アメリカ生活数年経って、ようやく、店での会計場面にも緊張が少なくなってきました。

英語でどのようなやり取りをするかがわかってきたので、構えることなくレジに向かうことができます。

 

"Hi, how are you?" 

"Good, thank you. How are you?"

のような挨拶から始まり、

"Find everything OK?"

"Yes. Thank you for asking."

のように、お決まりのやり取りもスラスラできます。

 

そして、慣れない頃は質問されても聞き取れないし、答え方がわからず冷や汗をかいていたこのやりとり。

 

"Do you have a reward membership with us?"

(もしくは、"Do you have your phone number with us?"と電話番号からメンバーシップの有無を確認されることも。)

 

"Yes"と答えたら、電話番号を聞かれます。

"No"と答えたら、メンバーになると〇%割引になってお得ですが、どうしますか?と聞かれます。

私はほぼ毎回断ることになるのですが、そのときは、

"No, thank you. Maybe next time."とか"Not today, thanks."

と答えています。

 

このやりとりも、今では緊張せずにできるようになりました。

 

ここまでくると、あとは支払いをして、

"Thank you. Have a good one!"など挨拶して終了。

(支払い前に"Do you need a bag?"と聞かれたり、支払い後にレシートを袋にいれておきますね、と言われたりすることも。)

 

ところが!

先日、家族とある服屋さんに買い物に行ったとき、私は再び冷や汗をかくことになったのです。

 

メンバーシップのくだりまでは、スラスラといきました。

あとは、カードで支払いして終わり…と余裕でいた私に、店員さんが何か言ってきました。

「え?」

咄嗟のことに、私の頭の中はプチパニック状態です。

 

支払いをするだけのこの場面で、店員さんは一体何を言ってきたのだろう?

わからない。

全然聞き取れなかった。

 

突然のことに、私は、慌てて後ろにいた夫に助けを求めました。

 

店員さんは、「店でお得に使用できるクレジットカードを作りませんか?」と言っていただけでした。

落ち着いて、"Sorry?"とか"Could you say that again, please?"とか聞き返し、再度言ってもらったら自分で聞き取れたかもしれません。

 

情けない話です。

 

元英語教師であり、英語学習者である私ですが、「わからない!」となってすぐに人に頼ろうとしてしまった…。

そんな精神でいるから英語力が伸びないのだよ、と自分でも思いました。

 

そうなのです。

この「咄嗟に夫を頼った」という場面を後から思いかえして、私は自分の英語の成長を妨げているものに気がつきました。

 

根本的に自分の英語力を信じていないのです。

そして、汗をかいても、醜態をさらしても、自分の力で英語を使って問題を解決する、という覚悟に乏しいのです。

 

自分の英語力を疑っているので、人や物(ネットやアプリ、本等)できちんと確認しないと落ち着かない。

確認できないとしばらくの間ずっと「自分は間違えたのではないか?」と気になってしまう。

今持っている自分の英語力で何とかしよう!とか、何とかなる!と思えないのは、自分の英語なんて大したことないから、どうにも/何もできないと諦めてしまっているから。

 

何ともネガティブな状態です。

 

そして、このネガティブな私を作り上げたのは、アメリカに来てからの「失敗の積み重ね」だと思います。

 

よく、

失敗をしてこそ学びがあり成長することができる、

失敗してもいい、

失敗を恐れるな、

などと言われます。

 

確かに、それはそうなのですが、失敗が連続して積み重なっていくと前向きな気持ちを保つことは難しいのではないかと思います。

少なくとも私には無理です。

 

ああ、またできなかった。

今日も失敗した。

今回もダメだった。

 

その失敗を糧に、成長するために、調べたり確認したり練習したり学んだりするのですが…

また失敗する。

 

やってもダメじゃないか、私。

 

その経験の積み重ねが、「自分を信じられない」「自分では何ともできない」という思考を生み出したのだと思います。

 

ここまで読んでくださった方は、

 

いやいや、最初に書いていたではないですか。

お店での会計時のやり取りの英語はできるようになっていると。

経験を積んで、成長したということの一例でしょう。

 

と思うかもしれません。

 

そうですよね。

私の思考の悪い癖は、細かいパーツを見ないで、大きなくくりで「成功」「失敗」と決めてしまうことなのかもしれません。

会計時の英語やりとりを、始めから終わりまで滞りなく済ますことができれば「成功」。

どこか一部分でもひっかかると「失敗」。

このような考え方では、失敗の数が増えてしまうのは当然のことです。

 

そして、この「成功」「失敗」を決める基準も、自分への理想と期待が高すぎて、実際の自分とバランスがとれていないとも感じました。

 

つまり、「自分はこれくらいできるはずだ。」「できて当然だ。」と心の奥で思っているレベルが高すぎるのです。

自分はできない。自分には自信がない。

そう言いながらも、心のどこかでは、自分への期待が大きくあるし、ネイティブやそれに近いレベルで英語を使いこなす自分の姿を理想として置いているのかもしれません。

だから、そのレベルで英語を使えない自分は失敗ばかりしているように思うのです。

 

そこに気付いたので、最近は、意識して考え方を変えようとしています。

自分への過度な期待や高い理想を一度手放し、自分が思うよりもレベルを下げたところが「現実の私の英語力」だと思うようにしています。そうすれば、「成功」にもっと素直に注目できるような気がします。

 

リスニング練習では「上級レベル」の教材しか使わなかったけれど、「中級」の教材にも取り組んでみようかな。

高校レベルの文法は身に付いていると思っていたけれど、もう一度練習問題に取り組んで見直してみようかな。

綺麗な発音でのスピーキングに意識を向けていたけれど、少し肩の力を抜いて、発音が綺麗でなくても「話す内容」にもっと注目するようにしようかな。

 

高い理想や期待を持つことは悪いことではないでしょう。

しかし、あまりに現状よりも高い理想や期待を持ってしまうと、それが自分自身を「ダメだ」と抑え込んでしまうことになります。

自分の現状よりも少し上を見るくらいがちょうどいいのかもしれません。

そして、その理想や期待を設定するには、自分の今の立ち位置を曇りのない目で見て確認することが必要です。

 

この意識改革で、私の英語力はどう変化するでしょうか。