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前回までの話右差し神帰月のできごと①  神帰月のできごと②

 

色々と個性的な人々右矢印登場人物紹介
 

 

事故で命を落とした父。

警察が入ることになり、遺体は検死に回されることに…。

 

検死には数日かかるかもしれない。

1週間くらいかかった方もいる。

 

そんな話を遥希も葬儀社でしていました。

 

 

でも、何日かかろうと、私は実家に留まるつもりでいました。

これは「我儘」といえば、我儘です。

 

でも、父がいなくなった家で…親子・兄弟で話したい

 

こんなことがなかったら、帰省することに良い顔をされないから…と諦めてきた私の、数少ない我儘だと思いました。

 

 

葬儀場から帰宅して、父の遺影に使う写真を母と探しました。

 

最近撮ったという小型船舶免許証に使ったという写真は…私の記憶にある父の姿ではありませんでした。

75歳という年齢です。当たり前のことですが…父の面影のある【おじいさん】で私の記憶の中の【お父さん】の姿ではなかったのです。

 

「これは…ちょっと」

 

私だけでなく、母も弟たちも同じ意見でした。

次に見つけたのは…私が結婚する数年前の写真でした。

 

「これが…お父さんだよ」

智が言いました。

「そうだね…若いかもしれないけど…お父さんって言ったらこの顔だよね」

 

家族で見つけた写真と、船舶免許証用の写真。

どちらにするかは家族では決めていたものの…他の人にも聞いてみようか…と話がまとまったのです。

 

 

同じころ、遥希は蘭花や当麻と部屋の片づけや掃除を、ずっと一緒にしてくれていました。

 

普段は母ひとりで掃除している家なので、なかなか手が回らず行き届いていない…というのもおこがましい有様だったので、家族総出でとりあえず物置に運んで掃除機をかける…そんな感じでした。

 

でも、家主の母にとっては大事なものや必要なものは、私たちではわかりません。

なので、物置に運ぶだけで良いという話だったのですが、遥希はそれでは片付かない!と思ったのでしょう。

 

埃がついているから…

もう古くて使わないだろう

 

と自分の基準でゴミ袋に詰め込んでいたのです。

 

もちろん、お願いしたのはこちらの家族なので、母も

「これは確定申告で必要な書類だから触らないでね」

「これは穣のものだから、穣に片付けさせるから良いわよ」

と伝えていました。

 

でも、遥希は

「お義母さんはさっきから文句ばっかり!」

と不満に思ったのだと思います。

 
確かに、母も伝え方も悪かったので遥希の気持ちも分かる。
なので、私も、弟たちも
「遥希さん、ありがとう。お陰様で助かりました」
とお礼を言いましたし、母に
「言い方が悪いよ」
と窘めたりもしました。
 
でも、不満だったんでしょうね。
 
 
家も片付き、遺影の写真もほぼ決まったのでお茶を出して休んでいたとき。
 
おもむろに遥希が父の写真を見て
「コレだと若すぎるんじゃない?こっちの写真(証明写真)も今は綺麗にしてもらえるよ」
と言い出しました。
「でも、若くてもこっちはお父さんだってすぐに分かるもの」
と話すと、あからさまに不機嫌になりました。
 
ブツブツと文句を言っていましたが、母・弟たちの気持ちも大事したいと思いました。
私自身も、同意見ということもあって、先ほどの【喪主・施主】の話のように引き下がりませんでした。
 
「もう少し探してみるから」
智が私たちの空気を読んで、言ってくれなかったらケンカになっていたかもしれません。
 
 
夜になって、母が
「夕食にして、今日は早く休みましょう」
と伝えると、
「掃除をして埃を吸ったから喘息が出た」
と遥希が言い出しました。
「蘭花も喘息が出たら大変だからホテルを予約した」
 
母や弟たちには寝耳に水だったと思いますが、私だけ実家に残るという選択はできませんでした。
蘭花だけを遥希に同行させるのは最近の親子関係を考えると心配だったのです。
 
私たちはその夜は実家から2時間ほど離れた県内のホテルに泊まることになったのです。
 
深夜にホテルにチェックインし、入浴を済ませて眠りにつきました。
 
父の葬儀が無事に終わることができるのだろうか?
そんなことを考えていると、何だか眠った気がしないまま、朝を迎えました。
 
ちょうど、国が「Go To」キャンペーンをしていたころ。
ホテルの支配人さんが
「こちらには旅行ですか?」
と聞いてきたのですが、わざわざ本当の話をしても…という私とは裏腹に遥希は
「不幸事があって…」
と話していました。
 
 
 
 
次回は
3月7日 午後12時に更新いたします。
 
 
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