先日のホリデーから帰って来た時のこと。
ドイツの某都市から我が家までの区間は中距離電車に乗る予定であったため
電車を待ちながらホームで夕食を食べていた私。
下のカフェやレストランで時間を潰しても良かったのだが
なんせドイツの電車は、いろいろとトラップが多いことで有名。
20分前後の遅れなどもはや日常茶飯事なのだが
それ以上に私が警戒しているのは
電車が予定よりも何故か早く出発する場合や、直前になってホームが変更される場合である。
一応変更の構内放送はあるのだが大抵はドイツ語のみで、
その上1回しか放送されなかったり、放送自体が他の電車の到着音で掻き消されることもザラ。
オマケにこの駅は人手不足なのかなんなのかホームに駅員がいないことが多いので
緊急時に咄嗟に尋ねられる相手もいない。
大抵どこも状況は似たり寄ったりらしいので、
ドイツで電車に乗る場合は、発車の30分程前からホームで張り込んでおくがおススメである。
さて、そんなこんなで凍えながら夕食を取っていた私なのだが
ふと、ホームに止まっている電車の様子がおかしいことに気付いた。
この電車、珍しく時刻表通りの運行だったはずなのだが
先ほどから発車の電子音は鳴り響いているにも関わらず、何故か一向に発車する気配がない。
何故なら、ちょうど私の前の車両のドアを男二人が中から閉まらないよう押さえつけているから。
恐らく車掌は何度も扉を閉めようとしているのだろうが
この二人の乗客に両側から渾身の力で押さえられているため安全装置が働き、閉められないのだろう。
そしてこの運行妨害真っ只中の乗客二人が
必死の形相でエスカレーターの方をちらちら見ていることから察するに
恐らく彼らは武力を行使しつつ、自分たちの連れが来るのを待っているのである。
はた迷惑も甚だしいな。
この車掌と乗客二人の無言の力比べはおよそ2分続いたのだが、
さすがに不審に思ったのだろう、前の方の車両から乗務員が様子を見に来た。
途端に彼らは何事もなかったかのように手を離し、
「一体全体何がおこっているんだい?」
とでも言うような顔で、何の罪もない乗客を装う。
こちらからすれば白々しいにも程があるが、何にせよこの数秒後、電車は動き出した。
と、その瞬間、エスカレーターの方から一人の中年男がドタドタと飛び出してきた。
必死の形相で目の前のドアにしがみ付き
「止まれ!!!開けろ!!!!」
と叫ぶ男。
しかし既に電車が動き出している以上、ここで停車することは不可能である。
電車が止まってくれないことを悟ったらしい男は、
今度は大声で罵詈雑言を吐き捨てながら電車のドアを拳で殴りつけた。
5メートル程度離れた私まで「ゴーン」という鈍い音がはっきり響くレベルであったので
恐らく彼の全身全霊を込めた怒りのパンチだったのだろう。
小学生か・・・・・・!!
この後も男は走り去る電車に向かって、何やら狂ったように大声で喚き続けていたが
両サイドのホームから聞こえる大爆笑で我に返ったのか
今度は周りの野次馬たちに何かを吐き捨て、すごすごと退散していった。
あんなアホな大人にはなりたくない、そう心に刻む26の秋である。