テーマは、「つながり」「伝える」
それが、
わたしが欲しい「愛」のかたちだと気づいたから
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五つの言葉をもらった。五つの物語を書こうと思った。第一章から第五章まで、章立てで構成することにした。
完結した作品でありながら、全体として読んだときに一つの物語につながる連作短編にする。
テーマは、「つながり」「伝える」
それが、わたしが欲しい「愛」のかたちだと気づいたから。
自分を癒しながら創る作品が、自分以外の人も癒すことができるだろうか?
短いフレーズでは伝えられないと思ったから、物語にする。五話書くことに決めた。五話は、つながることにした。五つの言葉をどう料理するかも決めた。
これは、
「アラカルトじゃなくて、フルコースにします」
と宣言したということだ。
いや、短い物語だから、フルコースとまではいかないな。単品じゃなくて、定食程度には、彩をつけるということだな。
メインのおかずは決まっている。あとは、それぞれ、サブおかずと漬物とごはんを考える。
サラダやデザートや食後の飲み物まで、つけられたら完成度は高くなる。
五つの定食を、
「浜田食堂 今週の日替わり定食」
として、リピーターを呼びつづけられるだろうか?
もう二度と、食べに来ないと背中を向けられるだろうか?
月曜日から金曜日のメニューとして、メインおかず・サブおかず・汁物・ごはん・漬物・サラダ・デザート・コーヒー に当たる枠をつくって、埋めていくことにした。
メニューが決まったら、定食の名前をつけ、メニューの下に書くキャッチコピーを考える。これが,章のタイトルであり、「癒しのコトバ」だ。まだ、ほとんど埋まっていない。
仮に、枠がすべて埋まったとする。だけどまだ、そこに入っているのは、材料だけだ。
たとえば。
月曜日の定食のメインに、「ぶたみそステーキ」と書いてあったら。
どの産地のブタを使うのか。部位はどこなのか。どんなふうにカットするのか。味噌はどんなものなのか。焼き加減はどうするのか。どんな器に入れるのか。
そういうことに、ひとつひとつこだわって、納得しながら仕上げていくのが、物語を創る過程だ。
それが、サブおかずにも、漬物にも、汁物にも、ごはんにも、サラダやデザートや食後の飲み物にも、外せない過程なのだ。
間にあわない。
ぜったいに、間にあわない。
しかも、ここまでできても、まだ、文章しかできていない。
「挿絵」は?
(……という考えは、聞かなかったことにして忘れてほしい)
さらに、わたしたちは
「癒しの五語展」のイベントとして、「五語二十五カルタ大会」をする。
二十五枚のカルタを、来場されたみなさんに取ってもらって、「お持ち帰り」してもらうというもの。裏側には、「取れば取るほど癒される 作家てづくり ことばアート」 ノルマは一人五枚。
五枚。
描けるのだろうか?
物語作品の完成予定は、十一月六日になっている。(あと一週間! 一日一作!)
十一月九日に、最終ミーティングがあるので、みんなに作品を読んでもらって、「愛のツッコミ」を入れてもらう。
「こんな展開、ありえへんわ」
「こんな気持ちになるわけない」
「この字まちがってる」
「この表現がわかりにくい」
「言いたいことがわからない」
すべて書き直すかもしれない。物語をやめて、コトバ展示になるかもしれない。でも、きっと、一番、いい表現方法が導かれると思うのだ。
次に。
物語であれ、コトバであれ、展示作品が決まったら、わたしには今までやったことがない「展示」というハードルがある。一週間でディスプレイできる形にしなければならない。
物語は、どのように展示すればいいのだろうか?
フォントは? 段組みは? 紙は? 色は? パネルは? サイズは? 何枚?
ムリ。
としか思えない。ぜったいできない。できると思えない。へらへらと笑いたくなってしまう。
初めて、
(信じるしかない) と思った。
信じるしかないだろう。(できる) と。
(ああ、そういうことか)と、気づいた。
吉井春樹さんのゼロアーティスト養成講座で、卒業までにできなかったことが、
「自分を信じる」ことだった。
今も自分のことなんて信じられないけれど、スカスカの日替わり定食メニューの枠と、カレンダーの日付を見ていると、「信じる」しかないのだ。
「自分を信じる」という課題を達成するために、展示会が用意されたのだと思った。
(信じよう)
だって。
自分でハードルをあげたのだ。
一作品を創るだけでも難しいのに、連作短編がやりたいと思った。
一作品の中で序破急・起承転結をつけるとともに、五作品の中で起承転結をつけて、物語として構成したいと思った。
最終的にそのランクに届かなくても、めざす場所は高いほうがいい。いつか行きたい場所は遠いほうがいい。
できもしないことばかりを書いて、「信じる」という、新たな逃避(笑)に走っているけれど、嬉しいこともあった。
テーマ曲が決まったこと。
自分が書きたい世界にリンクしている楽曲に出会えたら、その作品は成功する。
その曲が喚起させるものが、わたしが届きたい世界に近いから。
ブレそうになるたびに、戻ってこられる。歌は、わたしが迷子にならず、読み手をつれていくための優秀なナビゲーターだ。書いているときは、エンドレスでその曲をかけている。
だから、大丈夫。
五つの主題を貫くテーマを最後まで見失わない。
浜田えみな
テーマ曲が何かは、展示会が終わるまで、ナイショです(笑)