I got your back | That's where we are

That's where we are

the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

 

静かな職場という物には

慣れていないので

仕事中はある程度音がしないと気持ちが悪い

 

でも、11床のERで

3部屋から喚き声が聞こえるのは

イライラを抑えるのに少し努力がいる

 

ルーム1は自殺を仄めかす男性

補助人工心臓を付けており

精神科ERでは受け付けてもらえず

一旦心臓内科病棟に入院させて

精神科へコンサルトというプラン

 

路上で口にすれば

叩きのめされたって誰からも同情を買わないような

人種差別的なことを大声でわめく

病院にいて、「患者」だから

ぶちのめされないと分かっているのだろう

口にダクトテープを張ってやりたい

そんな衝動にかられる

 

ルーム3は高速道路で寝転がっていた男性

明らかに何かドラッグをやっていて

話の途中に舟をこぎ出す

 

そんな人が、その10分後

いきなりガバッと起き上がって

ベッドサイドにいたナースに殴りかかった

 

ハイになる前には持っていた住居補助の書類

どこに置いて来たか分からない

自業自得じゃない、それ、と思うが

そのフラストレーションをERのスタッフに投げつける

 

ルーム9も似たようなもので

道端の植木の中で眠りこけていた女性

「寝不足で眠たいだけ」

寝不足MAXの研修医時代にだって

植木に埋もれて寝たことなんてないわよ

こちらも明らかに薬だかドラッグだかやっている

 

「子供を迎えに行かなきゃ」と

トロ~ンとした目で

ベッドから起き上がろうとする

そんな状態で子供を迎えにいけないでしょ

迎えに行ったら駄目でしょう

 

放送禁止用語を大声で連発する3人

なんでこんな人が同時に3人来るの?

何なの、ここは?

動物園の方が、秩序が保たれている

 

"Hey, Doc."

 

ギャーギャー、ワーワー聞こえてくる雑音の中で

ER技師の一人が

私の背中をポンと叩いた

 

" Don't worry. I got your back."

 

彼は3人の患者の部屋を順番に回り

丁寧な、でも親しみのある言葉で

患者をなだめようとしている

(ドラッグでハイになっているので限度はあるが)

 

患者が喚くのが全く止まったわけではないし

私の聴力がいきなり落ちたわけでもないが

誰かが一緒に「戦ってくれる」と知った途端

 

なんだか急に気が楽になった

 

 

 

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