今の私の家はマンションの2階で
ちょうど窓が駐輪場と通りに面している。
ある日のこと、
部屋でのんびり仕事をしていたところ
小学生くらいの男の子が数人、
何やら窓の外で騒いでいる声が聞こえてきた。
まぁ我が家は閑静な住宅街のど真ん中にあるので
子供が家の周りで遊んでいるのは日常茶飯事なのだが、
この時の子供たちの盛り上がり具合と言えば
それはもう尋常でなく、
遊び声と言うよりほとんど興奮した叫び声。
流石に心配になったので窓から覗いて見れば
男の子が二人、
どうやらうちの駐輪場で何かを捕まえようとしているようだった。
こんな住宅街にカブトムシでもおったんかいな。
いやいやさすがにカブトはおらんか、
ちょっとデカイカマキリ程度が関の山だろう
とぼんやり思いつつ仕事に励んでいた私だったが
しばらくして
今度はこの子供たち誰かの父親らしき声が聞こえて来た。
父 「A、そろそろご飯だから帰っておいでー」
A 「見てみて!これ捕まえた!!!」
父 「うん?なにこれ?」
子供たち 「ヘビ!!!」
カブトムシよりもっとヤバいもん捕まえてた!!!!
ヘビて!!こんな住宅街にヘビて!!!
と心の中で絶句する私と
「うわっ!!」
と叫ぶ外のどっかの父親。
しかし父親の反応から察するに、
この辺りで日常的にヘビが出没するという訳ではないらしい。
越して来て1か月のアパートが実はヘビの魔窟・・・など
死んでもご免である。
そんな室内の人間の動揺をよそに
屋外では子供たちとこの父親の会話が続いていた。
父 「ヘビなんて危ない!すぐに逃がしなさい。」
B 「嫌だよ!これうちで飼うんだもん!」
父 「B君、家でヘビは飼えないよ。お母さんもダメっていうと思うよ。」
まぁ、その前に悲鳴上げられるだろうけどな。
A 「じゃあうちは?うちで飼っても良い?」
父 「無理無理!ヘビに噛まれたら死んじゃうんだよ。」
A 「えー・・・せっかく捕まえたのに・・・・」
父 「どこで捕まえたの?」
A 「そこのマンションの青い自転車の上にいたよ。」
それ私の自転車!!!!!!
この日私はこの後出かける用事があり、
バリバリ愛車を乗り回す予定だった。
もしこの勇敢な少年達がヘビを捕獲してくれていなかったら、
駐輪場で鉢合わせイベントのフラグが立つどころか
宵闇に紛れて気づかず
そのまま相乗りしていた可能性も無きにしも非ずだろう。
ありがとう少年。君たちは無辜の市民の命を救った。
と窓辺に向かって感謝の一礼を捧げる私。
後はその捕獲した爬虫類をどこか他所へ捨てて来てくれれば
晴れてハッピーエンドである。
父 「A、そこ人の家の敷地だよ。勝手に入ったらダメでしょ?」
A 「・・・・・え、ごめんなさい。でも・・・」
父 「でもじゃないでしょうが。」
いやいやお父様、
あなたの息子さんはヒロイン(仮)を救った勇者なのです。
赦してあげて下さい。
父 「人の敷地にある物は、人の物。勝手に持って帰っちゃいけません。」
A 「物じゃないもん。ヘビだから。」
父 「ヘビでも一緒。そこの自転車の上にヘビがいたんなら
自転車の人のヘビです。」
いえお父様、そのヘビは完全に自転車の人とは赤の他人です。
A 「・・・お家で飼っちゃダメなの?」
父 「ダメ。さ、早く元いたとこにヘビを返してあげなさい!」
いやいやいや!!!待って、ちょっと待って!!!!!
そんなもん返されても困るわ!!!
後生だから他所で放してやってください、
出来ればどこかここから遠いところでお願いします!!!
と心の中であらゆる神に懇願しまくる私。
私の必死過ぎる願いが通じたのか
ヘビは紆余曲折の末に
その後結局B君が袋に入れて持って帰ることに決まった。
ありがとうBくん、君の雄姿は忘れない・・・
そして見たこともないB君のお母さま、ほんとすいません。
この事件以来、
自転車に乗る時には爬虫類チェックをかかさない私である。