✅ 移住する前にも毎年島で正月を楽しんでいたので、島での正月が28回目になる。過去27回は快晴の元旦を楽しみ、島一周が恒例になっていたのだが、73歳になった今年はついに雨の元旦・・・・ でも、その隙間に見えた虹が何とも美しかった。
✅ コラム265
年末に体調を少し崩し、寝込んでしまった。3日間、ひたすらに眠り、元気に回復したものの驚いた。体内年齢が、たった3日間寝込んだだけで5歳も劣化していたのだ。齢を重ねて入院すると歩けなくなる…という話はよく聞くが、その一端を経験することになろうとは・・・
人間の寿命が、55歳程度であることは、最近の研究でより明らかになってきている。そして老後を持っている哺乳類は人間を含め3種類しかいない、他の2種類は鯨だ。55歳を超えると、体力も免疫機能も急激に劣化し、疾病に遭遇する機会も急増する。
ハーバード大学が、良き人生を送るために必要なことを24年間にわたって追跡調査した結果が公表された。もっとも重要なことは「良き人間関係」だそうだ。そしてそのためには、①寛容であること、②ダンスのステップを覚えること(苦手だと思っていたことにあえて挑戦すること)、③好奇心を持つことだという。さらに、この3つに運動することを加えれば、体力の劣化を遅らせ、脳細胞が増えることも分かってきた。
一方では、そんな面倒くさいことをしなくても、最先端科学を用いて・・・ ということも現実になってきた、ゲノム・テクノロジーだ。ゲノム・テクノロジーは、膨大な遺伝子情報「ゲノム」を解析し、人類の意図通りに書き換える先端技術で、「がん」などの疾病に対する治療法として期待されているが、操作次第では人間の能力を過剰に拡張できる。例えば、人体の遺伝子を直接編集することで、運動能力を飛躍的に高める「遺伝子ドーピング」などの能力拡張が可能で、さらには、未来の子供への願望も内包される<デザイナー・ベビー>という、遺伝子編集した人間を誕生させる手段にもなり得る。
人間には、長い歴史が明らかにしているように優勢思想が存在し続けている。白人至上主義、ナチスによるユダヤ人の迫害など枚挙にいとまがない。このような思想の中で、最初は脳力の一部だけを拡張する試みが、さらなる拡張を目指し、ついには生まれた時から理想的であることを求めるようになると、「デザイナー・ベビー」を生み出すことに歯止めが利かなくなる。まさに自らの終焉のシナリオを始動することになるのだが、理性はそれを食い止められるのだろうか?
人工知能(生成AI)の世界も同様な危険をはらんでいる。脳には、記憶や知覚のような直感的な「速い思考」と論理的、意識的にじっくり考える「遅い思考」が存在するという。現在のAIは、「速い思考」を得意としているが、これだけでは人間の知能レベルには及ばない。要するに無から有は生み出せないのだが、膨大な量の「速い思考」と「遅い思考」を学ばせることにより、これらを対として答えを出せる可能性が見えはじめている。
今のところ、AIの人間化が当面の研究の目標になっているが、それがあるレベルを超えるとどうなるか? AIにとっての人間化はマイナス要素、足手まといになり、人間の知能から学ぶべきものが無くなるにつれ、AIは独自の成長を目指すことになる。すなわち、人類は「退化」の道を歩み始める。
すでにAIは身近な存在になりつつあるが、人間は「問い」の設定以外はAI任せで、自分の頭で考える機会をどんどん失ってゆく。AIが出した解を採用することが増えるにつれ、人間の思考を経ない解となり、同調化が進む。「退化」のドアはもう開けられているのだ。
確かに、ゲノム・テクノロジーにより、20歳代の身体に戻ることは可能になり、AIによる外部知能化により、聡明な知力を持つことが可能な未来はすぐそこまで来ている。一方では、立ち上がるにも「よっこらしょ」と声が出るし、物忘れも頻繁に起き始める人生、どちらが正夢であって欲しいのだろうか。
齢を重ねるにつけて劣化する体力を運動することにより少しでも遅らせ、たくさんの活字を追い、考え、論考を重ねることで脳の劣化を多少でも遅らせる努力を続け、抗い続けても劣化して行く脳と体を愛おしく思い続けられる人生の方が自然の大きな循環の中で暮らす人間には素敵に見えるのだが、人間も自然の一部なのだから・・・
