仙骨が
「器」であり「世界」であり
「宇宙」であることがわかった
仙骨は
湧きつづける「泉」だった
満ちあふれる「源」だった
どんなときでも、
「変化」は、より幸せになるために起きることを、
確信したかった。
新しく生まれた仙骨に、
大地から「今」のノックがとどく
* * *
最初に感じたのは、拍動だった。目の奥のあたりのスクリーンに、小さな拍動が映っている。
やがてそれは、寄せては引いていく動きになった。
波になり、次の瞬間には引かれていく砂になり……
くりかえす満ち引きの力に、まどろむように、ゆらいでいる。波間に映る月の光のように。
やがて、スクリーンの中に、横一文字の切れ目が入り、その中に水が出入りしはじめる。
エラ呼吸をしているように、切れ目に勢いよく吸いこまれ、押し出されてくる水の流れ。その量と圧が、回数を重ねるごとに大きくなっていく。
この状態が完成形なのか、さらに進化していくのかはわからなかった。ただ、横一文字の切れ目に大きく吸いこまれて、押しだされてくる流れは透明で、生まれたてのあぶくがとても綺麗で、何度も何度でも、あふれだしては、その動きを繰りかえしていた。
……
「ロルフィング セッション#6」で、うつぶせになって仙骨にアプローチされているときに感じたイメージだ。
セッションでは、左右半身ずつ施術をし、片側が終了した時点で、施術ベッドから降りて、観察を行う。
まず直立した感覚を味わう。全身を見る。歩いた感覚を味わう。
施術をした左側の臀部が、ぽこんと丸く立体的になり、していない右側は、へしゃげて傾斜しているようだった。空気を入れたゴムボールと、空気の抜けたゴムボールが、おしりに二つ並んでいるような感じ。
律子さんは、「紙風船」にたとえていた。
「すぐにへしゃげてしまうけど、少し息を吹きこむと戻るでしょ。気のついたときに、ぷっとおしりの紙風船に息を吹き込めばいいのです」と。
今度は右側だ。再び、ベッドにうつぶせになる。
「ほら、もう、準備している」
と、律子さんが笑う。指がふれただけで、次にされることに、カラダが反応するのだそうだ。
「一人目の子は何をするのにも手とり足取り手順を教えて時間がかかるけれど、二人目の子は、上の子が言われていることを、ちゃんと聞いていて、次におこることがわかっているから、準備がいいですよね。からだも同じです。最初にやる側より、ずっと早く進みます。手抜きしているわけじゃないのよ」
足裏と大地の接地の感覚をレッスンする。
大地は支えてくれるもの。受けとめてくれるもの。守ってくれるもの。認めてくれるもの。
必要なものを受けとり、不要なものを返す
子どもの頭をなでるように、足裏と大地は近づき、はなれる。
左足に四回、五回かかったことが、右足は一回、二回でできる。
足首、ふくらはぎ、太もも、おしり……
押圧される。のばされる。ほどかれる。ととのえられる。
施されている箇所が、筋肉なのか膜なのかツボなのか、いったい何なのかもわからないまま、下から上がってきて、ついに仙骨。
(痛い)
* * *
痛い。痛い。痛い。
痛かったけど、頭に浮かんできたのは、仙骨の内側だった。仙骨の内側の世界―
仙骨は骨だ。骨盤を形成している骨の一つだ。オシリの割れ目のところから、ちょうど手のひらに収まるような、逆三角形の形をしている。仙人のように不思議な力を持つとされる骨。
縦に八つの穴のあいた骨。
仙骨がどういうものかは、脊椎から降りて確かめることもできる。
背骨の突起を数えるように指でなぞっていくと、腰椎のあたりで、骨が大きくなったことを感じる。その感覚を、さらにたどると、突然、平野に出たような広がりを感じる。
その部分が仙骨だ。
仙骨は、脊椎を介して後頭骨の動きとリンクしている。
脳や脊髄を護っている脳脊髄液を循環させるポンプとして動いているのだ。
仙骨が元気じゃなくなると、ポンピングが弱くなって、生命力がとぼしくなる。
クラニオセイクラルワークの中で、仙骨に手のひらをあて、その動きを感じる実技演習も何度もやった。仙骨は、そっとホールドしているだけで、元気をとりもどす。淋しがり屋の骨なのかも。
あたたかい仙骨。潤いのある仙骨。厚みのある仙骨。つめたい仙骨。固い仙骨。大きくうねるように動く仙骨。まったく動かない仙骨。わたしの左手は、さまざまな仙骨を感じてきた。
図解されているイラストのまま。骨格モデルの形のまま。骨盤を形成する骨の一部分として。
その仙骨が呼吸を始めた。
仙骨の中に命がそそぎこまれた。
仙骨の断面があらわれ、その中に注ぎこまれていく何か。
仙骨の内部が、潤いに満ち、質感を持ち、ツヤツヤと輝いている。
まるで内視鏡のように、仙骨の内部におりていくと、一つ一つの細胞が息づいていた。
わずかな空間のはずなのに、外側からは想像もつかないような壮大な広がりは、すべてが潤いに満ち、鼓動していた。
(ああ、そうなんだ)
今まで、どうやって仙骨を温め、豊かにすればいいのかわからなかった。
硬い殻の上から、どうにかしようとして、途方にくれていた。
ちがうんだ。
(内側だったんだ)
扉が開いた。
* * *
セッションの前に、
「何か気になるところはありますか?」
と聞かれ、特に何もなかったので、更年期の話をした。
少し前のブログにも書いたけれど、更年期の入口は、とっても心細い。その気持ちを、楽しいことが待っているときのような、ワクワクした高揚感に変えたかった。
どんなときでも、「変化」は、より幸せになるために起きることを、確信したかった。
自分の中の女性性というものが、子宮や卵巣、排卵、生理、乳房などにゆだねられているとしたら、それらを喪失することは、哀しみや怖れを伴うものになる。そうではないだろう?
更年期は、女性としての機能を失っても平気なように、心と折りあいをつけるための期間などではなくて、次なるステージへ進化するための再誕生の期間のはずだ。
……
と、文章で書くことはできるけれど、実際、自分がその状況になったときに、本当に心からそう思えるかどうかは、なってみないとわからない。
というのは、一年半ほど前に、職場環境が変わったせいか、三か月ほど生理が止まったことがあり、そのときに
(もう二度と来ないかも?)
という気分を味わったからだ。それは、荒寥とした淋しさだった。
生理がある人は、十代の小学生でもうらやましかったし、五十代の女性ならば、うらやましさを超えて、ねたましかった。やりきれなくて哀しかった。
子宮内膜症で苦しんでいる人の話でさえ、
「あるんだからいいやん」
と思うほどの、いじましさだった。
自分が金属か枯れ木にでもなった気分で、何をしていても逃れられない、みじめで切ない気持ちを、振りはらうことは難しく思えた。
全く心の準備ができていなかったからだと思う。「最後」を意識できていたら、大丈夫だったと思う。突然だったから、くずれたバランスを戻せなかった。
恋愛でも同じではないだろうか?
* * *
こんなときこそ実践だ。
アロマやハーブは、本当に、心にも体にも効果があるのか? 漢方はどうなのか?
フラワーエッセンスにも初めて挑戦したし、持っている技術や知識を総動員して、心やからだの変化を確認したし、ホルモンについて調べたりした。
そして、今まで、あまりにも女性のからだについて無知だったことに思い至り、
(コツメのために勉強しよう!)
と奮起して、女性の心とからだを取りまく問題について学ぶことができる講座を受講することにしたのだった。
仕事が落ちついたら、いつのまにか生理は再開し、月の訪れを前とは違う気持ちで迎えることができるようになった。講座で学べたこともよかった。自分の気持ちの折れやすさにも気づけた。その上で今は
(いつが最後になってもいい)
という気持ちでいるつもりだ。つもりだけど、ホントにそうなったら、悲しいかもしれない。卑屈になるかもしれない。どういう心境になるのかは、やはりわからない。
でも、そうならない自分に成長してゆきたいと願っていると、律子さんに伝えた。
「大丈夫」
と言ってくれた。
本当に、そのとおりになった。
仙骨は、私のマグマだった。
仙骨は、女性にとって命の骨だ。
仙骨の前には、子宮や卵巣がある。子宮と仙骨は靭帯でつながっている。
リクトやコツメの原始細胞ができたとき、一番最初に、その呼吸を感じたのが、仙骨なのだとしたら、とてもうれしい。
* * *
人間には、プラスチックやセラミックなどの人工物で代用できない骨が二つあり、それが、蝶形骨と仙骨だという。
蝶形骨は、頭蓋骨を形成している骨の一つで、目の奥あたりに位置する蝶の形をした骨だ。その中心の「トルコ鞍」というくぼみに、さまざまなホルモンを産生分泌する脳下垂体がおさまっている。
こめかみのあたりに、そっと指先をやると、その広げた蝶の羽の縁にふれることができる。
脳や脊髄は硬い骨の内側で膜で包まれ、脳脊髄液という体液の中に浮かんで護られている。脳脊髄液は、脳室で産生され、仙骨の動きは、脳脊髄液を循環させ、脳や神経に栄養を与えるポンプの役割をする。
仙骨の状態が生命エネルギーを司っているのだ。
生まれたときに最初に動く骨が仙骨だという。
* * *
仙骨がなぜ、わたしにとって特別なのか。
それを教えてくれたのは、イベント会場のブースで出会った「ヒューマンデザイン」のリーディングチャートだった。誕生日からわかるのだそうだ。
過去のブログに書いた文章を転載する。
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チャートを見ながら、最初に言われたのが「仙骨を大切に」だった。
仙骨!!
ここは、わたしのウィークポイントだ。いつも「ざわざわぞわぞわ」している。たぶん、ゆがんでいるし、トラウマが蓄積されているし、不具合の巣窟だ。ここがスッキリしていたら、わたしは、学長のところで、オステオパシーをあんなに学ばなかったし、タッチフォーヘルスも学ばなかった。心理学の講座にも行かなかっただろう。
「わたし、仙骨が悪いんです」
「それは、自分らしく生きていないからよ」
即答された。
「あなたは、仙骨が、いろんなものをキャッチするアンテナなの。反応してサインを出すところなの。仙骨の声をちゃんと聞いて。がまんやストレスをのぞいて、仙骨をゆらす運動などもやってみてください」
(そうだったんだー!!)
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「ヒューマンデザイン」によると、人は四つのタイプに分けられ、私は、仙骨をアンテナとする「レギュレーター」というタイプなのだった。
それまでは、原因不明の仙骨の「ざわざわぞわぞわ」が気持ち悪くて、なんとかならないものかと思っていたけれど、
「自分らしく生きていないから」
「それがサイン」
「声を聞くのだ」
と言われてからは
「ああ、反応してるのだな」
と思うようになり、そうなると、不具合が気にならなくなり、仙骨と対話ができるようになった。
でも、仙骨は「骨」だった。
「ロルフィング #6」のセッションを受け、仙骨が「器」であり「世界」であり「宇宙」であることがわかった。
仙骨は湧きつづける「泉」だった。満ち溢れる「源」だった。
律子さんの手が導いてくれた。濁りやよどみをとりのぞいてくれた。
一番最初にクラニオセイクラルワークの施術を受けた三年前のわたしは、
「なんて仙骨の冷たい人なんだろうと思った」
と学長に言われるような、「冷たい仙骨のオンナ」だったのに(笑)
今、仙骨に手をあてると、ふくらみを感じる。
仙骨は、からだの中心にある骨。脊椎と下半身をつなぐ骨。
脊椎と仙骨の関係は、五重塔の心柱と、その土台である心礎(しんそ)のようだ。
心礎は、釈迦の骨を納めた舎利を護っている。仙骨は子宮を護っている。
てのひらをあて、その呼吸を感じるとき、リクトやコツメの鼓動を、仙骨は、ずっと聴いていたのだと想うと、幸せな気持ちになる。
前にブログで書いた、隔膜調整とクラニオセイクラルワークの文章を転載する。
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波打ち際で、目をとじて、からだを横たえる。
緊張や硬直がなければ、四肢も、体幹も、頭も、砂浜に抱かれ、リラックスして、ここちよく沈んでゆく。
頭の先から足先まで、寄せては返す波のリズムに洗われていく。
必要な栄養を吸収し、いらないものが運び去られる。
波の動きが膜の機能だ。足元に、大きな岩や突出した異物があれば、波の流れが変わる。からだに緊張があり、ゆがみがあれば、波に洗われない部分ができる。潤いをなくし、機能しなくなる。
最初に生命ができたとき、初期段階の胚は、さえぎるものなく、命の波動(間質液)の享受を受けていた。
進化にしたがって、循環システムや骨格系ができると、構造が複雑になり、その波が届かないところができ、病や障害が起こる。
どんなに構造が複雑になっても、この命の波が、大きく打ち寄せ、すみずみまで伝わり、満ち引きしている限り、生命体は病むことがない。制限するものを取り去り、豊かに寄せて返す波(治癒力)を、全ての細胞に届けることができれば、命は、生まれたての胚みたいに満たされ、規則正しく、安らかで健やかな脈動を刻む。
エールを贈る。
湧き出る生命力の源泉。寄せては返す命の波。からだじゅうの、あらゆる組織が洗われ、栄養され、保護され、いやされ、あたためられ、元気になる。充分に、すみずみまで満たされ、無限にあふれだす泉。
胎児は、まさしく、母なる海のなかで、全身に命のウェイブにまみれて、すごしていたのだな。
リクもコツメも。かつては、わたしも。
その素晴らしい記憶を、自分につながる大きな力を、思い出せ。
CV4に重ねる。自分も一体になれる。
子供たちは、思わず、手を離しそうになるくらい、すごい波がくるので驚く。
蝶形骨にふれるのは、クラニオの醍醐味。
テーマパークの体験型アトラクションで、バーチャル空間に飛び出していくマシンの操縦桿をにぎっている感じがする。宇宙だったり、深海だったり、未来空間だったり。
リリースは、花が開く感じ。
もしくは、グラグラする危険な場所から、安全な場所へ着地する感じ。</i>
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セッションの最初に、律子さんに問いかけた答え。
わたしの温泉は、仙骨からあふれていて、それは、子宮とも卵巣とも乳房ともちがっていて、この場所が涸れないこと、潤いをなくさないこと、呼吸をやめないことが、女性のもつ抗いがたい魅力なのですねと。
死ぬときに最後に動く骨が仙骨だという。
* * *
セッションの最後は、いつも歩く。セッションルームの大きな鏡の前を何往復も。
「コツコツコツと、仙骨に響くのがわかりますか? 右、左、右……」
「はい」
大きくうなづいていた。
新しく生まれた仙骨に、大地から 「今」 のノックがとどく。
浜田えみな
転載したブログ記事の全文
女性のからだ講座