タオル・ヘッド(1) | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

「Stroke alertかもしれないんだけど」

 

早朝、通りかかった内科の研修医

ERによろめきながら入って来る患者を見かけた

警備員に声をかけ

車椅子に患者を乗せてER内へ連れてきた

 

Stroke alertは脳梗塞疑いの患者の

検査、神経内科へのコンタクトを

スムーズにするためのプロトコール

"Call stoke alert."の鶴の一声で

神経内科医、CT技師、CTを読む放射線科医、検査室に

一気に連絡が行く

 

"What happened?"

 

Stroke alertを呼ぶかどうか

もう少し詳細を知る必要がある

 

患者は若い長身の男性

口を開いて一言目

「ダイローディッド6mgとべナドリル50mgをくれ!」

 

はぁ?

 

ダイローディッド(Dilaudid)は麻薬系鎮痛剤

ハイドロモルフォンの商品名

これを頻回に使っている人は

ハイドロモルフォンのヒスタミ作用で痒みが出るので

それ防止に抗ヒスタミン剤のべナドリル(ジフェンヒドラミン)を

一緒に投与することがある

 

鎌形赤血球症(SCD)があるという彼

心筋梗塞と脳梗塞の既往もあるという

 

1時間前に左手と左足がしびれてきて

全く動かせなくなった

 

脳梗塞は一般に中高年がかかる病気だが

普通は真ん中がへこんだ円盤状の赤血球が

鎌状・三日月状に変形したSCDでは

この異常な形の赤血球が血管に詰まり

若年者でも脳梗塞を起こすことがある

 

左手を全く動かさない患者

きちんと話せて、顔左右は対象だから

脳神経はOKね

靴とジーンズ、脱がせてもらってもいい?

脚がどの位動かせるか見たいから

 

靴を脱がせると、履いているのは

病院で支給されるポリエステルのソックス

 

"I need 6mg Dilaudid and 50mg Benadryl!"

 

左側が動かせないと同時に

小さな血管が詰まり体の色々な部分に痛みを感じる

sickle cell crisisを起こしていると言う

 

右上腕から垂れ下がっているPICCラインを差し出し

「ここからダイローディッドを入れてくれ!」

(PICCライン=長期的に静脈注射が必要な際に

使われる静脈ライン)

 

脳梗塞の症状の一つは

腕、脚が動かせなくなる「麻痺」だが

麻痺は、脳を養っている血管が

詰まって起きる「梗塞」だけが原因ではなく

脳内に出血して機能が損なわれることもある

原因が違えば治療も違う

 

「車椅子からベッドに移りましょう

CTスキャンへ連れて行きますから」

 

"I need 6mg Dilaudid and 50mg Benadryl!

RIGHT NOW!"

 

PICCラインからダイローディッドを投与しないと

CTへ行かないと拒否する患者

 

ERによろめきながら入って来て

病院で支給される靴下を履いていて

まずはハイドロモルフォンを要求?

 

ちょっと、この人、なんかおかしくない?、

「勘」のスイッチが入った

 

(続く)

 

どくしゃになってね…