「あのぉ~、ドアが開かないんですけど」
ある日の晩、そんな内線がかかってきました。
時は夜の8時頃。
これからがチェックインのピークという素晴らしく忙しい時間帯。
それなのに厄介な電話がきたもんです。
でも、思えばこの電話はこれから始まる事件の
ただの序章でしかありませんでした。
うちのホテルはオープンしてからまだ一年しか経っていない
とても新しいホテルなのです。
つまりは、設備はすべて御歳1歳のベビーちゃん。
まだまだガタがくるお年じゃございません。
まさかドアが開かないなんてことはありえないだろう、
しかも内側から開かないなんてそんな馬鹿な話はないだろう、と
タカをくくっていました。
しかし、電話をくれたのは
オープンして以来週に3日くらいは滞在している
超常連さん。
ドアの開け方を知らないわけはありません。
内鍵のかけかただってもちろん熟知しているわけです。
こちらの説明だって的確に判断してくれるし、
お客さんが狂言をしているとも到底思えません。
これは何か大きな事態になりそうだ・・・。
何度も言いますが、うちのホテルは御歳たったの一歳です。
つまりはルームキーもセキュリティー万全の最新の物、
非接触型の磁器カードを使っています。
もっと端的に言うならば、
機械に詳しくなければ
ただのフロントクラークなんかでは簡単に開かない仕組みになっているんです!!
時すでに夜の8時ということで、
鍵の業者は既にみんな退社をされているのか、電話に出てくれません。
携帯電話に電話しても、もちろん繋がりません。
仕方がなく鍵の救急車に電話をかけるも、
一番早くて9時の到着だと言われました。
1時間もお客さんを閉じ込めておけというのか!?
しかし私たちフロントクラークに出来る事はほぼなし。
仕方がなく彼らの到着を待つことにしました。
何もしないわけにもいかないので、
私が業者とやり取りをしている最中、支配人はお客様の部屋へダッシュ。
ドアをはさんで外から内から様々な事を試したものの、
鍵はまったく反応を示さず、ドアは開く気配がなかったそうです。
そんなドアをはさんでお客様に事情を聞いたところ、
お腹がすいたから外出しようとしたところドアが開かなかったとのこと。
では窓から何か食料を運び入れよう!と目論んだのも束の間、
角部屋だったことから両隣の部屋の窓からは手が届かない。
上の階の客室は既にお客さんが入っていて使えない。
にっちもさっちも行かなくなっていた頃、
時は9時半にしてようやく業者と鍵の救急車がやってきました。
これでようやく終わる・・・・・・
と思ったのははかない夢と散りました。
業者が到着して早1時間。
何をしてもドアが開かない、つまりは鍵が開かないという状況になりました。
さて、困った。
お客さんの空腹も限界に近づいていたようです。
これはドアを壊すしかない、と支配人が決死の覚悟を決めました。
しかしながら、何度も言いますが御歳1歳なんです。
頑丈なんですよ、とっても。
分厚いドアなのでどんなにドリルを使っても全く刃がたちません。
それどころかドリルの刃が折れてしまいました。
ちょっとだけ空いた穴からトンカチやらペンチやらを使い
無理やり壊し始めましたが、
この時点でもう11時。
もう他のチェックインも終盤を迎えていましたので、
大きな音をたてれば休まれるお客様の迷惑にもなるし、
移動してもらう部屋の確保もしなくてはなりません。
しかし、事件が起きる日に限ってうちは満室なんですねぇ。
部屋を確保するのも至難の業。
さて、そんな地道な作業を続けて午後11時半、
最初の電話を受けてから3時間半が経ち、
ようやくドアの破壊に成功し無事お客様を保護いたしました。
新しい部屋を用意し、荷物を運び終え、ごはんの準備もして
私たちの仕事もようやく終わりました。
事件が起きてからはや2ヶ月近くが経ったいまも
ドアの修復はできていません。
よっぽど頑丈なドアだったんだな・・・とドアの残骸を見ながら思うj今日この頃。
話題のヒ○ーザーなどが建設したホテルだったら
もっと簡単に事件は解決したかもしれない・・・。