「ゴリラ」を捕まえる | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

「胸痛」の主訴で来た患者

 

胸部X線写真を撮り

肺炎なし、心不全なし、と

患者の症状に関係するような所見の

有無をチェックしてたら

 

あれ?これ、なんだろう?

 

小さな金属の様な影が映っている

 

アーチファクトかな?

X線フィルムかカセットに

かすり傷でもついていたのかな?

 

違う角度から撮った写真にも

この「影」は写っていて

どうも、実際に患者の体内にあるようだ

 

同じ患者の、過去に撮った胸部X線写真には

この「影」は見当たらない

 

「ちょっと訊きたいのだけれど」

 

放射線科医師に電話をした

 

「何?この写真のどこが気になるの?」

「胸痛で来た患者なんだけどね」

「肺の部分はクリアだし...」

「いや、それじゃなくて、

ちっちゃい金属みたいなのがあるでしょ?」

 

Ha!

 

放射線医師も電話の向こうで

じっと写真を見ているのが伝わってくる

 

結局CTで、この「影」が何なのか

どこにあるのかを調べることになった

 

ローテーションに来ていた医学生に

「この写真の異常所見をみつけてごらん」

 

結構出来の良い医学生だったが

「心陰影の大きさは正常ですし

大動脈は...ちょっと幅が広いですか?」

「ううん、それじゃなくて」

「肺の領域はクリアですし...」

 

何が「異常所見」なのか教えると

なぜ、見つけられなかったのかが

不思議なくらい明らかに

そこにある「異常」

 

 

「白いシャツを着ている人たちが

何回ボールをパスするか、数えて下さい」

 

 

この質問をされたうえで

ビデオを観た人たちの半数が

途中で登場するゴリラの存在を

見逃してしまうのだそうです

 

何度ボールがパスされたかより

真ん中で堂々とドラミングをするゴリラの方が

絶対に目に入りそうなものの

 

black gorilla lying on wooden surface

Photo by Valentin Jorel on Unsplash

 

あること(物)に注目すると

明らかにそこにある事象が見えなくなる

 

だから、ランダムにではなく

システマティックに身体所見をとったり

X線写真を見ることが大切

 

予想していなかった「ゴリラ」

(いわゆるincidental finding)

結構、あちこちに隠れています

 

 

 

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