「まだ、やってますよ。描いてきてください」
「ホントですか?」
「締切、延長したんですよ。明日までです」
* * *
「癒しの五語展」のDMを置いてもらおうと、月曜日に最寄のギャラリーカフェに出かけたら、
「カレルチャぺック紅茶店!!」
なんとそこは、山田詩子さんの世界だった。
絵本原画展、カップ&ソーサー展、かわいいパッケージの紅茶、グッズの数々。
お買いものをするとレジで抽選ができる。紙のクジじゃない。山田さんのかわいいイラストが描かれた、それだけでプレゼントになる個包装の紅茶がクジなのだ。ハズレでも紅茶1パックもらえちゃう!
抽選箱の中には、さまざまなイラストの紅茶が入っていて、「当たり」のティーパックを引いた人には、さらに紅茶がもらえる!
(きゃーーーーーっ)
DMの話はどこへやら、初めて観る詩子さんの原画の数々を堪能し、同時に開催されていた「紅茶のうつわ展示」を見て、絵本を手にとり、ギャラリー内に設置されたノートに、びっしりメッセージをしたため、贈りもの用に紅茶を選び、レジに並んで、ふと目についたのは、「イラストコンクール案内」の掲示! ……の横に貼ってある参加賞(現物)!
それは、山田詩子さんのかわいいイラストパッケージのフレーバーティだった!! クランベリーティーだ。
(出すだけでもらえる!)
店内を見回すと、壁に応募作品が掲示されていた。
「コンクール」と名はついているが、どうやら、展示会開催中に、その場でギャラリーカフェ内に展示されるイベント的要素の高いもの。小学校低学年の子たちや、もしかすると幼稚園児が描いたと思われる作品もあり、初心者でも応募してよさそう。(と、このときは思った)
セブンイレブンでやってる「母の日イラストコンテスト」のようなものだろうか。
セブンイレブンでは、母の日の前になると、店内に応募用紙を設置してあって、描いて持っていくと、メッセージカードとガーナチョコ一枚がもらえる。リクトもコツメも必ず出す(笑)
本来は、「お母さんに」渡すチョコレートだと思うけれど、うちの子たちは、パキっと割って一列くれる。わたしに一列。てんちゃんに一列。残りは、自分たちで食べる(笑)
(わたしも、詩子さんの紅茶が欲しい! クランベリー紅茶!)
〆切を見ると、もう過ぎていた。残念。いじましく視線を張りつけていると
「まだ、やってますよ。描いてきてください」
「ホントですか?」
「締切、延長したんですよ。明日までです」
展示会期間中、応募を受け付けることにしたのだそうだ。さっそく用紙を持ち帰り、紅茶ほしさに描く気マンマン。恥はかきすて。旅してないけど。
* * *
応募作品には、カレルチャペック紅茶店のキャラクターの一つであるミツバチの「バジーちゃん」とおかしをテーマに描けばいいらしい。ドーナツ描いてる子もいたし、和菓子を描いてる子もいた。
安直だけど、はちみつプリンにした。
バジーちゃんをお茶会に誘ったら、おいしそうな甘い匂いに近づきすぎて、
(たいへん! プリンの中にはまってしまった!)
救出大作戦は、あなたのスプーンでひとすくい。
というもの。よし、アイデアが浮かんだぞ。
……
本当は、こんなことをしている時間はまったくない。
「癒しの五語展」の展示作品の二作目を書くはずではなかったか?
でも、ほしい。紅茶ほしい。ほしいほしいほしい。
本気で描くと、一晩かかるかもしれないので、そんな労力をここでは使えない。心を鬼にして(プリンの写真を探したりせず、お皿やティーカップやスプーンも現物を用意したりせず、まったく記憶だけで)簡単に描いてしまった。
十分だけ描こうと決めたのは自分だけど、ホントに十分で描いた作品を前にすると、それはそれでスッキリしない。こんなの出していいのだろうか? デッサンも狂いまくりだし。
そのうえ、余った時間で、作品原稿が書けたのかというと、そういうわけでもないのだものなー。もんもんもん。
おまけに、困ったことになった。
たった十分で描いた、うすっぺらいイラストと同時に、
「グループ展を開催するので、お店にDM置かせてもらえませんか?」
とは、言えないじゃないかぁぁぁーーーーー。
というわけで、そそくさとイラストだけを提出し、参加賞をいただいて(ああ、幸せ)、DMの件など言い出せるはずもなく、ほとぼりが冷めたころ、再チャレンジすることに。
(できないかも)
* * *
詩子さんの文章を読むと、本当に紅茶がお好きなのだとわかる。
わたしはコーヒー党だけど
(紅茶、いいかも!)
と思わせてくれる。
おいしかった。紅茶。
遅ればせながら、これから開拓してみよう。
それから、くだんのコンテストは、詩子さんのブログを読むと、会期終了後、詩子さんご本人が一枚一枚審査をされて、賞を決定すると書かれていた(!)
(えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ)
……リサーチ不足でございました。セブンイレブンのコンテストと一緒にしてごめんなさい。
やっぱり、どんなときにも心をこめて、一期一会の気持ちで向かうことが大切だ。今回の学び。
せめて裏面にラブレター書けばよかったな。でも、手にとってもらえるだけで、幸せな気持ち。
「癒しの五語展」のおかげで、おいしい紅茶を飲めた。イラストはおそまつだけど、詩子さんの元に想いが届けることができた。店内に置かれたノートに、びっしり書いたから。
住所だけの人や、一言だけの人が多かったけど、文章は、どんなときにも手抜きしない。
わたしと山田詩子さんの出会いは 過去に、ブログ上で開店したカフェに書いたことがある。イラストも描いた。
よかったら、遊びにきてください。あなたの大切なひとときに。
浜田えみな

