ユナイテッドシネマ札幌の8番スクリーンにて鑑賞。
観客は20人ほどでした。
今年のアカデミー賞で音響賞と国際長篇映画賞を獲得した本作。
元々あまり興味はなかった作品でしたが、「音響賞を取ったこと」が今回観に行くきっかけとなりました。
なんとなく音響賞って、ドンパチやるようなアクション映画が受賞するようなイメージなんですが、本作は予告編を見る限りそういう内容ではなさそう。
「アウシュビッツの隣で生活する一家を描く」というストーリーで、どうやって数あるアクション映画を抑えて受賞したのか。
音を楽しむには映画館が一番ですから。
一体どんな音がするのか、楽しみに観に行ってきました。
関心領域( The Zone of Interest )
公開日:2024年5月24日
ジャンル:戦争/ドラマ
上映時間:105分
「夫があんたを灰にして、
そこら中にまき散らしてやるから」
(観た感じの)あらすじ
第二次大戦下、アウシュヴィッツ強制収容所の隣に住む主人公一家を描いた作品。
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以上。
感想
えげつない…
とんでもない映画でした。
映画館でここまで衝撃を受けた経験はなかったかもしれない。
内容としては↑のあらすじのまんまでして。
もうあれしか書くことがないっていう。
幸せそうな一家の様子が描かれています。
しかし、場所が場所なんだよな…
異様な家族
夫は収容所の所長で、妻は色々とヤバいし、子供は何も知らないという。
彼らがユダヤ人に一体何をしているのか。
多分「アウシュヴィッツの隣」という設定がなかったら、まるで分からないような演出でして。
それくらい彼らが無関心であることが分かりました。
特に、妻はなかなかのサイコパス。
歯磨き粉の中からダイヤを見つけたり、誰のかも分からないコートや口紅など、徹底的に搾取しようと必死でした。
ユダヤ人を召使いにしたり、家への固執という面から、ホロコーストを完全に受け入れていることが分かります。
子供はしょうがないとしても、この一家はみんな狂ってる。
映像の不自然さ
これは観る前から知っていたことなんですけど、本作の映像は監視カメラのような固定映像となっています。
監督が役者さんの自然な演技を再現するため、セットのあちこちに隠しカメラを仕掛けたそうです。
実際に役者さんを追って撮るようなカメラワークがないため、観客はまるで一家の生活を覗き見ているような感覚になります。
これが本作のリアリティを支えていると思うし、それと共に不気味さも増大させているのではないかなと。
ただね、自然といってもカメラはあちこちに設置されているわけで、俳優さんたちはイヤでも意識するわけですよ。
そりゃ映画の撮影だから当たり前ですよね。
「カメラの存在は知っているけどあえて無視する」というこのポイントは、作中のユダヤ人と重なるんじゃないかな。
つまり、カメラの向こう側にいる僕たち観客も、ユダヤ人のような存在ということ。
こりゃ凄い。
直接触れない収容所について
「家の隣にアウシュヴィッツ」という、収容所の壁や建物が背景に映りこむような場所であるのにも関わらず、本作では収容所内の映像は全くありません。
中で何が起こっているのかは、登場人物のセリフや音からしか伝わってこないのです。
これもなかなか上手いと思う。
視覚的に見るのはもちろんキツいけど、あえて直接見せないことで、養豚場のように扱われる収容所の存在やかすかに聞こえる悲鳴や銃声に対し、観客は余計に注意が向きます。
「ホロコーストで何が起こっていたか」ということは、多くの人がなんとなく分かっているわけで、「多分こういう事なんだろうな」と察することができるんです。
こういうのが当たり前のような映画。
多分今だからこそ公開できたのかもしれない。
音は凄いというよりかは怖かった
今回一番気になっていた音響について。
多分ポイントだったのは、収容所内から聞こえる様々な音だと思います。
ドイツ語でなにか指示している声や悲鳴、逃げ回る音、銃声など。
制作には、実際に家と収容所の距離などを基にしたそうです。
「この距離だったらこういう風に聞こえるよね」というように。
なので、僕たちが聞いていたのは実際に聞こえていた音なのかもしれません。
怖すぎる…
また、エンドクレジットときたら!
ガチで、怖かったです。(>_<)
不協和音というか、不安を掻き立てるような音楽が流れるんです。
正直身動きができませんでした。
ちょっとこれは、観客が少ないとビビるレベル。
20人いて良かった。
いや~、これは観に行って良かった。
凄い映画でした。
本作を観てNHKの「映像の世紀」を思い出しましたよ。
いつだったか第二次世界大戦を扱った回。
ドイツが降伏し、国民はアウシュヴィッツの惨状をようやく見て「知らなかったんだ」と言ったそうです。
しかし、解放された収容者はこう返しました。
「いいや、あなたたちは知っていた」と。