HIV訪問看護~カンボジア~最終章 | 本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

HIV訪問看護~カンボジア~最終章


これがカンボジア最後の日記となります。


4日目午後。

今回の旅行で一番とも言える意味ある経験を。




本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

アンコール小児病院で訪問看護を担当される

赤尾和美看護師ともう一人の看護師さんとともに


訪問看護へ行ってきました。


今回も患者さんのお顔は写しておりません。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

トゥクトゥクで走っていたような道とはまるで違い、

四駆の車でガタンガタン揺れながら。


途中、田んぼに落ちそうなところがあり

一度車を降りて足場を確認して誘導しながら進んだり、


橋が狭くて渡れず、車を降りて民家まで歩いたり。


ここは決して田舎ではなく

観光スポットから一本路地に入ったところ。

そんなところがこんな現状とは。


小さな村がいくつもあるのですが、

赤尾さんいわく、貧しくても整然としている村、

対して、秩序のない村があるそうです。

確かにその差は歴然でした。


つまりそれは貧困の中にも生活レベルや教育レベルの違いがあるのだとか。



私もさやちゃんもどんどんと緊張が高まり、

赤尾さんに数々の質問をし、お話を聞きながらも

だんだんと手に汗をかいてきました。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


まず一軒目。


ところが肝心の患者の子供が不在でした。

家族を支えるために出稼ぎに出掛けてしまったとのこと。


本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

お父さんにその子供の様子や

渡してある薬をちゃんと飲んでいるかなどの問診です。


2時間置きに飲まなくてはいけない薬。


この家にも時計があったけれど止まっていました。

多くの親たちは時計が読めません。


赤尾さんは、まずこの時計の読み方から指導するそうです。

とっても気が遠くなりそうな仕事。

だけど丁寧に指導されていました。



ちなみにこの訪問看護で診る患者の子供たちは

HIV感染者です。





本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba



やせ細った犬たちや、ニワトリ、ヒヨコが沢山うろちょろしています。

そしてとても不衛生な8畳くらいの床が穴だらけのこの家には

13人が暮らしていました。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


そして二軒目。



赤尾さんたちが到着すると家族総出で

この家唯一の衛生的に見えるゴザと、座るための椅子を用意していました。

敬意と感謝の表れですね。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

ここでも問診・触診、

そして食べ物の提供とともに、その食べ方の指導からされていました。




本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

この子もまだ幼稚園くらい。

もちろん幼稚園なんて通えないし、

言葉もきっと家族との会話程度しか覚えていないと思います。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


HIV感染のほとんどは垂直感染(親からのもの)だそうです。

ですから既に両親のどちらかは亡くなっているか

または両親とも亡くなっているケースが多いのです。


そして沢山の兄弟がいても一人だけが感染していることもあれば、

他の兄弟も感染している可能性があるかもしれないので、

一度検査を受けるように勧めても、親の判断で

「この子は大丈夫だから」と拒否することもあるそうです。


またある子は、胸全体に真っ赤な擦り傷のような跡が。

これはカンボジアの風習で、コイニングの跡だそうです。


コイニングとは体の悪い部分から「悪」を追い出すために

コインで思いっきり何度も何度もこするのだそうです。

それで内出血を起こし赤くなっているのでした。

見て聞いて、痛くて仕方なかった。



教育されていない自己判断が、

小さな命を落とす原因になるのだと思います。


さて。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

「キミタチナニモノ?」


そんなことを疑問に思っているかのように

この一匹の子だけ、何度も私たちのところに来ては

お母さんに追い払われての繰り返し。



そんな光景が、笑ってはいけない状況でもちょっと可笑しく・・・。

しかし、その真横ではHIVに感染した小さな男の子が

自分に何か深刻なことが起きていることを察しながら

不安そうな表情で赤尾さんの言葉にだまってうなずきながら聞いていました。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


そして3軒目。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

この子は患者さんの兄弟です。

診察されている同じくらいの歳の兄弟の横で

無邪気にはしゃいでいました。


やんちゃで可愛かったです。

鬼ごっこをして私が見つけたら奇声を発して喜んでました。


そう、どんなに貧しくてもどの家庭にも笑顔があるんです。

それがまた切ない・・・。




本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


ここでは看護のあと、

赤尾さんがお母さんたちと何やら歓談のような雰囲気で

楽しそうに話をしていました。

そして時折真剣に。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

帰りの車の中である質問をしました。


「この人たちの恋愛(結婚)事情はどうなっているんですか?」


何故こんな質問をしたかというと、

同じ兄弟でも全然似ていなかったりと疑問が多かったからです。

それに兄弟の数も多いので。


この質問はどんぴしゃりだったみたいです。

どういうことかと言うと、

ここでのお母さん達と赤尾さんの会話は、旦那さん達のことについてでした。

貧しい家庭ではやはり性のモラルも低く、

一夫多妻制のように次々と家庭を変えていく父親たちがいるそうです。

もちろん婚姻届のようなものはないに等しい。

そんな中でも人であり女ですから情が生まれ

帰ってきた旦那さんと復縁したり、と事情は様々。

感情に押し流されず、自分を守るべきだとアドバイスしたのだそうです。



訪問看護にはこうした会話が意味のあるところだ、と赤尾さんは仰っていました。

どんな家庭環境からHIVが感染したのかを知ることができ、

それを改善するためのアドバイスができるのだそうです。


避妊についても詳しく説明をされたそうです。

看護だけでなく、こんなコミュニケーションが必要とされるお仕事は

本当に大変だと思いました。


それでも何故この地に12年という歳月を費やしているのかと尋ねると

「楽しくて仕方ないの」と笑顔で答えられていました。


そして何より子供達の目が輝いているからと。

生きるために必死な目をしているって。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


そう、こんな目です。

この子たちは患者さんの兄弟。


私たちが持って行ったプレゼントを

しっかり握りしめ、ずっと笑顔で接してくれました。

この子たちのスマイルは忘れられません。


そして最後には日本語で

「さようならー!」と遠くから大きな声で叫んで手を振ってくれました。


本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


胸が熱くなって私もさやちゃんも精一杯バイバイして

おうちを後にしました。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

最後の四軒目。


体重測定から。


この体重計は移動中、車の振動で壊れないように

赤尾さんがしっかり抱いていました。


病院を出発する前に自分の体重を測るそうです。

そして子供達の計測の前にもう一度自分が乗って壊れていないかを確認するために。


子供達の微妙な体重の変化は見逃すことができません。


そうした細かい部分までも気を配り、

精密で正確な看護を志されていることを感じました。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


日本のようにある程度患者やその家族に知識や常識がある環境で指導するのとは

ワケが違います。


でも、小さなことから根気よく、相手の立場に立って分かりやすくアドバイスする姿に

心から感動と尊敬をしました。


そして、そのアドバイスを親ではなく子供自身が理解し、

きちんと話を聞いている姿。


本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

これぞプロフェッショナルです。


まして赤尾さんは日本人。

距離を縮めるまでの努力は相当のものだったと思います。


ある時は茶色い水を出されたことがあったそうです。

でもここで断ったら・・・と思い、喜んで飲んだそうです。


こうして今では訪ねてくる赤尾さんを子供達は楽しみに待ち、

信頼を寄せています。



本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba

そんなエピソードが書かれている赤尾さん著書

「この小さな笑顔のために~日本人ナースのカンボジア奮闘日記~」


良かったら読んでみてください。

この地で起きている日本では決してあり得ない現状を知ることができます。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


これで訪問看護は終わりです。



この子たちが小さな手を合わせて

「ありがとう」という言葉には、挨拶を超えた本当の感謝の気持ちがこもっていました。


そして今度はいつ来るのかと楽しみに、でも不安そうにしている子供達。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


私たちはきっと普通ではできない貴重な経験をさせていただきました。

観光だけでも素晴らしい国だけれど、

この現状を垣間見るチャンスに恵まれたことを

赤尾さんに感謝します。


滞在していたのはたったの丸3日間。

(5日目の朝には帰国していましたから)


カンボジアを語るにはまだまだ何も知らないですが

言いかえれば、3日間でもこのような現状を知ることができたのは

それだけ貧困がはびこっているからです。




本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


最後赤尾さんに

「私には何ができますか?」

と尋ねたら、


「一人でも多くの人にこの現状を知ってもらえるようにしてくれたらいいです」と。


ですので、見たこと、聞いたこと、感じたことを

そのまま書き綴りました。


薄っぺらく感じた文面があったらごめんなさい。

でも、写真や、エピソードから何かを感じ取っていただけたら嬉しいです。

本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


この輝く瞳から学んだことを

これからの人生を導くものとして、大切な宝として心に残していきたいです。




本橋恵美オフィシャルブログ「本橋恵美からありがとう」Powered by Ameba


さやちゃんはいつの日か番組で取り上げられたらいいと話していました。

一緒にこの体験ができた彼女にも感謝と、

そして目に見えない強い絆が深まったことを嬉しく思います。


そして赤尾看護師、

ご協力してくださったアンコール小児病院の皆さま、

本当にありがとうございました。


そして長い長いブログを最後まで読んでくださった皆様にも感謝いたします。


また翌日から普通の生活に戻った私。

でもきっと何か小さな変化が起きたことをこの数日感じています。


この恵まれた環境の中でやっていかなければならないことを考えながら

今ある仕事や家族や友人を大切に

頑張っていこうと思います。


色々な国を旅しているとよく、

「どの国がおすすめ?」

と聞かれることがあり、いつも迷っていました。


でも今は間違いなく

「カンボジアに一度行ってみて」


と答えられます。

皆さんも良かったら訪ねてみてください。



カンボジアのすべてに感謝。

ありがとう。



本橋恵美


アンコール小児病院をサポートする

friends without a border JAPAN

http://www.fwab.jp/


支援の方法は様々です。

物資・金銭的な支援だけでなく、お一人でも多くの方になにかきっかけがあったとき

是非お話してくださったら嬉しいです。