「入院ジャーナル」 -66ページ目

第1回 貯血祭


場所が股関節だけに、手術で大量の血液が流れる

そうなので、輸血が必要。だけど、人の血は心配だし、
計画入院だけに、手術までに自分の血液を貯めて、
それを使えばいいじゃないか、と。


というわけで、この手術を行う人が手術前に行って
いるのが、貯血。1回400mlの血液を3回採って、合
計1200ml貯血することになりました。


その間、健康診断的な検査もしてくれるのが嬉しい。
フリーランサーになってから、健康診断しなくちゃ
と思いつつ、全然できていなかったので、ちょうど
いいタイミングです。


この日は、胸のレントゲン、足のCTを採った後、血
液検査用に8mlくらい(小瓶2本分)採取して、その
後、貯血でした。


体温、血圧、脈を測った後、献血をする時と似たよう
な小型テレビ付きのリクライニングチェアに座っての
貯血タイム。その間、15分くらいでしょうか。私は流
血速度がどうやら早いみたいです。貯まったMY血が

入った袋を触らせてもらったら、採れたて新鮮なだけ

に、温かい! 生き血とはまさにこのことを言うんだ

といった感じでした。



「入院ジャーナル」-生き血



その後、針の先を点滴に変えて、水みたいなやつを

500ml分in。これが30分少々後、血液をつくる注射

いうのを打つ。これは皮下脂肪に打つものなので、

針が刺さる瞬間よりも、液体が体内に入る時がじん

わり痛い。


最後に血をつくる鉄分を処方されて、おしまい!


はじめての貯血、けっこう楽しめました。


決戦は金曜日! 手術日を決定


医師に体重を減らすことを銘じられていたのですが、
年末年始は忘年会に新年会と、どうしても暴飲暴食
してしまい(言い訳です)、全然減らすことができず…

…。長めに歩くと、やっぱり痛みが出るという症状変

わらずで、キツい時は杖を持つようにしていました。


私「先生、やっぱり手術しようと思って。4月に手
  術したいんですけど」


医師「痛みがあるから、ホントは早くにしたほうが
    いいと思ってたんですよ。4月ね。金曜日で
    もいい?」


私「別に何曜日でもいいですけど(笑)。金曜日に
  手術するもんなんですか?」


医師「僕はね。金曜日が多いの。17日の金曜日は同
    じ手術が入っているから、24日でいい?」



そんな簡単に、手術日って決まるんだと思いつつ、
ということで、2009年4月22日に入院して、24日の
金曜日に手術が決定。


6~8週間近くこの病院に入院し、その後、リハビ
リ入院として転院。同じく6~8週間入院する3カ
月近く入院することが決まる。



私「パソコン持ち込んでも、いいですか?」


医師「かまわないですよ。あなたと同じ年代の女性
    が多いからね。もうみんなパソコン持ち込ん
    で、バリバリ仕事やっちゃてますよ」


先輩たち、頼もしいなぁ。



手術日が決まったら、途端に自由になった気がしま
した。悩まなくていいから。主要クライアントには早

めに休職の経緯と意思を伝えて、4月中旬までは

好きなだけ働こう。働ける。働くことの意味が、輪郭

が、より強く際立って感じられるようになりました。


サードオピニオン

ネット検索によって、臼蓋形成不全をはじめとした
変形股関節治療に評判のいい先生をピックアップ。


手術をするにしろ、定期的に診察を受けるにしろ、
通いやすさも大事だと考え、J病院N先生を選び、

サードオピニオンを受けに行きました。


さすが、大病院だといえるのでしょうか。レントゲ
ンの撮影数が違いました。正面からだけでなく、角
度を変えて何枚も撮影。それをもとに、診察。


大病院だと、ほかに待っている患者さんもたくさん
いるし、3分診療とか言われているし、でもちゃん
と自分の症状は伝えたほうがいいし、といらんこと
に気をつかってしまって、早口で説明しちゃったり
するとこ、ないですか? 私はそうなりがちです。


ましてや、サードオピニオンだけに、話す話題も多
くなるし、何度も同じ話をしなくていけないしんど
さもある(逆に、何度も話せば、話すべき要点がつ
かめるようになる、というメリットもありますが)。
でも、医師は何を重要視するのかわからないから、
どこまで、何を話すべきか、わからない。


その一方で「ちょっと先生、聞いてくださいよ!」と
心情を話したい、という気持ちもあります。なので、
いつも病院に行くと、何をどう話すべきか困るな、
と思っていました。でも、これって「信用」という
こと関わっているんじゃないかと、この先生の診察
を受けて思いました。



どっから話そうかな、と思いつつ、とりあえず過去
に股関節脱臼をしていること、痛み止めを処方され
たファーストオピニオン、「半年以内に手術しない
といけない」と言われたセカンドオピニオンの話を
して、「先生の見立てでは、どうなのでしょうか」と
意見をうかがいました。その間、急ぐでもなく、じ
っと話を聞いてくださったので、あまり焦らず話す
ことができました。


先生の第一声は「半年以内に手術と言われたら、そ
れはビックリしたでしょうね」。


心情を察する一言から入られると、心をつかまれる
もの。もちろん私もガッチリつかまれました(笑)。
症状がどうとか、いつ手術するのかがどう、といっ
た具体的なステップよりも、想定外の状況に戸惑っ
ている、ということが、実は私(患者)が医師に一
番伝えたいこと、わかってほしいことなんだな、と
自分のその時の心境からわかりました。


細かい問診の後に、両足の長さをメジャーで測定。


そして、「手術はいつかしたほうがいいですが、半
年以内と、そう急ぐ必要はありませんよ。手術する
となると入院も必要ですし、仕事の調整もあるでし
ょう。体重を減らすだけでも痛みを押さえることに
なりますから、もう少し様子を見ましょうか」とい
うことで、翌年2月に診察の予約を入れました。

ちょうど大きな仕事を抱えていて、半年以内に本当
に手術をすると決まったら、どうこの仕事を組み立
て直そうか、最後まで責任を持って仕事をすること
はできなくなるのか、と不安だったので、ものすご
くホッとしました。



体が資本、健康第一だということは誰だってわかっ
ている。でも、社会生活を送るには仕事も大事。だ
けど、医療の現場では「身体を治療する」というこ
とだけを見て、その人の家庭や仕事、趣味などの社
会活動といった人生を見ない、気づかわないことが
多い。「半年以内に手術と言ったら、他は知らない。
とにかく手術なの!」と、直接そう言葉にしなくて
も、そんなスタンスで向き合わされると、面を食ら
ってしまう時がある。だから「体が資本ってわかっ
ちゃいるけど、俺には仕事が……」と反論したくな
ったりする。心の底では、自分がいなくても世の中
は回る、とわかってるのに。


「治療は最優先。でも、大切な仕事家族もあるし、
心情もある」と医師がわかってくれているかどうか
って、医師への信頼につながるのだなと思いました。



というわけで、この診察後すぐ、私はこの先生に手
術をしてもらうことを決断していたのでした。いつ
かせざるを得ない手術なら、体力のあるうちのほう
がいいはず。仕事の調整をして一定期間仕事を休む
なら、調整しやすい3月の年度末を区切りに休息し
ようと、帰りの電車の中で、勝手にフルスピードで
計画を立てたのでした。ワクワクの始まりでした。