iPhone 6, the Savior | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

"There is a walk-in GSW!"
 
GSW = gunshot wound
銃創、銃による外傷のことである
 
きちんとしたデータがあるわけではないが
平均すればGSW,一日一件は来るんじゃないか
救急隊に運ばれてきたり
警官がパトカーで連れてきたリ
自家用車で乗り込んできたリ
そのまま現場から歩いてやって来る患者までいる
 
”Walk-in GSW"は自ら「わたくし、撃たれました!」と
受付にチェックインしてくる患者のことで
大抵の場合、漫画の様に血をボタボタ垂らしながら
ドラマチックに汗水たらして駆け込んできて
遠目にも体のどの部分が撃たれたか一目瞭然
 
「患者、どこにいるの?まだ受付の方にいるの?」
 
普通、walk-in GSWが来た場合
ナースが患者を運ぶストレッチャーをダーッと動かしたり
セキュリティー・ガードが数人ドタドタ駆け込んできたリ
一気にその場の雰囲気が変わるのだが
 
「今、そこを通って行きました」
 
...え?誰か通ったっけ?
 
外傷用の部屋をバンッとあけると
背の高いスリムな若い男性が立っていて
アイロンがきちんとかかったチェックのシャツと
新品かしら?位きれいなオフホワイトのパンツを着ている
 
Where the heck is his GSW?
 
床に血が落ちていないどころか
シャツにもパンツにも血がついておらず
彼はニコニコ、すいませんねぇこんな夜中に、みたいな
金曜日夜中のERに似合わない
なんかゆる~い、和やか~な雰囲気
 
「どこを撃たれたの?」
 
「ここです」
 
太ももの辺りを指差す
 
「僕も自分が撃たれたって気が付かなかったんですけど」
 
何を言っているのだろう?
撃たれて気が付かなかった?
 
「どこにいたの?道を歩いていたらいきなり撃たれたわけ?」
 
「そんなところですかね。
人込みの中にいたら、いきなりパンッって音がして
おおっ、誰か撃たれたぞと思ったら自分だったんです」
 
こんな物騒な地域で朝二時に人込みって
一体、何をやっているのか?
 
「コンサートかなんか?」
「ん~、そんなところですかね」
 
この地域でコンサート?
なんか話が胡散臭いぞ
 
服を脱がせると、太ももに1センチほどの傷が一つ
確かに丸く皮膚が裂けていて皮下脂肪が見えているが
普通、銃創ってもうちょっと出血するよなぁ...
 
ペンシルバニア外傷基金の決まりで
足首から上の脚の貫通外傷は
外傷チーム(外科)を呼ぶことになっていて
 
呼ばれてやって来た外科研修医も
「あれ、銃創???」の印象
 
皆、これ、なんか違うよね、と思っていた
 
しばらくして「謎が解けました!」
外科のシニア研修医がやって来て
 
"It's an iPhone 6!!"
 
手には血が付いた携帯電話
携帯の裏側の一部に穴が開いていて
スクリーンは蜘蛛の巣の様に割れている
 
患者の傷があった太ももの部分は
ちょうどパンツのポケットと同じ場所
患者はポケットにiPhoneを入れていて
銃で撃たれたのは確かに患者だが
弾丸はiPhoneに当たり、電話の中に埋もれていたのだ
弾丸のスピードと熱で太ももの皮膚は少し裂けたが
大事に至らずに済んだ
 
「このね、iPhone6だったことが重要なんです!
iPhone6はこれ以前のiPhoneより大きいので
そのおかげで直接弾丸が当たらずに済んだんです!」
 
頑なにドロイド愛用者であり続ける私には
iPhoneのサイズの変化は分からんが
まあ、良かった良かった
 
患者はそのまま警官と事情聴取のため警察署へ
あのiPhone、証拠として没収になるのだろうか?
保証期間ないだったら、アップルは取り換えてくれるのかな...?
 
 

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