名前がつけられている
そのことだけで、


あなたをずっと守ります
あなたをずっと応援します
あなたをずっと見ています
あなたをずっと支えます
あなたに幸せになってほしい


と願われ、


わたしがあなたを守ります
わたしがあなたを応援します
わたしがあなたを見ています
わたしがあなたを支えます
あなたの幸せを祈っています


と、約束してくれた人がいる証



*    *    *


第一章から第五章まで、五つの物語のメッセージがブレないように
(……物語がセーターだとしたら、たとえば第一章は右そで、第二章は左そで、第三章は前身頃、第四章は後身頃、第五章は襟ぐりや袖口。それぞれの編地や長さが違ってしまわないように……)、
ゲージを取った。


つまり、登場人物のプロフィールや状況をきちんと設定した。その際、なぜだか決めかねていて、つけることができないままだった登場人物の名前を、ついに、つけた。

すると、不思議なことが起こった。


名前をつけたとたん、主人公を見守る気持ちが湧いてきた。助けたくなってきた。
物語を通して、その心によりそい、行き来することができるようになっていた。


名前をつけるということは、


あなたをずっと守ります。
あなたをずっと応援します。
あなたをずっと見ています。
あなたをずっと支えます。
あなたに幸せになってほしい。


という願いを持つこと。


わたしがあなたを守ります。
わたしがあなたを応援します。
わたしがあなたを見ています。
わたしがあなたを支えます。
あなたの幸せを祈っています。


そう約束することだとわかった。


名前をつけたとたん、もやもやと、ストーリーのためだけに存在していた登場人物たちが、すべてとても近い、愛すべき人たちに変身したから。


*    *    *


気づいたことがあった。

ゲージを作る前、なぜ、それぞれの物語がバラバラだと感じたのか。違和感を感じたのか。
それは、べつべつだったからだ。


展示のテーマとなる五つの言葉は、五人から出されたもの。

最初のアプローチは、同時に提出されたヒアリングシートとともに、それぞれの心に寄りそうものだった。
二段さんに。あんとみさんに。きゃらめるさんに。まきさんに。そして自分に。


それぞれの主役のために書いた舞台の脚本を、まったく関係のない誰かを主役に立てて、通して演じさせていたのだから、違和感があって当然だ。

別々の人に書いた物語なのだから、一つにすることに問題があったのかもしれない。
では、まったく別の登場人物の設定で、それぞれが完結した五つの物語を、箱につめればよかったのだろうか。


(どうしたものだろう……?)


でも。


名前をつけてしまった。もう戻れない。


五つの物語は、二段さんでもない、あんとみさんでもない、きゃらめるさんでもない、まきさんでもない、わたしでもない、主人公のための物語になろうとしている。


名前をつけた。そのことだけで。


だから。


名前がつけられている。そのことだけで、だれもが、


あなたをずっと守ります。
あなたをずっと応援します。
あなたをずっと見ています。
あなたをずっと支えます。
あなたに幸せになってほしい。


と願われ、


わたしがあなたを守ります。
わたしがあなたを応援します。
わたしがあなたを見ています。
わたしがあなたを支えます。
あなたの幸せを祈っています。


と、約束してくれた人がいる証。


本当は、このことだけで、いいはずなんだ。

名前がある。そのことだけで、誰もが、誰かの大切な愛の証なんだ。


形あるものは、人でも、物でも、自然でも、失われたり、奪われたり、離れてしまったりするけれど、名前は、失うことも、奪われることも、離れてしまうこともない。
どんなときにも、そばにあり、必要とされて生まれてきたことと、待っている人がいることを、忘れないよう、命ある限り支えつづけてくれる愛の証。


名前をつけた。
守るものができた。


(わたしは、彼女を助けることができるだろうか?)


物語の設定上、しんどい状況にだけ追いこんでおいて、結局、彼女の心をとかすことができなかったら…… と思ったら、力不足の自分に涙が出た。


*    *    *


予定では、本日、初稿が完成していなければならないのに(!)、やっと、あらすじ完成(汗)
ラストシーンらしきものも、とりあえず決まったので(ほっ)、あとは書くだけ。


ところが、第四章のモチーフとしていた「手編みのセーター」の回想から、新たに「青い鳥」の絵本が浮上してきた。記憶があいまいなので、現物を確認しようと思い、実家に電話して現物を取りよせようとしたら、その本だけがないと言う。


(嫁入り道具に入れたんだっけ?)


と思って探したが、こちらの本棚にも見当たらない。げげげ。

しかたがないので、インターネットで検索すると、探していた挿絵よりも、「青い鳥」の主題や構成そのものに惹かれるものが出てきた。自分でも物語の細部は忘れていたのだ。


(これは、ものすごく深い内容では……?)


ということで、さっそく図書館へ行って借りてきた。戯曲のものはなく、講談社の青い鳥文庫だ。
物語の中に織りこむかどうかもわからないけれど、とりあえず、これから読む。


わー 今頃、何やってるんだろう? と思うけれど、ヒントがありそうで、ドキドキしている。


名前をつけたら、「青い鳥」がやってきた。


浜田えみな