろんなことが、
想いもよらない方向に展開していく兆し
* * *
「おかあさん、あたらしいパジャマある? このあいだ見せてくれたやつ」
「? 赤いの?」
「なんでもいいけど、あたらしいやつ」
(なんでだろう?)
と思いながら、買っておいた新しいバジャマを出す。
上はアイボリーの字に小花が散っていて、胸元は切り替えになっている。袖口は、小粋なシャーリング加工がほどこされ、よせられたギャザーのそばに、小さな赤いリボンがついている。下は少しお姉さんっぽい赤一色。
乙女心をくすぐる感じで、とってもラブリー。
「これ着るの?」
「うん」
「白雪姫みたいでかわいいねー」
今日はなんの日だろう?
よくわからないけれど、パタパタとおふろに走っていくコツメは、うれしそうだ。
(ぶぉぉぉぉ…ん)
ドライヤーの音?
洗面所をのぞくと、コツメがドライヤーと格闘しているのが見えた。コツメは髪が長い。
見よう見まねなのか、ブラシももっているし、ドライヤーももっているけれど、後頭部で、まったく方向がパラレル。ブラシは髪に通っていないし、ドライヤーの温風は、髪の根元に当たらず、上のほうの髪だけを、いたずらに巻き上げている。
(いつもは、くしも通さずに、濡れたままの髪でうろちょろしているのに、なんでだろう?)
コツメがこっそり何かやっているときに声をかけるとうるさいので、放っておく。
バタバタ用事をしていたら、気がついたら十時半!
「早く寝―や。何してんねん」
てんちゃんが洗面所をのぞいてコツメに声をかけている。まさか、コツメは、まだドライヤー?
すぐにコツメのヒステリックな声が聞こえてきた。
「わたしだって、寝たいけど、ぜんぜん乾けへんねんやんか!」
おお怖い。でも、あのやりかたでは、そうやろなあ… と思っていると、
「おとうさんがやったろ」
という声。はりゃ。
てんちゃんがコツメにドライヤー?
てんちゃんって、人の髪の毛乾かしたりできたっけ?
いいなあ、コツメ。おかあさん、おとうさんに髪の毛乾かしてもらったことなんてないでぇ~
パタパタパタ……
「髪の毛、さらさら!」
コツメが、ハブラシをくわえて髪の毛をなびかせて、走ってきた。シャンプーのコマーシャルの人みたいに、頭を振ってニコニコしている。
シャカシャカシャカ。
しかも、めっちゃ念入りにはみがきしてます。なんで?
「おかあさん、おやすみ。あっためとく?」
「あっためといて」
コツメとわたしは、おとなりどうしで寝ている。
「あっためとく?」というのは、「おかあさんの場所で寝ておく?」ということ。
わたしが極度の寒がりなので、先に寝つくコツメに、いつも布団をあたためてもらっている。
夜中に自分が寝るときに、コツメをごろりんと隣の布団に転がし、ほかほかの場所にもぐりこむのだ。
コツメは、冷え冷えの布団に押し出されるわけだけど、ちっとも起きない。おかあさんのために、毎晩、布団をあたためてくれる。最近、背が高くなって体重も増えて、転がしにくくて、そのうちギックリ腰になりそうでヤバイけど、この至福はやめられない。
どんなに寒い夜でも、あたたかくてしあわせで泣きそうにうれしくて、ぬくぬくにつつまれて、すぐに眠ることができる。
動かすときには、コツメのほっぺたに、むぎゅむぎゅに顔を押し当ててて、ちゅ~しまくり。
……
暗闇の中で、ふとんに入ったコツメが、目をクリクリ動かしてニコニコしているので、
「どうしたの?」
と訊くと、
「髪の毛さらさら!」
「うん。さらさら。今日すごくかわいい!」
「サンタさん来るから」
「えーっ!!! サンタさんくるから、かわいいパジャマ着たかったの?」
「うん」
「サンタさんくるから、髪の毛ドライヤーして、さらさらにしたかったの?」
「うん」
「サンタさんくるから、きれいにハミガキしてたの?」
「うん」
口をあけて、ぴかぴかの歯を見せて笑い、髪の毛をきれいに枕の上にひろげ、あごまでかけ布団をひきあげて、微笑みをつくりながら目をとじてみせるコツメ。
そうなんやー。
そうやったんやー。
かわいい寝顔見てほしいのね。
まあ、あと数十分もすれば、ものすごい寝相になるのですけど(笑)
いやはや。びっくり。
イブの夜の話だ。
* * *
クリスマスの朝。
昔は、子どもたちが起きだす少し前からビデオカメラをかまえ、プレゼントの包みを見つけて驚く様子や、箱をとりだし、中身を見る瞬間の表情まで、実況中継しながらフィルムに収めていたものだけど、(出勤前なのに!)、さすがにそんな熱意は今いずこ。
ビデオはナシで、肉眼で観察。リクトのは、アマゾンで発注したものに私が包装したので、すぐに開いたようだけど、コツメのは、百貨店の包装なので念入りらしく、いろんなところに「隠しテープ」があるようで、きれいにはがそうとしているコツメは苦闘している。
しかしまあ。
お願いしたものが目の前にあるって、どんな気持ちなんだろう(^^)
* * *
リビングで、てんちゃんとリクトが話している声がきこえる。
笑われたとかバカにされたとか二三日くらいに手渡しでもらった子もいるとかなんとか。
はりゃりや。
「てんちゃん、リクトなんて? サンタさんいてないって、もう知ってたん?」
「いや。りっくんは信じてたみたいやけど、昨日、そう言ったら、友だちにバカにされてんて(笑)」
リクトに近寄る。
「りっくん、みんな、サンタさんいてへんって言うてんの?」
「もうずっと前から、おとうさんとおかあさんからもらってる子もいる。二十三日に一緒に買いにいった子もいた」
「そうかー」
(なんや。苦労して、夜中に忍んで置きにいったのに(笑)) → ブログ記事 「秘密がいっぱい」
ちょっとさびしそうなリクト。
「よし。もう、中学生やからな。サンタさんは小学生まで。来年は、おとうさんと一緒に買いにいこう」
「えー りっくん、サンタさんこないのイヤやな」
「コツメに言ったらあかんで。小学校のあいだはサンタさんくるんやから。ナイショやで」
「うん」
中学生になっても、クリスマスのプレゼントはサンタさんが運んでくれると信じている子もいる。
小さいころから、サンタさんではなく、おとうさんとおかあさんからプレゼントをもらっている子もいる。
コツメみたいに、サンタさんに寝顔を見られることを意識して、かわいくきれいにして眠りにつく子もいる。
サンタさんへのクッキーやミルクを、台所に用意する子もいる。
あなたに、サンタさんは、いますか?
クリスマスプレゼントを届けてくれるのがサンタクロースではないと、自分が知ったときのことは覚えていないけれど、リクトがそのことを知った日のことは、忘れないと思う。
コツメが知る日のことも。
* * *
いや……
コツメは、やはり確信犯だろうか?
おじょうさまは、あなどれない。
* * *
新年早々、クリスマスの話で申し訳ないけれど、残しておきたかったので大急ぎで書いた。
お正月のバラエティということで、楽しんでください。
さて新春の浜田家は……
異様に長風呂で、何をやっているのかと思って尋ねたら、恥ずかしそうに
「明日、初もうでに行くから、身を清めてた」(いったい何を!?)
と言ったコツメ。
* * *
おじょうさまは、カウントダウンの十分ほど前に寝てしまい、年越し蕎麦を食べるときに起こさなかったことをお怒りで、
「お雑煮食べない」
「え、なんで?」
「わたしは年越しソバ食べてないから!」
「だって、寝てたやん。今、食べる?」
「年越しのときに食べな、意味ないやん!」(出ました。意味ないやん(C)コツメ2011) → ブログ記事 「年のはじめに」
「そんなことないよ」(あるかもしれないけど)
「一年生のときも、二年生のときも起きて食べたのに。なんで三年生のときに食べられへんの?」
元旦のあいだ、ずっと怒っていました。コツメで「蕎麦」の話は禁句です。一生言われるかも。
* * *
おせちもお餅も、しっかり神様にお供えしたものを、元旦にさげてきて、
(これに力が宿ってるんやー)
と思いながら、もぐもぐしみじみ頬張った。力がみなぎる。
一年間、がんばる力をいただいた。
で。
朝と昼ですっかり味に飽き(いえ、堪能)、突然、カレーが食べたくなったので、元旦の夕飯は、すでにカレー。
「林間(学校)のカレーみたいやな」
……
これは、ほめ言葉でしょうか?
ほめ言葉とは思えなかったので黙殺していると
「カレーうまいな」
「おいしい。最高!」
「え? 林間のカレーっていうのは、ほめ言葉なん?」
「いちおう、ほめ言葉のつもりやけど」
えーーーーーっ ちがうわー
生徒が作った微妙なカレーという意味にしか思われへんーーーっ!!
ちなみに、人参がやや硬かったので、そのあたりが「林間」っぽいということでした。
なるほどね。
* * *
二日の朝は、カレーの残りを出汁でのばし、年越しそばの残りを、カレーそばにして、餅をのせた(てんちゃん作)。
まさに、おそばやさんのチカラカレーそばだ。
これが、めっちゃおいしかったのだーーー。
「コツメ、お蕎麦食べる?」(しつこい)
「うーーーーーーー」
「あ。まだ、怒ってた」
「ねぇねぇ。めっちゃおいしい。ほんまにおいしい。一本だけでもいいから、食べて」
「年越しじゃないから、今食べたって意味ないやん」(出ました、意味ないやん(C)コツメ2011)
「意味なくても、おいしいから食べてみて! カレーそばなんて、今、食べとかな、もう二度と食べられへんで」
「だって、汁がとんだら、パジャマが汚れる」
もー とにかく、夜中に起こさなかったことが、たいそうご立腹らしく、なんだかんだと、ごきげん斜めのおじょうさまでした。やれやれ。
二日の朝に、カレーそば+餅を食べたのは生まれて初めて。
今年は「へ」のことだまが動いている。 ブログ記事 → 「年のはじめに」
いろんなことが、想いもよらない方向に展開していく兆し。
浜田えみな