音楽68 〜Don't Give Up | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

自分のiTunesに入っている曲。



Diary Bread
好きになった女の子の日記を見つけて読んだら、その子は他の男が好きなことがわかっだけだった、というストーリーの曲。アコースティック・ギターのバラード曲で、バックにはなんとも不思議なシンセサイザーのような音が鳴っていますが、これはギターみたいです。

ブレッドというと「イフ」という曲だけがTVやCMで使われるので、(もちろんいい曲ですが) 他の名曲群がスルーされる傾向があるのが残念です。日本でも人気のあったR&Bシンガー (というかプロデューサー) のベイビーフェイスがカヴァー・アルバムを出したとき、ブレッドのこの曲を選んでいたときがあったんですが、他に「エリック・クラプトン」とか「ボブ・ディラン」、「ジェイムス・テイラー」の曲のカヴァーが収録されていたため、「ブレッドの…」というキャッチ・コピーでは弱いと思われたのかやっぱり注目度は低かったです。


アコースティック・ソウル・ブームのきっかけとも言われるこの曲のインスピレーションは、あとで「チェンジ・ザ・ワールド」で共演・プロデュースしたエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」とされがちですが、僕はブレッドのデビッド・ゲイツの繊細なヴォーカルと生ギターの音にルーツがあると思っています。


Didn't Even Know Her Name Bread
この曲はタイトル通り「 (彼女の) 名前さえ知らず」な知名度の曲ですが、収録アルバム「ギター・マン」のラストをしっとり切なく飾る佳曲です。


Dig For Fire Pixies
俺は究極のポップ・ソングを書こうとしていた。俺は基本的にピクシーズからパクったんだ。俺はそれを認めなきゃならない (笑) 。初めてピクシーズを聴いたとき、俺はあのバンドにどっぷりハマったんで、ピクシーズに入るか、少なくともカヴァー・バンドに入るべきだったんだ。ニルヴァーナはピクシーズのダイナミクス感を使っている。ソフトで静、それからラウドでハードってヤツだ。ーカート・コバーン、ローリング・ストーン誌 (1994年1月)

このインタビューは後半の静→動の展開を1曲の中でやるって所が有名 (それまでは意外にハードな曲は最初から最後までハードなまま、ソフトな曲はずっとソフトなままだった) で、ニルヴァーナの曲構成を語るのによく引き合いに出される話ですが、ピクシーズの曲の本質は前半の部分で語られていると思います。

the ultimate pop song
究極のポップ・ソング

I was basically trying to rip off the Pixies.
要はピクシーズから剥ぎ取ってやろうとしたのさ。

上の文では“rip off”を「パクる」と訳しましたが、ピクシーズのサウンドの最大の特徴である計算し尽くされたノイズ・サウンド、ギター・リフは「剥ぎ取る」という言葉を使った方がしっくりくる感じです。この「ディグ・フォー・ファイアー」も、ピクシーズの曲としては特に出色の出来というわけではないですが、計算されたポップなノイズ・ギター・サウンドで、コード的にもやっぱりニルヴァーナの曲のような作りになっています。ピクシーズの曲がもつポップさは、iPhone5sのコマーシャルが証明したと思います。あと、上の文を訳していて思ったんですが、カート・コバーンはとても誠実 (ふつうは人のアイデアでも成功すれば自分のオリジナル、みたいな顔をする奴がほとんどだと思う) だし、言葉の選び方がとても適切です。「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のリフを一発当てただけみたいに評したり、カート・コバーンは死んだおかげで伝説になった、みたいに言ってる人たちがたまにいますが、実際には数式を解くように曲を分析 (was basically trying to) した結果で、理論的な化学変化だったんだと思います。しかもニルヴァーナはカート・コバーン抜きでもデイヴ・グロールはフー・ファイターズでいい曲を書いているし、カートとマイケル・スタイプの共演もあったかもしれないし、そもそも2nd「イン・ユーテロ」には「ハートシェイプト・ボックス」のような名曲があるし、MTVアンプラグドの演奏を聴いても、むしろ本当の伝説は作れずに終わってしまったんじゃないかという気がします。

最初に発明したピクシーズはもっとクレバーですごい存在ということになりますが…。


Didital Love Daft Pank
イントロはほとんどそのままジョージ・デューク「アイ・ラブ・ユー・モア」のサンプリングで、ヴォーカルはダフト・パンクがヴォコーダーを使って録っているみたいです。これをトーク・ボックスを使ってカヴァーしている人の動画を観たことがありますが、おもしろいです。


楽器の音が喋っているように聞こえるから「トーク・ボックス」。これを初めてシンセサイザーに利用したのがスティーヴィー・ワンダーで、セサミ・ストリート出演時にトーク・ボックスで演奏したのが話題になったそうです。70年代のファンクやソウルと意外に相性がよくて、これの発展系というかヒップ・ホップ・ミュージックでの再発見がごく最近のオートチューン・ブーム。


ゲストはT-Pain。おもしろいな、この番組。

オートチューンは音程補正ソフトで、人の歌声を電子的に変えるもの。元の音が楽器の方であるトーク・ボックスとは違うもの。ヴォコーダーは人の声をシンセサイザーで合成し直すもの。ニワトリが先か卵が先か、みたいなもので聴く方としてはロボットのような声がするという点では同じです。ロボットみたいな仮面を被っている2人としてはヴォコーダーの使用が一番キャラに合っているといえそうです。


D.O.A. (Death Of Auto-tune) JAY-Z
ディー・オー・エーは「デス・オブ・オートチューン (オートチューンの死) 」の頭文字、となっていますが、これは後付けのダブルミーニングで、もともとは指名手配の凶悪犯に向けて使ったり (Dead Or Alive=生きていようが死体だろうが懸賞は払う、の意味) 、「即死」を意味する (Dead On Arrival=到着時死亡。病院に運ばれたときにはもう死んでいる、を指す医療用語) 頭文字です。詩にも出てきますがT-ペインが標的になってる格好です。このオートチューンへの一方的な死刑宣告のようなトラックはブループリントの「テイクオーバー」並のカッコ良さです。トラックはカニエ・ウェストではなくNo I.D.の製作によるもの。これを聴いたカニエ・ウェストはそのあまりのカッコよさに衝撃を受け、自分がオートチューンを使いまくった作品を出しているのにジェイZの作品はアンチ・オートチューン・アルバムになるように自分から仕向けています (2009年5月26日のMTVのニュース記事にカニエのインタビューが出てます) 。音はフランス人の作曲した必殺仕事人みたいな感じ (実際にフランスの作曲家が書いた曲がサンプリングされています) で、出だしの「ナーナーナー、ヘーイ、グーウゥバーイ」のフレーズはオールディーズ・ナンバーの“Na Na Hey Hey Kiss Him Goodby”の借用です。

ただ、「テイクオーバー」の時は格上のナズに勝負を挑んだ感じですが、今回はもう十分に稼いできた立場での発言なので、一部では「オールド」という批判もあったみたいです。日本でいえばPerfumeを全否定するような感じですから。


バスケシーンはレブロン・ジェームズが登場。ちなみにJAY-Zはオートチューン使いのT-Painとこの曲でしれーっとライブで共演しているのが凄い。


Do Me, Baby Prince
オリジナルは4thアルバム「コントロバシー」に収録。アルバム・ヴァージョンはプリンスのマスターベーション的なナレーションに生理的に耐えられない人がいると思いますが、そもそもはビルボードR&Bチャートで1位になっている曲。ベスト盤に収録の演奏同様無駄のないスローなファンク・バラードを聴けば、曲のクライマックスの昇天するようなファルセットも気持ち良く感じられると思います。

この曲は2パックのお気に入りみたいで、死後にマキャベリ名義で発表された名曲“To Live And Die In L.A.”にサンプリングされています。正確にいうとクレジットはされていないし、ラップのパートとヴァル・ヤングのコーラスを聴いてもすぐそれとわかるサンプリングの仕方ではないですが、イントロから聴けば紛れもなく“Do Me, Baby”です。


トラックとリリックは「ライフ・ゴーズ・オン」路線の曲です。この曲と、同じアルバムに収録の「ヘイル・メアリー」の2曲は、死後リリースなのに代表作というべき曲です。プリンスもそうですが、楽曲のストックが多くて、しかも高品質です。


Does He Love You? Rilo Kiley
エルヴィス・コステロからも支持されているライロ・カイリーは大好きなバンドですが、残念ながら既に解散済みです。オトナな恋愛 (不倫、離婚、子供、自立、満たされない望み) をナレーションと登場人物の両方をこなしながら歌い上げるジェニー・ルイスの表現力に、思わず聴き入ってしまいます。けっこう想像の余地のある三角関係ですが、ナレーターの女性が結婚している男性と付き合っている。遠く離れた所に住んでいる親友は結婚して妊娠中。ダンナは愛してくれているけど、昔はよく自由もなく家庭におさまってしまうのはありえないって言っていたというのが設定みたい。そんで曲の最後の方で2人の恋人と夫は同じ男だった、ということがわかってクライマックスを迎えます。

But now you love him, and your baby
でも今あなたは彼と、赤ちゃんを愛してる
At last you are complete
とうとうあなたは完全に満たされた
But he’s distant and you found him on the phone pleading saying
でも彼はよそよそしくて、あなたは彼が電話でこう言っているのを聞いてしまう
‘baby I love you and I’ll leave her and I’m comin’ out to California’
「愛してるよ。妻と別れて僕はカリフォルニアへ行く」

Let’s not forget ourselves good friend
冷静になりましょう
I am flawed if I’m not free
私は結婚して自由でいられなくなったらだめになってしまう
and your husband will never leave you, he will never leave you for me
それにあなたのダンナはあなたを捨てたりしない。私のためにあなたを捨てたりしないわ

友達がかつて言っていたせりふで返す最後のラインが素晴らしいです。バンドとしてもじゅうぶん優れていると思いますが、この曲は最後にストリングスが感情を劇的に盛り上げていきます。


僕はこの曲を初めて聴いたらソッコーでダウンロードしました。ヴォーカルのジェニー・ルイスとギターのブレイク・セネットは元ハリウッド、TVドラマの子役で、ブレイク・セネットはあのウィノナ・ライダーと交際歴があります (ジョニー・デップとマット・デイモンに並んでます) 。歌い出しの歌詞は秀逸で、古いアイルランドの祝福と祈りのフレーズ (航海に出る人への言葉?)を使っているようです。

Get a real job
しっかりとした仕事に就いてね
Keep the wind to your back and the sun on your face
あなたの背に風を受けて、顔に太陽の光を浴びて
All the immediate unknowns are better than knowing this tired and lonely fate.
すべての未知の未来は、このたいくつで寂しい運命よりずっといいわ


Song To The Siren  Tim Buckley

ティム・バックリィはヴォーカリストとしてだけでなくギター奏者としても評価されていますが、ギター奏法がやや変わっている理由は、ハイスクール時代にフットボールでギターの弦を押さえる側の左手の指を完全にダメにしてしまったのでバレー・コード (アコースティック・ギターを習う時の最初の挫折ポイントといわれるやつです) が押さえられなくなり、結果的にそうしなくても弾けるエクステンデッド・コードを使用するようになったためらしい。その音は結果的に洗練されたおしゃれな響きになるので、ティム・バックリィの美声と音楽スタイルにむしろ合っていたといえそうです。不完全なものからオリジナリティが生まれるというのは好きなエピソードです。


“Song To The Siren”のライブ・ヴァージョン。タイトル通り、ギリシャ神話のように美しい曲です。


ティム・バックリィは声を楽器のように使う、ともいわれますが、R.E.M.のマイケル・スタイプも最初の2枚のアルバムは自分の声は楽器のようなもの、と語っています。僕がティム・バックリィを聴くようになったのはUNCUT誌の2003年10月号の付録CDで、R.E.M.のメンバーが“Dolphins”のライブ・ヴァージョンを選んでいたのがきっかけです。12弦ギターの弾き語りスタイルの他に、歌唱の方も影響を受けていたのかな。


Don't Do It (Live) The Band
オリジナルはマーヴィン・ゲイの60年代のヒット曲 (タイトルは“Baby Don't You Do It) 。作曲はホランド=ドジャー=ホランド、ジ・アンダンテズがバック・コーラス、演奏はファンク・ブラザーズというモータウン・レコード黄金の布陣でレコーディングされています。ザ・バンドはこれをホーンとギターを前面に出した南部風のロック・サウンドでカヴァーしていますが、原曲の音のフレーズはしっかり残していて、正直素晴らしいです。聴き比べると粘っこい南部風のサウンドの深さと北部のモータウン・サウンドのおしゃれ具合がよくわかります。


Don't Give Up Peter Gabriel
作り手のものから世界中のリスナーのものになった類の曲の1つです。歌い出しの詩がリアルで素晴らしいです。

In this proud land we grew up strong
この誇り高き地で逞しく育った
We were wanted all along
初めから望まれていた
I was taught to fight, taught to win
戦うことを教えられ、勝つことを教えられた
I never thought I could fail
失敗するとは夢にも思わなかった
No fight left or so it seems
もう戦う余地はない。そんな風に
I am a man whose dreams have all deserted
今の俺は、夢をすべて放棄した男さ
I've changed my face, I've changed my name
自分の顔を変え、名前を変えようと
But no one wants you when you lose
負けた時、自分が人から求められることはない

社会的に、僕と同じ位の年の生まれだと、残念ながらどこかで感じたことのあるような挫折感が込められています (感じたことのない人は幸せなので不要な曲です) 。

Don't give up
あきらめないで
'Cause you have friends
友達がいるんだから
Don't give up
あきらめないで
You're not beaten yet
あなたはまだ負けていない
Don't give up
あきらめないで
I know you can make it good
あなたなら成功できるって、私にはわかってるわ

「恋のから騒ぎ」のオープニング曲で知ってる人も多いケイト・ブッシュの歌うコーラスの部分は、気休めのように聞こえなくもないですが、

Rest your head
頭を休めて
You worry too much
あなたは心配しすぎよ
It's going to be alright
意外になんとかなったりするものだから
When times get rough
苦しい時には
You can fall back on us
頼ってしまってもいい
Don't give up
だからぜったいに
Please don't give up
あきらめたりしないで

と進行するパートは、とても美しくて、あらゆる面から積極さを奪って挽回するチャンスを自分から消してしまう「心配し過ぎ」な自分への戒めのように (今ですら) 聴こえます。ピーガブさんが歌うこの曲の主人公は、ケイト・ブッシュの歌うパートから自らを奮い立たせて先へ進みます。

Got to walk out of here
ここから出て行かなくては
I can't take anymore
もう限界だ
Going to stand on that bridge
あの橋の上に立って
Keep my eyes down below
目を背けず下を見つめるんだ
Whatever may come
何が起ころうと
And whatever may go
何が消えようと
That river's flowing
あの川は流れている
That river's flowing
川は流れているんだ

時代が変わるおかけで、以前はできなかった事ができたりするような事って結構ある気がします。僕はスマホがなけれはこんなに簡単に旅行に行かないですし、少し前に成功させた転職もできなかった気がします (ぜんぶ勤務時間中にやってた。今の仕事だと無理だな) 。やる気とそれを実現させるツールって大事だと思います。もちろん支えてくれる人も。こんなことを思ったりするのは、僕はいま住んでいる辺りの店や家が潰れるたびに、自分の方が生き残ったなーとしみじみ感じるほど、廃人寸前の人生を歩んできたからです。

Moved on to another town
別の街へ移り
Tried hard to settle down
定住するために懸命に励む
For every job, so many men
どの仕事にも、たくさんの人
So many men no-one needs
誰も必要としないようなたくさんの人達

昔を捨て、冷笑的にも今を頑張る主人公。僕も自分と同世代の負け犬仲間とはよく自分たちをなんの取り柄もなく大人になったクズ世代の代表だと分析して、楽しく罵ったものです。

Don't give up
あきらめないで
'cause you have friends
友達がいるんだから
Don't give up
あきらめないで
You're not the only one
あなたは一人じゃないわ
Don't give up
あきらめないで
No reason to be ashamed
恥ずかしがる理由なんてない
Don't give up
あきらめないで
You still have us
あなたにはまだ私たちがいるじゃない
Don't give up now
いまあきらめたりしないで
We're proud of who you are
あなたのいまの姿は立派だから
Don't give up
あきらめないで
You know it's never been easy
簡単な事じゃないって分かっていても
Don't give up
あきらめないで
'Cause I believe there's the a place
何処かにぜったいに
There's a place where we belong
自分のいるべき場所があるって信じているから

“belong”は「所属する」という意味で、「~のものである」のように物や人にも使いますが、ここでは組織、社会の中での居場所、つまり会社を指していると思います。冒頭の詩と合わせて考えると、失業どころかいい家庭に生まれて大事に育てられてきたけど就職すらできなかった学生の為の、立ち直りソングみたいに聞こえます。歌の中に決して解決がある訳ではないですが、何かのきっかけになる力がある曲。ただし、この曲の冒頭の歌詞のように、どん底で自分と向き合う覚悟が要りますが…。人生に一発逆転はないですから。でも諦めずにやっているとほんとうにいいことあります。


ケイト・ブッシュと抱き合うPVが有名ですが、こちらの方が好きです。ルーツ・ミュージック的な要素のあるこの曲は「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラブ・ユー」の作者 (ホイットニー・ヒューストンのはカヴァー曲です) にしてカントリー・シンガーのドリー・パートンとデュエットするつもりだったそうですが断られ、ケイト・ブッシュに頼んだそうです。