ナチュラル | That's where we are

That's where we are

the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

足の指は黒くて固くて冷たくなっていた

「足が痛くて痛くて
どうしたのかしらね?どうしたらいいのかしらね?」

末端血管障害(PVD)のため下肢の血流が悪く
片足は既に壊死し去年切断された
深部静脈血栓症も肺塞栓症もあり
抗凝固剤であるワーファリンを飲んでいるはずなのに

「あ、それ止めたわ」

止めた?どうして?

「自分でちゃんと調べたのよ
だってワーファリンって殺鼠剤でしょ?
ネズミを殺す毒なんて、そんな物飲めるわけないじゃない」

『殺鼠剤』の代わりに選んだのがアップル・サイダー・ビネガー


「ナチュラルだし血栓予防に効くのよ」

殺鼠剤にも色々あるが
現在アメリカで家庭用に売られている物の多くは
ブロディファコウム(brodifacoum)という薬品

確かに人間用の血栓防止のお薬ワーファリンも
ネズミ退治のためのブロディファコウムも
ビタミンKの活性化をブロックし血液が固まるメカニズムを阻害する
作用時間が長いブロディファコウムを
「スーパーワーファリン」と呼んだりもするが

それとお酢の効果は違うだろう

「ナチュラル志向」はどこにでもある
私は興味がないがそれとかオーガニック志向を否定する気はない

でも
「すべて自然のものからできています
副作用はまったくなし!」
と謳うナチュラル・レメディーの箱の宣伝
あれは嘘である

逆に、何がどの位入ってるか調整できない、分からない
効能が証明されていない
「自然」の植物を混ぜ合わせた物の方が私は怖い

サプリメントの規制は思った通りと言うか意外というか緩くて
一応1998年にDSHEAというものができたが
(Dietary Supplement Health and Education Act)
販売前に効能も安全性も証明される必要がない

NCCAMのサイト
(National Center for Complementary and Alternative Medicine)
政府が運営する代替え療法に関するサイト
効果が絶対にあるとされているものはほとんどない

気休め程度に代替え療法を試すのは良いけれど
それだけに頼ってしまうのは危険である

リンゴ酢を一日数回飲んだこと自体にたいして害はないだろうが
残った片足も壊死し、おそらく切断になるだろう
「ナチュラル」を選んだ代償は大きすぎた




人気ブログランキングへ


にほんブログ村