コツメ(注:長女八歳)、『ケロロ軍曹』って見たことあるやろー?」
「うん」
「コゴロー(556)って、出てきた?」
「うーん。わからん。どんなん?」
「なんかな、変身するねんて。ほんで、そんときな、“ゆちゃく!”って言うねんてー。知ってる?」
「知らん……」
(がっくり!)
(「“ゆちゃく”って、なんのこと?」って、聞いてみたかったのに!)
「てんちゃん(注:夫)、『ケロロ軍曹』知ってる?」
「うん」
「コゴロー(556)って知ってる?」
「それは、わりと新しいキャラクターちゃうか。知らんなあ。どんなん?」
「なんか、変身するとき、“癒着!”って言うねんて。そんなん言って変身する人、覚えてない?」
「知らんなあ」
「ほな、『宇宙刑事ギャバン』って知ってる?」
「知ってる」
「宇宙刑事が変身するとき、“蒸着!”って言うん?」
「そうそう!(…変身するときの仕組みを長々と説明してくれたけど割愛)」
「で、ケロロ軍曹のコゴローは、そのパロディーで “癒着!” っていうらしいねん。「蒸着」は、真空の、メッキ塗装みたいな用語やから、ギャバンでは正しい用例やと思うけど、ケロロ軍曹の「癒着」は、そもそも、意味がちゃうやん。ケロロ軍曹見てる子らって、宇宙刑事なんて知らんねんから、パロディなんて、わからへんやろ?
“ゆちゃく”がそういう言葉やって思ってまう子もいるやろ? そんなん、ええんかなあ」
「ケロロ軍曹は、そんなん(いろんな作品のパロディが)多いねん。子どもも観るけど、その年代の(パロディだとわかる)人も、けっこう観てるねん」
「子どものアニメを???」
『ケロロ軍曹』のキャラクターは知っていたが、ストーリーは知らなかった。調べてみると、あのカエル(のようなもの)は、なんと、「地球侵略」をしにきた宇宙人(ケロン人)らしい。
「癒着!」 が、どうしても観たかったので、ユーチューブで観た。
「ケロロ軍曹」はカエルだったので、「コゴロー」も、人間以外のものだと思っていたら、見た目は人間だったので、びっくりした。
いつ起こるのかと、ドキドキしながら観ていたら、確かに、変身するとき、画面いっぱいの「癒着(漢字のテロップ付き)で、叫んでいた! コゴローは「宇宙探偵」なのだそうだ。宇宙刑事の試験に何度も落第して、なれなかったらしい。
* * *
「癒着」って、なんだろうな。
本来、くっついてはいけないものが、くっつく場合に使われ、いい意味では用いられていない。
ではなぜ、「癒し」という字が使われているのだろう?
そもそも、「癒し」とはなんだろう?
癒えていく(治っていく)手段、癒していく(治していく)状態を表すのだとしたら、おかれているのは、傷ついた状態、よくない状態だ。「心」という字が入っていることが、カギなのか。
* * *
ついでなので、「蒸着!」も、ユーチューブで観た。
かなり、難易度が高いことがわかる。インナーマッスルが機能して、ブレがなく、からだのミッドラインが、しっかり通っていないと、絶対にふらつくだろう。昔のヒーロー者の役者さんは、ちゃんと体を鍛えているので、ピシっと決まって、すごいなあ。
それにしても……。
「蒸着」?
こんな難しい言葉で変身していたなんて! テレビを観ていた子どもたちは、どう感じていたのだろうな。告白するけど、わたしは、この言葉、生まれてから、一度だって、使ったことも耳にしたこともなかった。
「蒸着」とは、地球に送りこまれた宇宙刑事が、コンバットスーツ装着コード「蒸着」を発すると、特殊軽合金が電送されてきて、からだに吹き付けられるようにスーツを構成し、0.05秒で装着を完了するらしい。
そのオマージュが、宇宙探偵の発する装着コード
「癒着!」
ケロロ軍曹、やってくれます!
* * *
言葉がいろいろなもので、おりなされ、くるまれていることがわかった。
いろいろなものを、引きよせて、拡がっていくこともわかった。
伝え手から離れた言葉は、受け手のものだ。
元気になることも。おちこむことも。
喜んで受けとることも。あるかどうかもわからない「裏」を探すことも。
傷つくことも。癒されることも。
引きよせているのは誰?
じゃあ、言ってみよう。
「癒着!」
一瞬で「癒し」を「蒸着」する魔法として。
「癒し」を集める言葉として。
癒しの数珠つなぎ。癒しのてんこもり。
「癒着!」
声に出してみよう。
どこにいても。どんなときも。
「癒着!」
受けとるときも、伝えるときも。
癒しの数珠つなぎ。癒しのてんこもり。
どこにいても。どんなときも。
0. 05秒で、全身が「癒し」につつまれる。
ほんと?(笑)
浜田えみな