銃口は確かに俺を狙っていたはずなのに……


一瞬塞がれた視界


崩れ落ちていく最愛の人


「雅紀!雅紀!!」


抱き起こしても、その瞳は開くことはなくて


俺の手を温かく濡らす赤い血


「雅紀!しっかりしろっ!
誰か、救急車!!」


叫ぶ俺の肩に置かれた手


「落ち着いて」


落ち着け?
これが落ち着いていられるか!!


睨みつける俺を無視して、素早く雅紀の容態を診ると懐から布を出してきて


「出血が多すぎると良くない。
これで押さえて。病院に運びます。こちらへ」


病院と聞いて、雅紀を抱えて立ち上がる。


目線が同じになって気付く。
いつも東山会長の側に控えている、
容姿端麗な会長の側近の中でも、ひときわ華やかな容貌のそいつが、SPたちにテキパキと指示を出していた。




雅紀を撃った銃を握ったまま呆然と立ち尽くしている会長を、SPが抱えるようにして別の出口から脱出させようとしている。


ふらふらと動き出す会長の最後までこっちを向いているその顔は、後悔と大切な者を失う恐怖で歪み、見る影もなく萎れていた。





だけど、俺にはそんな事どうでも良かった。


早く!一刻も早く!
雅紀を病院へ!!


血の気の失せた青白い、それでも眠っているような安らかな顔にギュッと頬を押し付けて、俺は松本と呼ばれる男の後を追った。





病院に着くと、待ち構えていた病院スタッフにあっという間に雅紀を連れ去られて、俺はそれをただ見送るしかなかった。


「ここには一流のスタッフが揃っているので心配ありません。任せましょう。
それに、東山の息がかかっているので事態が表沙汰になることもありません」


「こんな時まで、立場の心配か」


「当然です。
東山はそれだけの人間ですから。
ただ、個人として見るなら、私は東山のあんな顔はこれまで見たことはありません」


それは、俺もだ…






しばらくして通された病室。


ベッドの上で雅紀は、身体中に管を付けられ眠っていた。


「……雅紀……雅紀」


駆け寄って頬に手を当てる。
心なしかひんやりと感じる。


苦しくはないか?
寒くはないか?


雅紀……雅紀……





目を……開けてくれ……………









≡つづく≡