元ニューヨーク市警のイタリア系アメリカ人と
NYのイタリアン・レストランとイタリアン・マフィアに
まつわる話をしていた時のこと
夫がもう25年以上前にもなるが
あるイタリアン・レストランでの話をし出した
当時、フィラデルフィアで研修医だった夫
気になっていた小さなイタリアン・レストランに
ガールフレンドを誘って食事に出かけた
ドアを開けると、店は薄暗くがらんとしている
店主なのか、小さな老婆が奥から出て来て
「いらっしゃいませ」
夫とガールフレンドを席へ案内した
二人の他に店内にいる客は、一人の男性のみ
誰かを待っているようだった
席に案内された夫は、妙なことに気付いた
「死角がないんですよ、この店
どの席からも、ドアが視覚に入るようになっていて
誰が入って来たのか見えるんです」
オーダーしたのは、チキン・パルミジャーノだったか
シンプルなスパゲッティーだったか
何を食べたのかは覚えていないのだが
そのうち、キッチンがあるであろう店の奥から
大きな痩せた犬が一匹、トコトコと出て来た
犬はゆっくりと、夫とガールフレンドのテーブルへ近づき
クンクン匂いを嗅ぐと、またゆっくりとテーブルから離れ
もう一人の男性客が座るテーブルへ向かい
そこでもクンクン匂いを嗅ぐと、何に満足したのか
出てきた時と同じように、ゆっくりと奥へ戻っていった
「「何で、レストランの中で犬がフラフラしてるんだ?
何なんだ、この店?と思っていると
老婆がテーブルに戻ってきたんです」
老婆はテーブルのそばに立つと
「お嬢さん、あなたに差し上げたいものがあります」
ガールフレンドに話しかけた
「あら、何かしら?」
老婆は自分が付けているピアスをはずすと
ガールフレンドに手渡した
Photo by SEASHELL IN LOVE - Kristin on Unsplash
ここが、夫が一番驚いた所らしいのだが
「それで、彼女、どうしたと思います?
そのピアスを、素敵ね、嬉しいわって
自分の耳に付けたんですよ!」
パッチンと耳たぶを挟むタイプでなく
耳に開けた穴に通すピアスタイプの物
ブローチとかならまだしも
ピアス、それも数秒前まで他人の耳に
ぶら下がっていた物は私は嫌だな...
その後、すぐお勘定を済ませ、店を出た二人
もう一人の男性客の待ち人はまだ来ず
男性客も立ち去る様子はなさそうだった
宮崎駿のアニメに出て来そう
振り向いたらそこにはなかった、みたいな店
このレストランでの出来事が原因だったのかどうか
夫がこのガールフレンドと食事に行ったのは
これが最後で、その後すぐ別れたらしい