飲んでいたのは... | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

「奥さんに、それ、飲んじゃダメですって言ったら
私が怒鳴られたんです!」

夜11時にシフトが終わり
夜勤の同僚に申し送りをしてから
カルテを仕上げていたところ

私の背中の後ろで
ナースが研修医に文句を言っている

彼女が指差す部屋の患者は
腹部CTスキャンを待っている

腹部CTスキャンの取り方は
1.造影剤ナシ
2.造影剤あり
の2種類があります

造影剤を使う場合では
1.経口造影剤のみ
2。血管造影剤のみ
3.経口造影剤と血管造影剤どちらも使う
のオプションがあります

どの種類の造影剤を使うか使わないかは
「何を探しているのか」によります

ナースが指差した部屋の患者は
右下腹部痛と発熱を訴える男性で
急性虫垂炎を疑いCTスキャンをオーダーしました

彼の奥方が飲んだの飲まなかったのという話で
もしかして、カップ3倍分の経口造影剤を飲みたくない患者が
(←こんなの飲みきれないと文句を言う患者は結構いる)
ごまかすため奥方に飲んでもらっていたのかな?

...アレ?
でも、あの患者、経口造影剤はいらなくて
血管造影剤のみの投与でよかったはず

「何を言ってるんですか、ドクターO!
造影剤の話じゃないですよ!」

奥方が飲んでいたのは
造影剤どころではなくて

ビール
ビールビールビール
「え?」

話の内容について行っていない私

「あの患者の奥さん、診察室でビールを飲んでるんです!
部屋からいなくなったと思ったら
別のビールを持って戻って来たんですよ!」

ナースが注意すると、奥方、切れたらしい

最近は老人ホームでもアルコールを出すところがあるらしく
入院患者にアルコールを提供する病院の話も聞いたことがあるが

まだ状態の落ち着ていない患者が沢山いる
ERでじゃ止めて欲しい
それも、病院外への行き来が自由なビジター
何を持ち込むか分かったもんじゃない

泥酔するのは患者だけで十二分である