「電気自動車って、何だ?」 Emileのコラム247 | 地球村研究室

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厳しい地球環境制約の中で心豊かに暮らすには?沖永良部島で実践しながら考えたいと思っています!!

今年の梅雨は中休みが多くて、有難い。今日も中休み・・・ 朝ジムの帰りにパチリ。一面のヒマワリが夏を呼んでいるような・・・

 

欧米では今年に入ってから、電気自動車の売れ行きが急速に鈍化してきた。何故か、電気自動車のメリット・デメリットを少し考えて見ようと思う。

 

電気自動車は大きく3種類に分類される。電気を燃料にモーターで駆動する電気自動車(EV)、電気とガソリンを燃料にモーターとエンジンで駆動するハイブリット車(HV)、水素を燃料にして電気をつくりモーター駆動する燃料電池車(FCV)だ。さらに、HVは外部からの充電は出来ないが、それを可能にしたのがプラグインハイブリット車(PHV)だ。

 

EVの最大の問題は、電池のエネルギー・質量密度が低いことだ。中型車のデーター例では、600km走るのに、ガソリン車では29kgのガソリンで充分だが、EVでは370kgものリチウムイオン電池を積まなくてはならない。その結果、乗用車であれば、ガソリン車に比べて平均して400-800㎏重量が増加する。さらに重量増によるタイヤの粉塵問題もある。海洋中のマイクロプラスチックの28%、大気中では70%以上がタイヤの摩耗紛と言われており、これが増加する可能性も危惧される。

 

バッテリー価格が下がらないことも問題になっている。主力のリチウムイオン電池の原材料は主にコバルト・ニッケル・リチウムであるが、リチウムの供給元は南米のチリ、コバルトはほとんどがコンゴ民主共和国 (ニッケルはインドネシアやフィリピン)で、供給量に限界がある。すでにリチウムは21-22年で7倍に価格が上昇、さらにその精製の約8割が中国に抑えられており、EVが普及すれば価格はさらに上昇する可能性が大きい(EV価格の約4割がバッテリー)。

 

環境負荷から見ても、中型車で比較したデータでは、EVの生産時のCO2換算環境負荷(環境負荷)はガソリン車の約2倍、日本の場合、約11万キロ走って環境負荷はほぼ同じになり、それ以降はEVが優位であるが、16万キロで電池を交換すると、EVの方が環境負荷が大きくなる。

 

EVは結果として価格も高くなるため、普及のための補助金制度があるが、昨年末にドイツは予定を1年早めて終了、フランスはアジア系(主に中国)EVには補助金の適用をしないことを決めた。

 

世界を牽引するEUの状況を見ると2021年7月、2035年以降の新車登録をゼロエミッション車(走行時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない車両)に限定する方針を示した。ゼロエミッション車にはEVとFCVなどあるが、実態としてEVを念頭に置いた。23年2月にこの案は可決され、3月の閣僚理事会で承認される予定であったが、ここにきて、ドイツが「ゼロエミッション車にカーボンニュートラル燃料(e-fuelイーフューエル)で走行する内燃機関車を含めない限り、法案を支持しない」と表明し、一転して2035年以降のエンジン車の新車販売が条件付きで認められることになった。e-fuelとは、CO2と再生可能エネルギー由来のH2を合成して製造される合成燃料で、ガソリンや軽油をつくることが出来る。ガソリン車と同様、走行中はCO2を排出するが、燃料製造時の環境負荷はカーボンニュートラルなので、これを相殺できるとした。

 

これらの結果、EUではEVの勢いが徐々に鈍化し、今年の1-3月の販売台数を見ると前年に比べ微増しているものの、市場シェアは12%と前年からほぼ横ばいとなっている。これに比べ急激な増加に転じているのがHV車であり、シェアは29%にも達している。無論、HV車が2035年以降も存在できるかどうかはe-fuelの開発にかかっている。ただ、フォーミュラー1(F1)の26年レギュレーションでは、燃料は電池とe-fuelのみが認められることが決まっており、開発競争はすでに熾烈を極めている。

 

さて、EVのデメリットばかりが目立ってしまうが、従来の延長では無いモビリティーの在り方という視点では面白い挑戦にもなる。充電を再生可能エネルギーで賄えれば走行中の環境負荷は大きく減ずることが出来る。エネルギー・質量密度が低いのであれば、そもそも容量の大きなバッテリーを積まず短距離専用小型車にする、ガソリン車に比べ低速で大きなトルクが出るので、スタート・ストップの繰り返しにも有利になる。

 

こう考えると、1-2人乗りの軽トラにもなるようなモビリティーが生まれれば、EVのメリットを最大限生かせるとも思う。特に離島の新モビリティーには最適ともいえる。こんなモビリティーが走っていれば、誰もが憧れる島にさらに一歩近づくような気がするのだが・・・