大ベテランが、現役を引退する決意を固めた。地方のトップ騎手から、ルールの壁を越えてJRAへ移籍したパイオニア的な存在、安藤が1976年に東海公営の笠松でデビューして以来、37年にわたるジョッキー人生に別れを告げる。
移籍後6年連続して年間100勝をマークしていたベテランも年齢から疲労も考慮して、09年後半から騎乗数をセーブ。しかし、昨年の夏以降は体重面の調整なども難しくなり、競馬に騎乗しない週も増加した。パドトロワに騎乗した昨年11月24日の京阪杯(15着)を最後に、手綱を執っていなかった。その去就が注目されていたが、関係者への取材で今月15日から17日まで行われた栗東での騎手免許更新の手続きを行っていないことが判明。騎手免許の期限は2月28日までとなっており、この日が52歳の名手の事実上の引退となる。
同騎手は76年に16歳で笠松で騎手デビュー。“怪物”オグリキャップの鞍上として知られ、95年の報知杯4歳牝馬特別(現報知杯FR)をライデンリーダーで制した時に「中央のG1を勝ちたい」との思いにかられ、地方騎手にも開放されたJRA騎手試験を受験。01年は不合格だったが、JRAが「過去5年間で中央競馬で年間20勝以上の成績を2度以上挙げた騎手」の1次試験を免除する試験要項の改定を行った翌02年に合格した。03年3月1日に中央でデビュー。30日目には、いきなり高松宮記念(ビリーヴ)でG1初制覇を達成するなど華々しい活躍を見せ、翌04年にはキングカメハメハでダービーを制覇。“アンカツ”の名を世間に知らしめ、これまでにJRA・G1で22勝を含むJRA重賞81勝(笠松時代の10勝も含む)を挙げているが、昨年は騎乗回数はわずか153回で14勝をマークするにとどまっていた。
しかし、安藤の活躍の後を受け、小牧、岩田、内田ら多数の地方出身騎手が中央の門を叩き、今も活躍を続けている。42歳で新たな世界に飛び込み、先駆者となったアンカツ。大きな足跡を残した名手が、静かにムチを置くことになった。